日米地位協定を理解する

日米合同委員会19680615沖縄

日米合同委員会 1968年6月8日
https://www.chosyu-journal.jp/

第1回 : 概 略

日米地位協定は、その正式名称を《日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定》と言い、1960年の日米安全保障条約が締結された際、同条約とともに国会で“承認”されたものである。

承認に当たって、当時の国会では、まともな審議はほとんどおこなわれなかった。わずか28ヵ条であるが、その解釈および運用は、すべて非公開・秘密主義の日米合同委員会に委ねられている。

●三つに分類できる協定の内容

(1) 基地の提供・設定

第2条の「合衆国は(中略)日本国内の施設及び区域の使用を許される」を実施するにあたり、国内法として〈米軍用地確保特別措置法〉〈地位協定実施に伴う国有財産管理法〉〈米軍の水面の使用に伴う漁船の操業制限法〉などが制定されている。これらによって、日本国民は土地、建物、設備などを強制使用され、漁業操業区域の大幅な制限を受けている。


(2) 基地の維持と円滑な運営

第3条には「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる」とあり、基地内は完全に米軍の支配下に置かれる。また、この権限は基地内にとどまらず、鉄道・通信手段・電力・港湾・空港・道路などの自由使用、物品調達の際の特権などの形で広範に保障されている。


(3) 軍人・軍属などの特権・特典

日本への自由な出入国、刑事、民事の大幅な免除、日本国民に比較して大幅な特権・特典が保障される。これらの多くは、公務であるか否かにかかわらず、一般的に保障される。

米国は、提供された基地に加え、民間の空港・港湾の使用を強く要求してきた。地位協定を根拠に、日本政府は、米軍はこれらを使用する権利があるとし、実際に米軍機は年間1,000回以上、民間空港に離着陸している。すなわち、日本の空港・港湾は、米国の後方支援基地の機能を持たされていると言えよう。

●基地の提供という名の“土地取り上げ”

1996年5月、沖縄の嘉手納基地などの中の約3,000人の地主の土地の使用期限が切れた。使用期限が切れたのだから、法律にもとづいて返還するのが本来のあり方だが、米軍の居座りを許し、基地を提供するため、法律の方を改悪するという暴挙に出た。法治国家にあるまじき態度である。

沖縄の基地は、アジア太平洋戦争の終結直前に米軍が占領した土地だが、これは「私有財産ハ、之を没収スルコトヲ得ス」「略奪ハ、之ヲ厳禁ス」と定めた国際法の《ハーグ陸戦規定》に違反している。1972年、沖縄は本土復帰を果たしたが、このとき、日本政府は〈米軍用地確保特別措置法〉を適用して、この無法を“合法化”した。

●なぜこのような無法が許されるのか

米軍とそれに追随する日本政府による乱暴狼藉が、なぜまかり通るのであろうか。地位協定をめぐる政府の対応は、協定自体が米軍に治外法権的な特権を与えているだけでなく、異常なまでの対米従属体質である。地位協定の本文からは予想もできないような解釈と運用が平然とおこなわれ、米軍の活動を許しているばかりか、恣意的な解釈・運用が壁に突きあたると、米軍に法の遵守を求めるのではなく、法を変えるのである。

欧州にも駐留米軍の基地は存在するが、日米間ほど極端な地位協定はない。この違いは、日本における米軍の駐留が、占領体制の事実上の継続という、他には見られない特異な性格に由来する。NATO(北大西洋条約機構)は、米国主導ではあるものの、第二次大戦の連合国、すなわち戦勝国同士の同盟としてスタートした。ドイツは日本と同じ敗戦国だが、NATOの枠組みに加わったことが、日本とは大きく異なるのである。

●地位協定を変えるためには

この地位協定は、どうすれば変えられるだろうか。第27条には「いずれの政府も この協定のいずれの条についてもその改正をいつでも要請することができる」とある。日本政府が、その気になれば、改正を求められるわけだが、さて、米国が特権を手放すことを良しとするだろうか。

それでは、現行の地位協定を一旦、破棄して、一から作り直すというのはどうか。第28条には「両政府間の合意によつて」可能であるとしている。日米両国が合意できるだろうか。やはり米国が特権の放棄に合意するかどうかが障壁になるだろう。

日米地位協定は、日米安保を前提としている。第28条の「この協定及びその合意された改正は 相互協力及び安全保障条約が有効である間 有効とする」にある通り、地位協定は、日米安保がなくなれば自動的に消滅する。日米安保を破棄し、日米間の平和のために、必要なら安全保障を含めた、新たな条約を締結すべきであろう。それが主権国家間の対等なものでなければならないのは論を待たない。

日米地位協定の全文は、外務省のウェブサイトで読むことができる。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/kyoutei/index.html
次回からは、各条文を読んでみることにしよう。

 
ページ先頭へもどる
ページ先頭へ