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メディア

日本のジャーナリズムは健在か
新聞記者
監督:藤井直人  2019年・The icon、スターサンズ 113分

「怪しい彼女」などで知られる韓国の演技派女優シム・ウンギョンと松坂桃李がダブル主演を務める社会派サスペンス。東京新聞記者・望月衣塑子の同名ベストセラーを原案に、若き新聞記者とエリート官僚の対峙と葛藤をオリジナルストーリーで描き出す。

東都新聞の記者・吉岡エリカのもとに、医療系大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届く。日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ち、強い思いを秘めて日本の新聞社で働く彼女は、真相を突き止めるべく調査に乗り出す。

一方、内閣情報調査室の官僚・杉原は、現政権に不都合なニュースをコントロールする任務に葛藤していた。そんなある日、杉原は尊敬するかつての上司・神崎と久々に再会するが、神崎はその数日後に投身自殺をしてしまう。真実に迫ろうともがく吉岡と、政権の暗部に気づき選択を迫られる杉原。そんな2人の人生が交差し、ある事実が明らかになる。

https://eiga.com/movie/90346/ より引用(公式サイト)

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時代を見つめる確かな眼
ニッポンの嘘 ~報道写真家 福島菊次郎90歳~
監督:長谷川三郎  2012年・ビターズ・エンド 114分

敗戦直後の広島、被爆者家族の苦悩を10年間にわたって撮り続け、その後は三里塚闘争、学園紛争、70年安保、あさま山荘事件、水俣、近年では上関原発建設問題でゆれる祝島など、その時代を象徴する事件に迫り、25万枚以上の写真に収めてきた報道写真家、福島菊次郎。反動化する日本社会やメディアと袂を分かち、無人島で自給自足の生活に入った彼は愛犬とともに静かに暮らしていたが、胃がんの手術を受け、最期を意識した時期に東日本大震災が発生。戦後日本を見つめ続けてきた彼は、再びカメラを手に、原発事故の取材に向かった。3年の密着取材が可能にしたこのドキュメンタリーは、事実と嘘を見分ける眼の大切さを私たちに突きつける。

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虚飾を剥がせ!この映画こそ日本の縮図だ!!
はりぼて
監督:五百旗頭幸男、砂沢智史  2020年・チューリップテレビ 100分

「有権者に占める自民党員の割合が10年連続日本一」である保守王国、富山県。その中心に位置する富山市議会で、2016年、ドンと呼ばれた自民党の重鎮が政務活動費の不正を認めて辞任すると、次々と議員たちの不正が発覚し、半年間に14人が辞職するという前代未聞の不祥事に発展。一連の不正をスクープし、疑惑を追及し続けたのは、大手マス・メディアなどではなく、2016年に開局したばかりのローカル放送局に過ぎないチューリップテレビの記者たちだった。市議会と市議たちを追い、政治家の非常識な姿や人間味のある滑稽さ、彼らが「はりぼて」にすぎないことを暴き出しながら、報道の裏側に巣くう「はりぼて」をも明らかにする。疑惑追及の先頭に立ってきた記者自らが制作した本作は、地方からこの国のあり方を問うドキュメンタリーになっている。早くDVDを販売してほしいものだ。

公式サイトへリンクしています。

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権力に立ち向かった放送人
グッドナイト&グッドラック
監督:ジョージ・クルーニー  2005年・米 93分

米ソ冷戦が激しくなってきた1953年、米国内ではマッカーシー上院議員を旗頭に、国内の共産主義者を徹底的に排除する活動が盛んになっていた。「赤狩り」「マッカーシー旋風」の時代である。政府を少しでも批判する者はみな容赦なく標的にされた。一般の市民だけでなく、新聞社や放送局などのマス・メディアさえも沈黙する中、CBSの人気キャスターであるエド・マローとプロデューサーのフレッド・フレンドリーは、番組内で「赤狩り」の欺瞞を暴き、マッカーシー当人こそが自由の敵であると訴える放送に踏み切るのだが…。

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ジャーナリストたちの矜持と覚悟
ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
監督:スティーヴン・スピルバーグ  2017年・米 116分

ベトナム戦争が泥沼化の一途をたどっていた1971年、ニューヨーク・タイムズは、この戦争に関する政府に不都合な事実が記載された最高機密文書、いわゆる「ペンタゴン・ペーパーズ」をスクープ、これを記事にする。国中が騒然となる中、ニクソン政権は裁判所に記事の差し止め命令を要求。タイムスが苦境に陥る一方、スクープ競争に敗れたライバルのワシントン・ポストでは、編集主幹が文書の入手に奔走する。ようやく全文コピーを入手したが、公表すれば裁判となり、社の未来を危うくするかもしれない。報道の信義か経営が優先か、社内の意見も割れた。亡夫を継いだ米国新聞史上初の女性発行人が重大な決断を下す。

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権力に屈しない男たち
大統領の陰謀
監督:アラン・J・パクラ  1976年・米 138分

二人の新聞記者が、ワシントンの民主党本部で起きた盗聴事件の真相を根気強く調査し、徐々に真相が判明していく。米国の政治スキャンダル「ウォーターゲート事件」である。その実話を、ドキュメンタリー・タッチで映画化したもの。弾劾が避けられないと悟ったニクソン大統領は、ついに任期中に辞任した。

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ニュースの裏側を描く衝撃の実話
ニュースの真相
監督:ジェームズ・ヴァンダービルト  2015年・豪/米 125分

2004年の米大統領選。再選を目指すジョージ・ブッシュ大統領の軍歴疑惑が持ちあがった。追及していたCBSニュースのプロデューサー、メアリー・メイプスが決定的な証拠を入手、同局の看板報道番組『60ミニッツII』でアンカーマンのダン・ラザーが公にする。番組は大反響を呼ぶのだが、保守派の指摘で、今度はこの証拠が疑惑の対象にされ、ダンは降板、メアリーも釈明に追われる羽目に。軍歴疑惑はどこかに行ってしまったのか、今や議論の外である。つかんだ証拠の真偽が論点になり、集中砲火を浴びるメアリーだが…。メアリー・メイプスの自伝をもとに、スキャンダルの真相とバッシングの嵐の中で見せたジャーナリスト魂と矜持を描く社会派ドラマ。

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米国ジャーナリズムの矜持
記者たち 衝撃と畏怖の真実
監督:ロブ・ライナー  2017年・米 91分

ナイト・リッダー紙のワシントン支局長は、軍需・エネルギー産業の支援を受けたブッシュ政権がイラク攻撃を計画しているとの情報に接する。大手新聞社は「大量破壊兵器保有」という政府発表をそのまま報じ、大衆の愛国心が煽られていく中、疑念を抱いた彼は部下の記者たちに徹底した取材を命じ、情報が捏造であることを突き止める。地道な調査、それによって得た真実のみで対抗した実在する中堅新聞社の記者たちの信念、マス・メディアとしての矜持を描いた社会派ドラマ。

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一枚の写真が伝える真実
MINAMATA ― ミナマタ ―
監督:アンドリュー・レヴィタス  2020年・米 115分

1971年のニューヨーク。米国を代表する世界的写真家ユージン・スミスの前に、一人の女性が現れた。日本語の通訳のアイリーンである。日本の水俣で、工場から海に排出されている有害物質が多くの人々を苦しめている現実を、あなたの写真で世界に伝えてほしい、そう訴えるのだった。水俣の惨状に心を痛め、現地での取材を開始するユージン・スミス。

水俣の名を世界に知らしめた伝説のフォト・ジャーナリストが、日本に三年間滞在し、水俣病に苦しむ人々を取材した実話を、ジョニー・デップの主演で映画化した伝記物語である。

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最前線での報道と引き替えに…
SAWADA 青森からベトナムへ ピュリツァー賞カメラマン沢田教一の生と死
監督:五十嵐匠  1997年・グループ現代 115分

UPIの報道カメラマンとして、愛用のライカM3のファインダーの向こうに沢田が見たベトナム戦争とは何だったのか。大義の名の下に苦痛にゆがむ兵士の顔、平和を求めて必死に生き延びようとするベトナムの人々…。世界的名声を得る数多くの受賞、栄光、孤立、逡巡、決断。貴重な多数の写真、「安全への逃避」で撮影された家族、エディ・アダムス、ピーター・アネットら沢田と共にあの時代を生きた仲間の生々しい証言の数々が織りなすヒューマン・エピック叙事詩。(商品説明から)

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彼が見たものは何だったのか
地雷を踏んだらサヨウナラ
監督:五十嵐匠  1999年・シネカノン 111分

1972年、内戦激化のカンボジア。銃弾の飛び交う中でニコンのシャッターを切るのはフリーのジャーナリスト・一ノ瀬泰造。ロバート・キャパや沢田教一に憧れ、戦場カメラマンへ。インドシナ半島を駆け巡り、「うまく撮れたら、東京まで持って帰ります。もし、地雷を踏んだらサヨウナラ」と書き残した彼は、解放軍の聖域アンコールワットを目指した。享年26歳。激動のインドシナ半島と、そこに散ったカメラマンの生き様。紛争と人間を描いたドラマ。

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伝説の女性ジャーナリストの壮絶な生き様
プライベート・ウォー
監督:マシュー・ハイネマン  2018年・米 110分

アメリカ人ジャーナリストのマリー・コルヴィン。2001年、英サンデー・タイムズ紙の特派員として、内戦中のスリランカで武装勢力「タミール・イーラム解放の虎」に同行取材、戦闘に巻き込まれて左眼を失明する。現場復帰したときの黒い眼帯がトレードマークに。アフガニスタンやイラク戦争でのスクープにより、2010年にはブリティッシュ・プレス・アワードの優秀外国人記者にも選ばれた。紛争地での過酷な取材によりPTSDを患い、それでもなお現場主義を貫いた彼女は、2012年、内戦のシリアで戦闘に巻き込まれ、ついに落命。享年56才。

数々の危険な紛争地帯に飛び込み、命がけの取材活動を敢行したマリー・コルヴィン。その壮絶なジャーナリスト人生を、知られざる素顔とともに描いた伝記映画。ドキュメンタリー『ラッカは静かに虐殺されている』で高い評価を受けたマシュー・ハイネマンが監督というのも、まさにうってつけ。

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惨状を伝え、復興を鼓舞するラジオ局
ラジオ・コバニ
監督:レバー・ドスキー  2016年・蘭 69分

トルコとの国境にほど近いシリア北部のクルド人の街、コバニ。2014年9月、ここは過激派組織“イスラム国”に占領された。四ヵ月後に解放されたのだが、激しい戦闘のため、街は瓦礫に。本作は、友人とともにラジオ局を立ち上げた20歳の大学生ディロバンの活動に焦点を当て、戦争で傷ついたコバニの惨状と復興への確かな道のりを見つめていく。

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偽りの繁栄に隠された深い闇
赤い闇 スターリンの冷たい大地で
監督:アグニェシュカ・ホランド   2019年・ポーランド/英/ウクライナ 118分

世界恐慌がまだ収まりきらぬ中で、ただソ連だけが繁栄を謳歌。はたしてそれは真実なのか。疑念を抱いた英国の若きジャーナリスト、ガレス・ジョーンズは、1933年、単身モスクワに乗り込む。厳しい監視の目をかいくぐり、スターリンの資金源を探り始めると、どうやらウクライナに秘密の鍵があるようだ。雪のウクライナを目指した彼が目にした者は…。

スターリン政権下のソ連で、実在の英国人記者が命を賭した極秘取材を敢行し、偽りの繁栄の裏にある深い闇を暴き出した。サスペンスあふれる歴史ドラマである。

公式サイトへリンクしています。

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人の感情を操作するための演出
太陽の下で ―真実の北朝鮮―
監督:ヴィタリー・マンスキー  2015年・チェコ/露/独/ラトビア/北朝鮮 110分

ロシアのドキュメンタリー監督ヴィタリー・マンスキーは、北朝鮮政府との二年間にわたる交渉の末、どうにか平壌の一般家庭の密着撮影を許可される。模範労働者の両親と八歳の娘の日常生活を通して描かれたドキュメンタリーだが、当局がすべてを管理掌握し、登場する人物には演技指導まで行われており、プロパガンダまがいの制作が進行する。そこでマンスキー監督は、演出の現場を隠し撮りすることで、演出の実態を白日の下にさらす作品へと切り替え、極秘裏に持ち出された映像素材を元に作られたのが本作である。

演出やプロパガンダを、ナチス・ドイツ、旧ソ連、中国、北朝鮮など、全体主義や社会主義体制下に特有のことだと早合点してはいけない。アメリカやわが国でも、ごくふつうに行われている。いや、広告代理店という印象操作のプロが幅を利かせ、そうとは気づかせないほど巧みなので、むしろ厄介なくらいである。

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裏切ったのは国だった
スパイネーション/自白
監督:チェ・スンホ  2016年・韓国 106分

2013年、ひとりの脱北者がスパイ容疑で逮捕された。国家情報院の捜査に疑念を抱いたチェ・スンホは、ジャーナリスト魂を発揮、独自に調査を開始する。国家情報院による“北朝鮮スパイ捏造”という、国家権力の深い闇に迫った衝撃のドキュメンタリー。

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記者が黙った 国が壊れた
共犯者たち
監督:チェ・スンホ  2017年・韓国 105分

李明博から朴槿恵にかけ、約9年間にわたって続いた韓国の保守政権。当時の言論弾圧の実態を告発した社会派ドキュメンタリーである。2008年、大統領に就任した李明博は、公共放送KBSと公営放送MBCに対する露骨な政治介入を始めた。政権に批判的な経営陣を排除し、記者たちも次々と追い出しにかかる。ストライキで抵抗する労働組合だったが、政権が送り込んだ新しい経営陣によって、両局は政府の“広報機関”へと成り下がる。一方、MBCの名物プロデューサーだったチェ・スンホと、不当解雇されたジャーナリストらは、「ニュース打破」なる非営利独立メディアを立ち上げ、調査報道を続けていった。本作は、当事者のチェ・スンホが自ら監督を務め、“主犯”の大統領と、権力に迎合した業界内の“共犯者たち”による言論弾圧がもたらしたメディアの腐敗を暴き出すとともに、権力の介入から報道の自由を守るために体を張ったジャーナリストたちの不屈の闘いを描く。

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バカバカしいと笑うことなかれ
アトミック・カフェ
監督:ケヴィン・ラファティ、ジェーン・ローダー、ピアース・ラファティ   1982年・米 89分

今から見ると荒唐無稽な、冷戦下40年~50年代にかけてのニュースフィルムやアメリカ政府製作の広報フィルムだけを素材に、ナレーションを一切加えずに編集の妙技だけで見せ切る、クールかつブラックなエディトリアル・ドキュメンタリー。冷戦期から現在まで脈々と続くアメリカの大衆プロパガンダ戦略が、ノー天気なポップソングと爆笑を誘うフィルム・コラージュの隙間から立ち上がってくる。

3人の共同監督のうち2人があのブッシュのいとこ!それが一家最大の天敵マイケル・ムーアにドキュメンタリー映画製作のイロハを教えてしまった。ムーアの『ロジャー&ミー』や『ボウリング・フォー・コロンバイン』を見れば、この作品からの影響は一目瞭然。そんな歴史のネジれと皮肉にも心馳せつつ、この伝説の傑作を心してみよ!(商品説明から)

米ソが原爆製造競争に明け暮れていた1940年代後半から50年代、アメリカ政府が国民向けに作った数多くの原爆PRフィルムやニュースフィルムを再編集したドキュメンタリー。収録された当時の映像には、放射能に関する大嘘や捏造された報道に充ち満ちており、大衆操作の恐ろしさを物語る。そのナンセンスぶりは、今にしてみれば大笑いものなのだが、大真面目に受けとられていた当時を思うと、ものごとを批判的に見る能力、“critical thinking”の必要性がよくわかる。核の危険を、声高に訴えるのではなく、事実と為政者の手口を白日の下にさらすことのみで見せるユニークな構成に拍手!

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正しい情報は、向こうからは来ない
チョムスキーとメディア ― マニュファクチャリング・コンセント ―
監督:マーク・アクバー、ピーター・ウィントニック  1992年・加 167分

マスメディアは、政府や大企業のプロパガンダに奉仕している。「現代の民主主義国家におけるプロパガンダは、政府による検閲や悪意による報道の歪曲ではなく、マスメディアが持つシステムそのものによってごく自然におこなわれている。」このノーム・チョムスキーの分析が、映画の主役である。映画の前半では、東ティモールとカンボジアで起きた集団虐殺について、ニューヨーク・タイムズ紙がどのように報道したか比較するケーススタディに注目。そして後半では、チョムスキーに反論する人物が次々と登場。反主流派の意見が隅に追いやられていく実態を描きつつ、オルタナティブ・メディアの具体的な成功例を紹介する。(商品説明から)

ノーム・チョムスキー。このアメリカを代表する知識人の一人が、民主主義社会におけるマスメディアの役割を、豊富な事例を用いて検証し、その危険な実態に警鐘を鳴らす。また、私たちが本当に必要な情報を手に入れるためには、オルタナティブ・メディアの存在が不可欠であると説く。彼のこの指摘は、実に30年近く前になされたものであることを考えてほしい。世界中で巨大マスメディアによる寡占が進行し、フェイク情報があふれる一方、為政者が自分に都合の悪い事実を「フェイクだ」と切り捨てる事態が頻発し、あるいは政権による隠蔽・歪曲・捏造がゾンビのごとく復活の兆しを見せる国では、一般市民のメディア・リテラシーがますます重要になっている。

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こんなカエルに誰がした!?
フィールズ・グッド・マン
監督:アーサー・ジョーンズ  2020年・米 94分

今やカルト的な人気を集める緑色のカエル、その名はぺぺ。この暢気で平和的なキャラクターを生み出したのは、インディーズ系の漫画家マット・フューリーである。ところが、SNSを通じて模倣と拡散が繰り返されていくうちに、ぺぺは白人至上主義者に悪用され、トランプ支持の現象と結びつき、ヘイトのシンボルへと変貌してしまった。我が身の分身のようなペペが、インターネットミームにより、作者の思いからかけ離れた人種差別的キャラクターに作り変えられてしまったマットの苦悩と怒り。ぺぺの元々のイメージを奪還する闘いに立ち上がったマットは…。

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社会派ケン・ローチ、激闘の映画人生
ヴァーサス/ケン・ローチ映画と人生
監督:ルイーズ・オズモンド  2016年・英 93分

ケン・ローチと言えば英国を代表する、いや社会派作品を撮る世界的な映画監督だ。BBCの演出家からスタートしたころから、社会の周辺や底辺に生きる人々の姿を、ときに厳しく、しかし温かい眼差しで描き続けてきた。カンヌ国際映画祭で二度パルムドールに輝いた巨匠だが、それらはもちろんのこと、他の作品も秀作揃いである。権力に媚びない、反骨精神あふれる生き様。そのケン・ローチの映画人生を追ったドキュメンタリーであるから、彼の作品を、より深く理解するためにも、ぜひ見ておきたい。

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メディアは大丈夫か?
コレクティブ 国家の嘘
監督:アレクサンダー・ナナウ   2019年・ルーマニア/ルクセンブルク/独 109分

2015年10月30日、ルーマニアのライブハウス“コレクティブ”で火災が発生。死者27人、負傷者180人の大惨事だった。その後、本来なら亡くなるはずのない負傷者が、治療を受けていた複数の病院で次々と死亡。犠牲者の数は大きく膨らんだ。この異常事態にも、政府は医療体制に問題はないと繰り返すのみ。ほとんどのメディアが追認する中、疑問を抱いたスポーツ紙『ガゼタ・スポルトゥリロル』の記者たちが地道な調査を進め、医療をめぐる巨大な汚職の実態と権力の腐敗を暴いていく衝撃のドキュメンタリー。

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国民を戦争に駆り立てたメディア
戦時下のスクリーン ― 発掘された國策映画 ―

①日出づる國 1929年・文部省 19分
②東亜の鎮め―陸軍記念日を祝う歌 1936年・朝日新聞社 10分
③血染めのスケッチ 1937年・振進キネマ社 22分
④軍馬物語 1938年・山口シネマ公司 14分
⑤國策短編シリーズ 八拾億圓 1938年・聯合映画社 10分
⑥英雄讃歌 1939年・ミヅナカ映画部 10分
⑦靖國神社 1939年・謹製 皆川芳造 20分
⑧出征兵士を送る歌 1940年・朝日映画社 7分
⑨艦隊行進譜 1940年・理研科學映画 8分
⑩内閣情報部撰定 愛國行進曲 1938年・鱗映社 11分
⑪戦ふ女性 1939年・朝日映画社 22分
⑫興亜大日本 1940年・国光教育映画社 19分
⑬武器なき敵 1940年・理研科學映画 19分
⑭生きた慰問袋 1942年・中央映画社 12分
⑮北の健兵 1943年・藝術映画社 19分
⑯學徒出陣 1943年・文部省映画 15分

インターネットもSNSもない時代、人々は新聞とかラジオ放送くらいしか情報源を持っていなかった。そして、それらは国家の管理・統制下にあったのだから、社会の公器は上意下達の提灯記事、政権の太鼓持ちと同義語でしかなかったといえよう。まだテレビのない時代、映画は視覚に訴える最も強力な広報手段だった。なぜなら、人は読んだもの、聞いたものより、自分の目で「見たもの」に強く影響されがちだからである。だからこそ、政府だけでなく、政府の要請で、あるいは権力への忖度が、これらの映像作品を生み出すこととなった。これを見て、人々は戦争への道を歩んだのである。

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メディアに踊らされた国民が辿ったのは…
続・戦時下のスクリーン ― 発掘された國策映画 ―

①大東亜戦争撃滅戦記 1942年・日本映画社 61分
②一億前進 1941年・加治商會 8分
③海ゆかば 1937年・東京シネマ商會 11分
④御大礼觀兵式 代々木 1928年・御大禮謹写團 3分
⑤御大礼觀艦式 横浜 1929年・海軍省 6分
⑥日本ニュース』 241號 1945年・日本映画社 6分
⑦映画月報 第12號 1944年・日本映画社 11分
⑧天業奉頌 1941年・日本映画社 60分
⑨海鷲 1942年・藝術映画社 30分
⑩東亜の黎明 1938年・朝日新聞社 12分
⑪科学立體戦 1939年・軍機械化映画製作所 9分

映像には人を虜にする力がある、いや、黒を白に思わせ、合理的判断をやめさせる魔力があるといった方が良いだろうか。8000万国民がレミングと化した背景には、こうした洗脳に近いプロパガンダがあった。それを見破ることができなかった悲劇については、今さらくどくど述べる必要もあるまい。本作を見て、当時の人々の情報リテラシーのなさを笑うことはたやすい。しかし、現在の映像は、はるかに巧妙かつ効果的に作られている。裏に隠された意図に気づかなければ、同じ轍を踏むことになるだろう。

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