カタロニア民謡「鳥の歌」


 ロシアのウクライナ侵攻のせいだろう、ウクライナ歌謡の「キエフの鳥の歌」が知られるようになった。YouTubeにもアップされているし、日本で歌われている歌詞やメロディは、当サイトでも既に紹介ずみである。「鳥の歌」つながりで、カタロニア民謡の方も耳にすることも多くなった。懐かしい、心にしみ入る曲である。

 この曲を編曲し、自身のレパートリーに入れていたのは、カタロニア出身の世界的なチェロ奏者、パブロ・カザルス(1876~1973年)である。私もそうだが、彼の演奏がこの曲を知るきっかけという人は多いに違いない。1971年10月24日の世界国際平和デーに、国連本部で演奏会をおこなった彼は、アンコール曲として「鳥の歌」を演奏し、その映像が世界中に放送された。今日、YouTubeで視聴が可能である。

私は40年間、公の場での演奏会を持ちませんでした。
今日お聴かせするのは、短いカタロニア民謡です。

「鳥たちの歌」と呼ばれてます。
鳥たちは歌うのです。ピース・ピース・ピースと…。
(1971年10月24日、パプロ・カザルス、国連本部でのスピーチ)

 反ファシズムの立場を死ぬまで貫いたカザルス。彼が演奏から遠ざかったのは、各国がフランコ独裁政権を容認したことへの抗議である。音楽と政治は別なのか、両者は本当に無関係なのか、音楽と政治は切り離して考えるべきなのか、それは正しいのか、いつも考えさせられる。しかし、カザルスの思想が間違っていると思ったことは一度たりともない。

パプロ・カザルス、1971年10月24日の世界国際平和デー、国連本部

 

 ::: CD :::

 1961年11月13日、ホワイトハウスで音楽会が開かれた。ケネディ大統領が招いたのは、世界平和を訴え続けた20世紀最大の音楽家のひとり、パブロ・カザルスである。独裁者フランシスコ・フランコ(1892~1975年)が支配する祖国の姿に胸を痛め、1938年以降、米国内での演奏を中止していた彼の一世一代の名演である。

鳥の歌~ホワイトハウス・コンサート(収録曲)

1. メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 作品49
2. クープラン:チェロとピアノのための演奏会用小品
3. シューマン:アダージョとアレグロ 変イ長調 作品70
4. カタロニア民謡「鳥の歌」(カザルス編

パブロ・カザルス(チェロ)
ミエチスラフ・ホルショフスキー(ピアノ)

アレクサンダー・シュナイダー(ヴァイオリン)
録音:1961年11月13日(MONO)



 「鳥の歌」が収録されたもう一枚のCDを紹介しておこう。民族楽器バンドゥーラを奏でながら歌うのは、ウクライナの歌姫ナターシャ・グジー。このサイトでも、《メリークリスマス》《Nataliya》の2枚のアルバムを紹介してきた。これは来日15周年記念のアルバムということである。

旅歌人(コブザーリ)(収録曲)

1. 希望の大地
2. River
3. 旅歌人(コブザーリ)
4. Shedrik
5. マチュピチュ
6. 踊る娘
7. 雪
8. コラール(from Cantata BWV147)
9. 手紙
10. まなざし
11. AliceのTable
12. 廃墟の鳩
13. 木漏れ日のなかで
14. アヴェマリア
15. 鳥の歌

ナターシャ・グジーのwebサイト 

http://www.office-zirka.com/


「キエフの鳥の歌」が収録されているナターシャ・グジーのCD ”Nataliya”についてはこちらの記事をごらんください。


(しみずたけと)  2022.6.22

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「カタロニア民謡「鳥の歌」」への2件のフィードバック

  1. 7年ほど前、スペインツアーに参加してバルセロナを訪れたとき、コースに入っていなかったのですが私たち夫婦の強い希望でカタルーニャ音楽堂を訪れることができました。
    その日はピアノコンクールをやっていて、メンデルスゾーンのピアノ協奏曲を4回聴くことになりましたが。

    この音楽堂は1908年に完成したアールヌーボー様式のみごとな建築で、ユネスコの世界遺産にもなりました。
    幸運なことに、スペイン内戦で爆弾は落ちず無事だったそうです。
    2000人以上入るホールがほとんど満席でした。

    演奏の前に客席もオーケストラも全員起立したので、「スペイン国歌を歌うの?カタルーニャで??もしかして独立してないのにもうカタルーニャ国歌を作ってしまった??」と頭の中がぐるぐる。
    始まったのは「鳥の歌」のチェロ独奏でした。
    そのときの私の嬉しさと言ったら…最高の思い出です。
    記憶では、優勝したピアニストはウクライナの若者だったような。

    次の朝、市場でチーズを買ったのですが、「これはスペイン産ですか」という夫に、「ノー!カタルーニャのです」ときっぱり返され、さもありなんと恥入りました…

    北川フラムの訳詞に林光が2重唱を編曲したのがおすすめです(楽譜は持っていますが載せ方がわからない)。
        
        うるわしき夜 けだかき光 大地を照らせば
        鳥たちつどい 祝い歌う かぐわしき声で

        森の奥まで メロディーながれ 歌声はひびく
        鳥たち歌う 「イェスが生まれ なやみは喜びに」

        うぐいす歌う 「マリアの子供 美しく可愛い」
        つぐみは歌う 「闇は消えて 命は生まれる」

    学生時代、オーウェルの「カタロニア讃歌」を読んでからカタロニアという言葉に敏感になりました。

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