GREEN KIDS:4世ラッパー

GREEN KIDS, 曲名は E.N.T East New Town 団地のある東新町の頭文字だ。

GREEN KIDS, 彼らは日系4世ラップグループ。 静岡県磐田市の東新町団地出身。彼らは日本語でラップする。

6人のメンバーの内、日系ブラジル人4人、日系ペルー人ひとり、日本人ひとりで、5人は外国籍だ。ふたりを除いて他は日本で生まれ、日本の学校に通った。自分たちは文化的に日本人だと感じている。

が、外国籍の彼らは法的には「ガイジン」、社会的にも「ガイジン」扱いされてきた。今、差別と貧困と夢を歌に乗せる。

「俺たちは人からよく言われてきました。『お前たちは良くない。お前たちのやっていることはまったくなっていない』って」

日本人がブラジルに移住したのは1900年代の始め。彼らはブラジルの中産階級を形成した。1980年代に入った頃にブラジルから「出稼ぎ」に来日する日系人が増えた。日本政府が1990年に出入国管理法を改正したため、地方の工場などで働く日系人が増えた。磐田市もそのひとつだった。

次第に彼らの仕事は日本人に取って代わられ、2008年の世界経済危機の際に多くが解雇され、貧困に陥り、残りたくともブラジルに帰らざるを得なくなった。

日本にとどまった日系ブラジル人の子どもたちには日本語が満足に話せない子もいて、学校で差別され、学校をやめた子どももいた。

「外国人だからって警察に止められるんですよ。ただ歩いているだけなのに」「俺たちが薬を持ってるんじゃないかと疑ってるんです。職質されたときには、車中を探し回され、靴を脱げとか帽子を取れって言われることもあります」

2018年に入国管理法が改正された。日系ブラジル人3世は永住権を申請できるのに対して、4世には申請権がない。GREEN KIDSのメンバーは4世だ。

日本の社会はブラック・ライブズ・マターを遠い国のことで、自分たちには関係がないと思っている人が多いようにみえる。でも、移民たちは日本でのサポートを必要としている。特に教育システムでのサポートを必要としていることは念頭においたほうがいいね。

GREEN KIDS  曲名は Real Daily
「まだ本気でかなえてみせる夢。仲間と朝までたむろしてたコンビニ前。いまさら1人じゃ何もできない俺だけど。君たちには伝えたい」 と歌う。

2020.9.30   Ak.

歌:My Favorite Things

サウンド・オブ・ミュージック Sound of Music

言わずと知れたミュージカル映画、ロバート・ワイズ監督、ジュリー・アンドリュース主演で、1965年に日本でも公開された「サウンド・オブ・ミュージック」。

下のリンク先は「9jコレクション」の映画の解説ページ。良かったら、予備知識を得てください。
https://bessho9.info/mov/teiko.html#sound

映画「サウンド・オブ・ミュージック」がドイツや、原作の背景であるオーストリアでは、それ以外の国で得た称賛とは無縁だったとの話があり、なかなかに興味深いが、それには今は触れない。

数々の挿入歌がそれ以降長年に渡って世界中で愛されることになるが、そんなひとつ、My Favorite Things マイ・フェイヴァリット・シングズ。

まずは、下のURLのリンク先の動画。雷が恐くて主人公マリアの部屋に集まるトラップ家の子どもたち、映画のそのシーンで歌われる。和訳も付いています。見たことがなかったらぜひごらんください。(動画の埋め込みが許可されていない模様のため、リンクで。)

https://youtu.be/opXl99Xksgk


ジョン・コルトレーン John Coltrane

次に紹介するのは、ジャズ・サックスプレーヤー、ジョン・コルトレーンの有名なカバー。うわさに違わず、素晴らしい演奏。古今東西、多くの演奏者にカバーされたこの曲だが、これはその中の秀逸なひとつ。ジャズのカバーには素晴らしいものが数多くある。



アニメ「坂道のアポロン」より

次は、日本のアニメ「坂道のアポロン」で使われているジャズ演奏。原作は漫画家、児玉ユキの作品。2007年から2013年にかけて雑誌に掲載されたという。2012年にテレビアニメ化、2018年に実写化となった。ジャズに夢中になった高校生の話。

ピアノ演奏は松永貴志。彼は17歳でメジャーデビューした。ハービー・ハンコック、ボビー・マクファーリン、ロン・カータ、岩城宏之と共演した経験を持つ。2020年現在34歳。My Favorite Things、斬新ですてきなアレンジだ。彼の「THE WORLD OF PIANO」というアルバムにはより複雑なアレンジの同曲が収録されている。


サチャル・ジャズ・アンサンブル& ウィントン・マルサリス
Sachal Jazz Ensemble & Wynton Marsalis

次はね、ウィントン・マルサリス Wynton Marsalis のジャズバンドとサチャル・ジャズ・アンサンブル Sachal Jazz Ensemble のコラボレーション。ジョン・コルトレーンのアレンジだと中でウィントンが言っている。

もう絶対に素晴らしい! というだけじゃ、全然足りない。感動!! サチャルのメンバーの担当はシタール、バーンスリ(竹製の横笛)、タンブー(高音と低音のふたつの太鼓の組み合わせ。)他にもタンブーとは異なる太鼓など。

サチャルのメンバーはパキスタンのラホール出身。ラホールはムガール帝国の時代から芸術の都として栄えて来たという。最近は廃れてしまい、特にイスラム原理主義組織は音楽は悪とみなして禁止したとか。音楽家たちは白い目で見られるのを恐れて、自宅で隠れて演奏して来たと話している。パキスタンの伝統楽器と伝統奏法、アメリカのジャズ、東洋と西洋の音楽の出会いで彼らの音楽が今わたしたちに届けられる。

ニューヨークのJazz At Lincoln Centerで、彼らがウィントン・マルサリス・カルテットやビッグバンドと共演し、成功をおさめるまでの経緯が描かれる映画がある。 見てください。
ソング・オブ・ラホール 2015年・米 82分

バキール・アバスのバーンスリ(横笛)が特に聴きどころ、見どころ。


七つの指輪 7 Rings : アリアナ・グランデ

次は少し方向が変わって、アリアナ・グランデのバージョン。My Favorite Thingsではなく、7 Rings「七つの指輪」という題名。下の動画には和訳が付いているので、良かったら見てほしい。

あまりの拝金主義と、何でも買うことのできる自分のステータスに傲慢な歌詞に眉をひそめる人もいるかもしれない。でも、わたしは好きだな。さばさばしたワーディングは聞いてて気持ちがいい! 世界中のティーンに人気があるのがわかる。アリアナのファンてわけじゃないけど、称賛しちゃう。キュートで、力強い! 現在27歳の彼女、なんとうらやましいこと!?


7 Rings : The Blue Notes

最後は、アリアナ・グランデ バージョンをピアノ演奏したもの。The Blue Notesという南アフリカ共和国出身でヨーロッパシーンで活躍しているバンド。

映画オリジナル版からアリアナを通過し、 曲はかなり変わってきて、愁いをおびたものになっている。わたしはこれかなり好きかな。

Ak,  2. Sep. 2020

ジャーナリストの死 James Foley

戦場ジャーナリスト:
ジェームズ・フォーリー

2016年公開のドキュメンタリーフィルムより、挿入歌

If I should close my eyes, that my soul can see
And there’s a place at the table that you saved for me
So many thousand miles over land and sea
I hope to dare, that you hear my prayer
And somehow I’ll be there

It’s but a concrete floor where my head will lay
And though the walls of this prison are as cold as clay
But there’s a shaft of light where I count my days
So don’t despair of the empty chair
And somehow I’ll be there

目を閉じれば心に浮かぶ
あなたが僕に取っておいてくれる、そのテーブルの一角
幾千マイルも越えた遥か遠くの地で
ぼくの願いが聞こえればと強く思う
何とか帰り着くから

ただのコンクリートの床に僕は頭を横たえる
この監獄の壁は冷たいけど
それでも細く差し込む光に日々を指折り数える
だれも座っていない椅子を見て悲しまないで
ぼくはどうにか帰り着くから

気を強く持てる日もあれば、弱気になったり
口もきけないほど打ちひしがれる日もある
でも、思いをはせる場所がある
どうにか帰り着く家

木々が葉を落とす冬が来たら
あなたは窓の外の暗やみに目を凝らす
ぼくはいつも食事に遅れてたから怒ってたね
ぼくの場所と空いた椅子はそのまま取っておいて
何とか帰るから
何とか帰るから


ジェームズ・フォーリーはアメリカの従軍記者としてシリア内戦を取材していた2012年11月にシリア北西部で誘拐され、2年間行方不明となった。2014年8月、オバマ大統領が命令したイラクにおけるアメリカ軍の空爆が始まり、その報復としてISISによって斬首される様子が動画に出た。40歳だった。

このドキュメンタリーは、ジェームズ・フォーリーの幼友達だったブライアン・オークスが彼の家族、友人、ジャーナリスト仲間、拘束時に共に暮らした仲間にインタビューし、彼の性格や仕事に対する姿勢を浮き彫りにしたものである。

以上、wikiからあれこれを拾ってモディファイしてみた。


” 「国境なき記者団」の発表によると、世界中で殺害されるジャーナリストの数は2012年以降、年間100名を超えていたが、2016年度は80人、2017年度は74人と大幅に減少した。ただし、2018年度は11月時点ですでに78人。 ”

上記は、ビッグイシュー日本2018年12月5日号に掲載されたイタリアのストリート誌『スカルプ・デ・テニス』 の記事より
http://bigissue-online.jp/archives/1073207916.html

この記事によれば、近年、殺害されるジャーナリストが減少傾向にあるのは喜ばしいことだが、その背景にはジャーナリストたちがもっとも危険な地域を避ける傾向が要因となっているという。 それ故、現地で活動するジャーナリストの数が減った国として、 イラク、イエメン、リビアが挙げられている。殊に、戦争事情が複雑なシリアはジャーナリストにとって最悪な場所と認識されている。

上記の記事内、「国境なき記者団」の報告書によれば、2017年度12月1日時点、世界中で326人のジャーナリストが投獄されおり、その内、本業のジャーナリストがもっとも多く、ブロガーがその半分くらい、他は、少数だが、メディアの人間であり、投獄されるジャーナリストが最も多いのは中国(52人)、次いで、トルコ(43人)、シリア(24人)、イラン(23人)、ベトナム(19人)とのこと。


ドキュメンタリーフィルム「JIM:ジェームズ・フォーリー」に使われている歌は、J.ラルフとイギリス人歌手のスティングが作曲し、スティングが歌ったもの。

どんなに危険な地域でも誰かがそこへ赴いて取材しなければ、その地域で行われている戦争の現状を世界中の人が知ることはない。世界中の人が知らなければ、その戦争の悲惨さはエスカレートする。

ジャーナリストには名を残す仕事がしたいという欲求があるだろう。確かに無謀な人はジャーナリズムの世界にもいることだろう。彼らは命と引き換えの「名」を求めているのか。 ただ、それだけが戦場に赴く理由とは思えない。

わたしが何の意味もなく理不尽に戦争に巻き込まれたなら、人に知ってもらいたいと思うだろうことは容易に想像できる。

わたしの大好きなスティングの歌を聞きながら、そんなあれこれを考える。


  

「バハールの涙」という映画にも、バハールと行動を共にするジャーナリストが出てくる。見てもらいたいすぐれた作品。
https://bessho9.info/mov/teiko.html#bahar


  

ドキュメンタリーフィルム 1997年制作
「SAWADA 青森からベトナムへ ピュリツァー賞カメラマン沢田教一の生と死」

沢田教一はフォトジャーナリストでベトナム戦争を取材した。上のDVDのタイトル画像となった写真は「安全への逃避」と題され、1966年にピュリツァ-賞を獲得した。1970年、プノンペン近郊にて何者かに襲われ、死亡。34歳。


  

映画「地雷を踏んだらサヨウナラ」  1999年制作

一ノ瀬泰三はフリーランスのフォトジャーナリストとしてカンボジア内戦を取材していた1973年にクメール・ルージュに殺害されたとみられる。26歳だった。


Ak,  3. Sep. 2020

抵抗の歌

抵抗の歌を演奏するすてきな人たちを紹介します。

Quilapayún キラパジュン 南米チリのフォルクローレグループ
Giovanni Mirabasshi ジョバンニ・ミラバッシ イタリア生まれのジャズ・ピアニスト
HK & Les Saltimbanks アシュカ&サルタンバンクス 現代フランスが抱える社会の病理を歌う


Quilapayún

“El pueblo unido jamás será vencido”

 今さら説明するまでもないだろうが、キラパジュンは南米チリのフォルクローレのグループ。1965年に結成され、その後メンバーは入れ替わっているものの、一貫して政治的メッセージの強いヌエバ・カンシオン―直訳すると「新しい歌」だが、中南米における音楽を通した社会変革運動のこと―を代表する存在である。1973年9月11日のピノチェト将軍によるクーデターにより、欧州公演中の彼らはフランスに亡命、88年になってようやく帰国することができた。アルバムのタイトルにもなっている El pueblo unido jamás será vencido ―団結した民衆は決して負けない(邦題、不屈の民)は、圧政や抑圧に抵抗する歌として、世界中で歌われている。また、7曲目の Venceremos(ベンセレーモス)は、サルバドール・アジェンデが率いる人民連合のテーマソングとして歌われた。

収録曲
1. Comienza la Vida Nueva
2. Elegia al Che Guevara
3. Niño Araucano  
4. Nuestro Cobre
5. Soy del Pueblo
6. Titicaca
7. Venceremos
8. Tio Caiman
9. La Represion
10. Cancion de la Esperanza
11. El Rojo Gota a Gota Ira Creciendo
12. Chacarilla
13. Con el Alma Llena de Banderas
14. El Pueblo Unido Jamas Sera vencido

 米国の支援を受けたピノチェト将軍を主犯とする陸海空+警察の4軍によるクーデターで殺害された故サルバトーレ・アジェンデ大統領を追悼するコンサートにおいて、キラパジュンが歌う「不屈の民」をYouTube動画で見ることができる。亡命当時、若者だった彼らもいい歳のオジサンになっている。

キラパジュンの公式サイトはこちら→ http://www.quilapayun.com/

El pueblo unido jamás será vencido
(不屈の民)

¡El pueblo unido jamás será vencido!
¡El pueblo unido jamás será vencido!
¡El pueblo unido jamás será vencido!

ひとつになった人々は決して負けはしない!
ひとつになった人々は決して負けはしない!
ひとつになった人々は決して負けはしない!

De pie, cantar, que vamos a triunfar.
Avanzan ya banderas de unidad:
y tú vendrás cantando junto a mí,
y así verás tu canto y tu bandera florecer,
la luz, de un rojo amanecer,
anuncian ya la vida que vendrá.

立ちあがって歌おう われらが勝利するのだと
連帯の旗が 進んでいく
そして君が来る 僕と並んで歩きながら
見るがいい 君の歌と旗が花ひらくのを
紅の夜明けの曙光がさし
来たるべき生を告げる

De pie, luchar, el pueblo va a triunfar,
será mejor la vida que vendrá
a conquistar nuestra felicidad,
y en un clamor mil voces de combate se alzarán,
dirán, canción de libertad,
con decisión, la patria vencerá.

立ちあがって闘おう 
人々は勝利するのだと
来たるべき生は より良くなるのだと
自らの幸せを勝ちとるために
歓呼の中で 闘う幾千の声がわきあがり
自由の歌をうたう
断固として 祖国は勝利すると

Y ahora, el pueblo que se alza en la lucha,
con voz de gigante gritando: ¡adelante!
¡El pueblo unido jamás será vencido!
¡El pueblo unido jamás será vencido!

いま人々は 闘いに立ちあがり
巨人のごとく叫ぶ 「前へ!」と
ひとつになった人々は決して負けはしない!
ひとつになった人々は決して負けはしない!

La patria está forjando la unidad,
de norte a sur se movilizará
desde el salar ardiente y mineral al bosque austral,
unidos en la lucha y el trabajo
irán, la patria cubrirán,
su paso ya anuncia el porvenir.

De pie cantar, el pueblo va a triunfar,
millones ya imponen la verdad,
de acero son, ardiente batallón,
sus manos van llevando la justicia y la razón,
mujer, con fuego y con valor,
ya estás aquí junto al trabajador.

祖国は団結を固め
北から南まで伝搬する
灼熱の塩田から 南端の針葉樹林まで
闘いと労働で連帯し
祖国は その跡を進んでいく
その歩みは いまにも未来を告げる

立ちあがって闘おう 人々は勝利するのだと
幾百万の人々は 真実を求めている
燃えあがる闘いは 鋼色
その手は正義と道理を運ぶ
君よ 炎と勇気をもって
ここにいておくれ 働く者のかたわらに

Y ahora, el pueblo que se alza en la lucha,
con voz de gigante gritando: ¡adelante!
¡El pueblo unido jamás será vencido!
¡El pueblo unido jamás será vencido!

lara lara lara lara lara… …

いま人々は 闘いに立ちあがり
巨人のごとく叫ぶ 「前へ!」と
ひとつになった人々は決して負けはしない!
ひとつになった人々は決して負けはしない!

ラララ……


Giovanni Mirabassi

“AVANTI!”

 ジョバンニ・ミラバッシは1970年、イタリアに生まれたジャズ・ピアニスト。繊細なタッチと豊かな表現が生み出すメッセージ性の強い音楽は聴く者を虜にする。拠点はパリだが、日本にもたびたび来日。ジブリのアニメのファンでもある。トリオによる演奏が多いが、このアルバムの全16曲―革命歌、反戦歌、レジスタンス賛歌がピアノ・ソロで奏でられる。アルバムのタイトル AVANTI! は、直訳すれば「前へ!」だろうか。権力に対して反旗を掲げる、闘う民衆への応援歌である。

収録曲
1. El Pueblo Unido Jamas Sera Vencido
2. Le Chant Des Partisans
3. Ah! Ca Ira
4. Le Temps Des Cerises
5. Hasta Siempre
6. Je Chante Pour Passer Le Temps
7. Sciur Padrun
8. El Paso Del Ebro
9. A Si M’bonanga
10. La Butte Rouge
11. Addio Lugano Bella
12. Johnny I Hardly knew Ye
13. Bella Ciao
14. Imagine
15. My Revolution
16. Plaine, Oh Ma Plaine

2002年 フランス、ボルドーにある旧 Uボート基地のイベント会場でのピアノソロ コンサートにて。曲目はアルバム ”AVANTI!”から。

ミラバッシの公式サイトはこちら→ https://www.giovannimirabassi.com/

上の動画のコンサートを収録したDVDの説明はリンク先をごらんください。→ https://bessho9.info/mov/music.html#avanti


  

HK & Les Saltimbanks

Citoyen Du Monde

 フランスの旧植民地アルジェリア出身のHKを中心に、2009年に結成されたサルタンバンクスは、貧困や格差、不平等、差別、環境など、現代フランスが抱える社会の病理を歌う。ノリの良いリズムと皮肉の効いた歌詞はいかにもフランス的。Citoyen Du Monde ―世界の市民というアルバムのタイトルもぴったりだ。

収録曲
1. Des Airs Nomades (intro)
2. Salam Alaykoum
3. Enfant d’une Epoque
4. Ta Recompense
5. Citoyen du Monde
6. Passer Ma Vie
7. On Lache Rien
8. L’homme est Loup
9. Saltimbanques de Fortune
10. Tout va Bien
11. Niquons la Planete
12. Ma Parole
13. Identite Internationale
14. La Unidad
15. Jerusalem (Al Qods)
16. La Maman
17. On Sera Jamais les Beatles
18. Un Air d’Accordeon
19. Le Troubadour
20. L’homme est Loup (Peace of Salam Remix)

7曲目の On Lache Rien(あきらめないぞ!)は、2010年11月6日、冷たい雨の降るパリで、年金制度改革に抗議する市民たちの熱気を伝えるYouTube動画で知っている人も多いだろう。

HK公式サイト → https://hk-officiel.com/


 

自由の歌 Les Chants de la Liberté

“Les Chants de la Liberté”

アルバムのタイトルは「自由の歌」だが、収録曲のほとんどが、いわゆる軍歌である。最後の曲であるフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」にしても、もとは「ライン軍の歌」という軍歌にほかならない。軍歌が自由の賛歌とは、これいかに。私たち日本人は違和感を覚えるかもしれないが、日本とフランスでは、軍歌の成立要因も歌詞の内容も異なるからである。

明治以後、膨張政策をとった日本は対外戦争へと邁進していった。日本の軍隊は侵略を目的とした組織だったのである。だから、歌われるのは、満州や中国大陸、ラバウルなど、「ここはお国を何百里…」、国民の目には見えない遠く離れた異郷であることが多い。戦う相手は敵の兵士であり、日本に従わない現地の反対勢力だった。日本の軍歌は、兵士の鼓舞、戦死者の顕彰、国民の戦意高揚と忍従、すなわち戦争遂行のための歌なのである。

一方、国内が戦場になった経験を持つフランスでは、圧政や他国による支配に隷属しないために戦うことはやむを得ない選択だった。敵は他国の軍隊とは限らない。自国の王や皇帝であれ、自分らの生命を奪い、生活を破壊するものは民衆の敵という認識である。「パルチザンの歌」などは、敵を目前にして武器を取らざるを得なかった人々の抵抗の歌である。

戦争の正当化と抵抗の呼びかけ、賛美の対象と方法の違いを知ることで、戦争に向き合った日仏の国民のあり方の違いが見えてくる。

収録曲
1. Le déserteur – Boris Vian
2. Sans la nommer – Georges Moustaki
3. La chanson de craonne – Maxime Le Forestier
4. Ca Ira – Edith Piaf
5. Giroflée Girofla – Yves Montand
6. J’Avions Reçu Commandement – Yves Montand
7. Le Chant Des Partisans – Germaine Sablon
8. L’Internationale – François Marty
9. Le Temps Des Cerises – Charles Trenet
10. La Butte Rouge – Yves Montand
11. Les Canuts – Yves Montand
12. Liberte – Charles Trenet
13. Le Drapeau Rouge – Luis Zuccha
14. La Complainte De Mandrin – Yves Montand
15. La Marseillaise – Django Reinhardt

7曲目のフランスの女優サブロンが力強く歌う「パルチザンの歌」は、YouTube動画でも聴くことができる。

Le Chant des Partisans(パルチザンの歌)

Ami, entends-tu le vol noir des corbeaux sur nos plaines?
Ami, entends-tu les cris sourds du pays qu’on enchaîne?
Ohé! partisans, ouvriers et paysans, c’est l’alarme!
Ce soir l’ennemi connaîtra le prix du sang et des larmes!



友よ、見える? 飛び交うカラスの黒々した群が
友よ、聞こえる? 国民(くにたみ)の声なき叫びが
おゝ、パルチザン、労働者、農夫たち お告げよ!
今宵、敵は知ることになるわ 血と涙の代償を!

Montez de la mine, descendez des collines, camarades!
Sortez de la paille les fusils, la mitraille, les grenades.
Ohé, les tueurs à la balle ou au couteau, tuez vite!
Ohé! saboteur, attention à ton fardeau: dynamite!


坑道を上がるのよ、丘を降りるのよ 仲間たち!
藁から取り出すのよ 銃を、散弾を、手榴弾を
おゝ、銃やナイフを手にした殺し屋ども 殺(や)るのよ!
おゝ、破壊工作班 ダイナマイトに気をつけて!

C’est nous qui brisons les barreaux des prisons pour nos frères,
La haine à nos trousses et la faim qui nous pousse, la misère.
Il y a des pays ou les gens au creux de lits Font des rêves;
Ici, nous, vois-tu, nous on marche et nous on tue, nous on crève.


私たちよ 兄弟たちのため、監獄の鉄格子を破るのは
私たちにつきまとう憎しみ、飢え、貧困
寝床で夢を見ていられる国だってあるのに
ここでは踏みつけられ、殺されかねないわ

Ici chacun sait ce qu’il veut, ce qui’il fait quand il passe.
Ami, si tu tombes un ami sort de l’ombre a ta place.
Demain du sang noir séchera au grand soleil sur les routes.
Sifflez, compagnons, dans la nuit la Liberté nous écoute.


ここでは誰もがわかっているわ やるべきことを
友よ、あんたが倒れても 誰かが引き継ぐわ
路上の血だまりも 明日の太陽が乾かすのよ
口笛を吹きなさい 今宵、自由は私たちの声を聞くはずよ

Ami, entends-tu le vol noir des corbeaux sur nos plaines?
Ami, entends-tu les cris sourds du pays qu’on enchaîne?
Oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh…


友よ、見える? 飛び交うカラスの黒々した群が
友よ、聞こえる? 国民(くにたみ)の声なき叫びが
オーオーオー…


(しみずたけと) 2020.5.31

「沼地の兵士の歌」のCD紹介

 以前の「記事:沼地の兵士の歌」にて紹介したドイツ語、フランス語、英語の各国語で歌われる「沼地の兵士の歌」が収録されているCDを紹介しておこう。

::: CD :::

1) Hannes Wader singt Arbeiterlieder

 ハーネス・ヴァーダー(1942年~)のコンサート・ライブ。11番目の曲が、オリジナルのドイツ語による「沼地の兵士の歌」である。他にも、イタリア・パルチザンの歌であった「ベラ・チャオ」や、南米チリのヌエバ・カンシオン、世界中で歌われている「不屈の民」、そして「インターナショナル」など、労働歌は、すなわち抵抗の歌であることがわかる。

 「インターナショナル」を、社会主義・ソ連の歌であると勘違いしている人がいるが、この歌も社会主義もフランスで生まれたものだ。それに、ソ連が真に社会主義であったことはないし、あったとしても、ごく短い期間でしかなかった。中国しかり、北朝鮮もまた、しかりである。

 聴衆がいっしょに唱和するところなど、見知らぬ人同士がビアホールで合唱を始めてしまう、いかにもドイツ的で楽しい。こうした宥和的な民族性を逆手にとったのが、まさにナチスだった。美点は、気をつけないと、悪用されたときが恐ろしい。

  1.  Dem Morgenrot Entgegen (Lied Der Jugend)
  2. Auf, Auf Zum Kampf
  3. Der Kleine Trompeter
  4. Bella Ciao (Lied Der Italienischen Partisanen)
  5. Mamita Mia (De Las Cuatro Muleros)
  6. Die Thälmann-Kolonne (Spaniens Himmel)
  7. El Pueblo Unido
  8. Trotz Alledem (Dass Sich Die Furcht In Widerstand Wandeln Wird)
  9. Das Einheitsfrontlied
  10. Solidaritätslied
  11. Die Moorsoldaten
  12. Lied Vom Knüppelchen
  13. Die Internationale

2) Le Choeur de l’Armée Française

 こちらでは、フランス陸軍合唱団による「沼地の兵士の歌」を聴くことができる。遅めのテンポともあいまって、快活ともいえるドイツ語の歌より暗さを感じるだろう。軍で歌われたということは、歴史的事実を愛国心に転換する手法が存在するということでもある。おなじみになった「パルチザンの歌」のほか、ミサ曲も、ここでは軍隊や愛国心を歌うものとなっている。演奏は、吹奏楽でも有名なギャルド・レピュブリケーヌだ。

MESSE MILITAIRE
 1.  Prélude et Notre Père
 2.  Interlude pastoral
 3.  Au Drapeau – Psaules, Poème
 4.  Kyrie Éleison – Agnus Dei
 5.  Interlude – Poème – Psaumes – Amen

6.  PRIÈRE POUR NOUS AUTRES CHARNELS
7.  LE CHANT DES PARTISANS
8.  LE CHANT DES MARAIS

MESSE MÉMOIRE ET PATRIE
 9.  Kyrie Éleison
 10.  Sanctus
 11.  Agnus Dei
 12.  De Profundis

13.  FINAL DE LA CANTATE LIBERTÉ

Orchestres de la Garde Républicaine


3) Pete Seeger: “Live in ’65”

 アメリカのフォーク・リバイバル運動の中心であり、プロテスト・ソングの歌い手であったピート・シーガー(1919~2014年)。1965年というと、ベトナム戦争の初期だが、その頃のコンサート・ライブを収めた2枚組のCD。「沼地の兵士の歌」は、サビの部分でドイツ語をまじえたり、軽妙な語り口が楽しい。ようやくメジャーになりかけてきたボブ・ディランの「激しい雨が降る」や、知らぬ人のいない「花はどこへ行った」も収録されている。「グアンタナメーラ」は、いま聴くと、テロ容疑者に対する非人道的な取り扱いで国際社会から非難されているグアンタナモ収容所を想起してしまうのは、はたして私だけだろうか。

CD 1
  1.  Oh Susanna
  2. He Lies in an American Land
  3. Oleanna
  4. Uh, Uh, Uh
  5. Never Wed an Old Man
  6. When I First Came to This Land
  7. All Mixed Up
  8. I Come and Stand at Every Door
  9. Malaika
  10. May There Always Be Sunshine
  11. Manyura Manya
  12. The Freedom Come-All-Ye
  13. Peat Bog Soldiers
  14. Los Cuatro Generales
  15. Turn! Turn! Turn
  16. Healing River
CD 2
  1.  This Little Light of Mine
  2. Old Joe Clark
  3. Going Across the Mountain
  4. Praties Grow Small
  5. Step by Step
  6. Greensleeves
  7. I Once Loved a Lass
  8. Queen Anne Front
  9. A Hard Rain’s A-Gonna Fall
  10. The Bells of Rhymney
  11. If I Had a Hammer
  12. Guantanamera
  13. This Land is Your Land
  14. Where Have All the Flowers Gone
  15. Abiyoyo

4) Paul Robeson: ‘SONGS FOR FREE MEN’ 1940-45

 アメリカのバス・バリトン歌手、ポール・ロブスン(1898~1976年)。逃亡奴隷で、後に牧師となった父親をもつ彼が歌う、アメリカン・バラッド、奴隷でない自由人の、そして黒人霊歌を収めたCDである。

  1.  Ballad for Americans
  2. Spring Song
  3. Oh, Give Me Your Hand
  4. Chee La!
  5. Fengyang
  6. Chinese Soldiers Song
  7. Riding the Dragon
  8. From Border to Border
  9. Oh, How Proud Our Quiet Don
  10. The Purest Kind of Guy
  11. Joe Hill
  12. The Peat-Bog Soldiers
  13. The Four Insurgent Generals
  14. Native Land
  15. Song of the Plains
  16. Cradle Song
  17. Within Four Walls
  18. Anthem of the Ussr
  19. The United Nations
  20. By An’ By
  21. Sometimes I Feel Like a Motherless Child
  22. John Henry
  23. Water Boy
  24. Go Down Moses
  25. Balm in Gilead
  26. Nobody Knows De Trouble I’ve Seen
  27. Joshua Fit De Battle of Jericho

(しみずたけと) 2021.12.28

「沼地の兵士の歌」へ跳ぶ

9j音楽ライブラリーへ跳ぶ
リンク先は別所憲法9条の会ホームページ