抵抗の歌

抵抗の歌を演奏するすてきな人たちを紹介します。

Quilapayún キラパジュン 南米チリのフォルクローレグループ
Giovanni Mirabasshi ジョバンニ・ミラバッシ イタリア生まれのジャズ・ピアニスト
HK & Les Saltimbanks アシュカ&サルタンバンクス 現代フランスが抱える社会の病理を歌う


Quilapayún

“El pueblo unido jamás será vencido”

 今さら説明するまでもないだろうが、キラパジュンは南米チリのフォルクローレのグループ。1965年に結成され、その後メンバーは入れ替わっているものの、一貫して政治的メッセージの強いヌエバ・カンシオン―直訳すると「新しい歌」だが、中南米における音楽を通した社会変革運動のこと―を代表する存在である。1973年9月11日のピノチェト将軍によるクーデターにより、欧州公演中の彼らはフランスに亡命、88年になってようやく帰国することができた。アルバムのタイトルにもなっている El pueblo unido jamás será vencido ―団結した民衆は決して負けない(邦題、不屈の民)は、圧政や抑圧に抵抗する歌として、世界中で歌われている。また、7曲目の Venceremos(ベンセレーモス)は、サルバドール・アジェンデが率いる人民連合のテーマソングとして歌われた。

収録曲
1. Comienza la Vida Nueva
2. Elegia al Che Guevara
3. Niño Araucano  
4. Nuestro Cobre
5. Soy del Pueblo
6. Titicaca
7. Venceremos
8. Tio Caiman
9. La Represion
10. Cancion de la Esperanza
11. El Rojo Gota a Gota Ira Creciendo
12. Chacarilla
13. Con el Alma Llena de Banderas
14. El Pueblo Unido Jamas Sera vencido

 米国の支援を受けたピノチェト将軍を主犯とする陸海空+警察の4軍によるクーデターで殺害された故サルバトーレ・アジェンデ大統領を追悼するコンサートにおいて、キラパジュンが歌う「不屈の民」をYouTube動画で見ることができる。亡命当時、若者だった彼らもいい歳のオジサンになっている。

キラパジュンの公式サイトはこちら→ http://www.quilapayun.com/

El pueblo unido jamás será vencido
(不屈の民)

¡El pueblo unido jamás será vencido!
¡El pueblo unido jamás será vencido!
¡El pueblo unido jamás será vencido!

ひとつになった人々は決して負けはしない!
ひとつになった人々は決して負けはしない!
ひとつになった人々は決して負けはしない!

De pie, cantar, que vamos a triunfar.
Avanzan ya banderas de unidad:
y tú vendrás cantando junto a mí,
y así verás tu canto y tu bandera florecer,
la luz, de un rojo amanecer,
anuncian ya la vida que vendrá.

立ちあがって歌おう われらが勝利するのだと
連帯の旗が 進んでいく
そして君が来る 僕と並んで歩きながら
見るがいい 君の歌と旗が花ひらくのを
紅の夜明けの曙光がさし
来たるべき生を告げる

De pie, luchar, el pueblo va a triunfar,
será mejor la vida que vendrá
a conquistar nuestra felicidad,
y en un clamor mil voces de combate se alzarán,
dirán, canción de libertad,
con decisión, la patria vencerá.

立ちあがって闘おう 
人々は勝利するのだと
来たるべき生は より良くなるのだと
自らの幸せを勝ちとるために
歓呼の中で 闘う幾千の声がわきあがり
自由の歌をうたう
断固として 祖国は勝利すると

Y ahora, el pueblo que se alza en la lucha,
con voz de gigante gritando: ¡adelante!
¡El pueblo unido jamás será vencido!
¡El pueblo unido jamás será vencido!

いま人々は 闘いに立ちあがり
巨人のごとく叫ぶ 「前へ!」と
ひとつになった人々は決して負けはしない!
ひとつになった人々は決して負けはしない!

La patria está forjando la unidad,
de norte a sur se movilizará
desde el salar ardiente y mineral al bosque austral,
unidos en la lucha y el trabajo
irán, la patria cubrirán,
su paso ya anuncia el porvenir.

De pie cantar, el pueblo va a triunfar,
millones ya imponen la verdad,
de acero son, ardiente batallón,
sus manos van llevando la justicia y la razón,
mujer, con fuego y con valor,
ya estás aquí junto al trabajador.

祖国は団結を固め
北から南まで伝搬する
灼熱の塩田から 南端の針葉樹林まで
闘いと労働で連帯し
祖国は その跡を進んでいく
その歩みは いまにも未来を告げる

立ちあがって闘おう 人々は勝利するのだと
幾百万の人々は 真実を求めている
燃えあがる闘いは 鋼色
その手は正義と道理を運ぶ
君よ 炎と勇気をもって
ここにいておくれ 働く者のかたわらに

Y ahora, el pueblo que se alza en la lucha,
con voz de gigante gritando: ¡adelante!
¡El pueblo unido jamás será vencido!
¡El pueblo unido jamás será vencido!

lara lara lara lara lara… …

いま人々は 闘いに立ちあがり
巨人のごとく叫ぶ 「前へ!」と
ひとつになった人々は決して負けはしない!
ひとつになった人々は決して負けはしない!

ラララ……


Giovanni Mirabassi

“AVANTI!”

 ジョバンニ・ミラバッシは1970年、イタリアに生まれたジャズ・ピアニスト。繊細なタッチと豊かな表現が生み出すメッセージ性の強い音楽は聴く者を虜にする。拠点はパリだが、日本にもたびたび来日。ジブリのアニメのファンでもある。トリオによる演奏が多いが、このアルバムの全16曲―革命歌、反戦歌、レジスタンス賛歌がピアノ・ソロで奏でられる。アルバムのタイトル AVANTI! は、直訳すれば「前へ!」だろうか。権力に対して反旗を掲げる、闘う民衆への応援歌である。

収録曲
1. El Pueblo Unido Jamas Sera Vencido
2. Le Chant Des Partisans
3. Ah! Ca Ira
4. Le Temps Des Cerises
5. Hasta Siempre
6. Je Chante Pour Passer Le Temps
7. Sciur Padrun
8. El Paso Del Ebro
9. A Si M’bonanga
10. La Butte Rouge
11. Addio Lugano Bella
12. Johnny I Hardly knew Ye
13. Bella Ciao
14. Imagine
15. My Revolution
16. Plaine, Oh Ma Plaine

2002年 フランス、ボルドーにある旧 Uボート基地のイベント会場でのピアノソロ コンサートにて。曲目はアルバム ”AVANTI!”から。

ミラバッシの公式サイトはこちら→ https://www.giovannimirabassi.com/

上の動画のコンサートを収録したDVDの説明はリンク先をごらんください。→ https://bessho9.info/mov/music.html#avanti


  

HK & Les Saltimbanks

Citoyen Du Monde

 フランスの旧植民地アルジェリア出身のHKを中心に、2009年に結成されたサルタンバンクスは、貧困や格差、不平等、差別、環境など、現代フランスが抱える社会の病理を歌う。ノリの良いリズムと皮肉の効いた歌詞はいかにもフランス的。Citoyen Du Monde ―世界の市民というアルバムのタイトルもぴったりだ。

収録曲
1. Des Airs Nomades (intro)
2. Salam Alaykoum
3. Enfant d’une Epoque
4. Ta Recompense
5. Citoyen du Monde
6. Passer Ma Vie
7. On Lache Rien
8. L’homme est Loup
9. Saltimbanques de Fortune
10. Tout va Bien
11. Niquons la Planete
12. Ma Parole
13. Identite Internationale
14. La Unidad
15. Jerusalem (Al Qods)
16. La Maman
17. On Sera Jamais les Beatles
18. Un Air d’Accordeon
19. Le Troubadour
20. L’homme est Loup (Peace of Salam Remix)

7曲目の On Lache Rien(あきらめないぞ!)は、2010年11月6日、冷たい雨の降るパリで、年金制度改革に抗議する市民たちの熱気を伝えるYouTube動画で知っている人も多いだろう。

HK公式サイト → https://hk-officiel.com/


 

自由の歌 Les Chants de la Liberté

“Les Chants de la Liberté”

アルバムのタイトルは「自由の歌」だが、収録曲のほとんどが、いわゆる軍歌である。最後の曲であるフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」にしても、もとは「ライン軍の歌」という軍歌にほかならない。軍歌が自由の賛歌とは、これいかに。私たち日本人は違和感を覚えるかもしれないが、日本とフランスでは、軍歌の成立要因も歌詞の内容も異なるからである。

明治以後、膨張政策をとった日本は対外戦争へと邁進していった。日本の軍隊は侵略を目的とした組織だったのである。だから、歌われるのは、満州や中国大陸、ラバウルなど、「ここはお国を何百里…」、国民の目には見えない遠く離れた異郷であることが多い。戦う相手は敵の兵士であり、日本に従わない現地の反対勢力だった。日本の軍歌は、兵士の鼓舞、戦死者の顕彰、国民の戦意高揚と忍従、すなわち戦争遂行のための歌なのである。

一方、国内が戦場になった経験を持つフランスでは、圧政や他国による支配に隷属しないために戦うことはやむを得ない選択だった。敵は他国の軍隊とは限らない。自国の王や皇帝であれ、自分らの生命を奪い、生活を破壊するものは民衆の敵という認識である。「パルチザンの歌」などは、敵を目前にして武器を取らざるを得なかった人々の抵抗の歌である。

戦争の正当化と抵抗の呼びかけ、賛美の対象と方法の違いを知ることで、戦争に向き合った日仏の国民のあり方の違いが見えてくる。

収録曲
1. Le déserteur – Boris Vian
2. Sans la nommer – Georges Moustaki
3. La chanson de craonne – Maxime Le Forestier
4. Ca Ira – Edith Piaf
5. Giroflée Girofla – Yves Montand
6. J’Avions Reçu Commandement – Yves Montand
7. Le Chant Des Partisans – Germaine Sablon
8. L’Internationale – François Marty
9. Le Temps Des Cerises – Charles Trenet
10. La Butte Rouge – Yves Montand
11. Les Canuts – Yves Montand
12. Liberte – Charles Trenet
13. Le Drapeau Rouge – Luis Zuccha
14. La Complainte De Mandrin – Yves Montand
15. La Marseillaise – Django Reinhardt

7曲目のフランスの女優サブロンが力強く歌う「パルチザンの歌」は、YouTube動画でも聴くことができる。

Le Chant des Partisans(パルチザンの歌)

Ami, entends-tu le vol noir des corbeaux sur nos plaines?
Ami, entends-tu les cris sourds du pays qu’on enchaîne?
Ohé! partisans, ouvriers et paysans, c’est l’alarme!
Ce soir l’ennemi connaîtra le prix du sang et des larmes!



友よ、見える? 飛び交うカラスの黒々した群が
友よ、聞こえる? 国民(くにたみ)の声なき叫びが
おゝ、パルチザン、労働者、農夫たち お告げよ!
今宵、敵は知ることになるわ 血と涙の代償を!

Montez de la mine, descendez des collines, camarades!
Sortez de la paille les fusils, la mitraille, les grenades.
Ohé, les tueurs à la balle ou au couteau, tuez vite!
Ohé! saboteur, attention à ton fardeau: dynamite!


坑道を上がるのよ、丘を降りるのよ 仲間たち!
藁から取り出すのよ 銃を、散弾を、手榴弾を
おゝ、銃やナイフを手にした殺し屋ども 殺(や)るのよ!
おゝ、破壊工作班 ダイナマイトに気をつけて!

C’est nous qui brisons les barreaux des prisons pour nos frères,
La haine à nos trousses et la faim qui nous pousse, la misère.
Il y a des pays ou les gens au creux de lits Font des rêves;
Ici, nous, vois-tu, nous on marche et nous on tue, nous on crève.


私たちよ 兄弟たちのため、監獄の鉄格子を破るのは
私たちにつきまとう憎しみ、飢え、貧困
寝床で夢を見ていられる国だってあるのに
ここでは踏みつけられ、殺されかねないわ

Ici chacun sait ce qu’il veut, ce qui’il fait quand il passe.
Ami, si tu tombes un ami sort de l’ombre a ta place.
Demain du sang noir séchera au grand soleil sur les routes.
Sifflez, compagnons, dans la nuit la Liberté nous écoute.


ここでは誰もがわかっているわ やるべきことを
友よ、あんたが倒れても 誰かが引き継ぐわ
路上の血だまりも 明日の太陽が乾かすのよ
口笛を吹きなさい 今宵、自由は私たちの声を聞くはずよ

Ami, entends-tu le vol noir des corbeaux sur nos plaines?
Ami, entends-tu les cris sourds du pays qu’on enchaîne?
Oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh…


友よ、見える? 飛び交うカラスの黒々した群が
友よ、聞こえる? 国民(くにたみ)の声なき叫びが
オーオーオー…


(しみずたけと) 2020.5.31

沼地の兵士の歌

前に L’hymne des femmes という歌を紹介しました。日本では歌われないのか、邦題が見つかりません。直訳すると「女性の賛歌」となりますが、ぜんぜん詩的な響きがしないので、誰か素敵なタイトルを考えてくれませんかね。

1971年3月、女性解放運動(MLF)の中で作られた歌であることは、既に記したとおりです。パリの Les Petites Marguerites ―小さなヒナギク―という活動グループのメンバーたちによる作詞ですが、実はこの歌には元歌があって、そちらの方はより深刻で暗い内容でした。ナチスの労働キャンプで生まれた Die Moorsoldaten ―「ムーア兵の歌」というドイツ語の歌です。

ジョリー・モーム L’hymne des femmes 「女たちよ、たちあがれ。鎖を解き放て」

ユダヤ人絶滅を目的とした、アウシュヴィッツに代表される絶滅収容所とは別に、社会主義者や共産主義者、労働組合員、ジャーナリスト、教師、芸術家など、ナチスの思想や政策に反対する人たちもまた、強制労働キャンプに送られました。この歌は、そのひとつである、オランダとの国境にほど近いエムズ川の流域、ニーダーザクセン州エムズラントのボーガームーア収容所の囚人によって作られたのです。

ムーア(ドイツ語での発音はモーアに近い)は湿地や沼を指す言葉ですが、パペンブルクの町の中心から南東へ10km足らず、地図を見ると収容所のあったあたりには沼や湿地が多いことがわかります。そうした場所での労働を目的とした収容所でした。私たちには「ムーア兵の歌」よりも「沼地の兵士の歌」の方が理解しやすいかもしれません。現在、ここは自動車のテストコースになっています。ちなみに、エムズ川を下っていくと、そこはエムデン。昔は造船の町として栄えましたが、今は大きなコンテナターミナルを有する貿易港と風力発電機の製造に産業をシフトしています。

収容所では、既存の政治的な歌は禁止されていたので、囚人らは自分たちで歌を作っていました。この歌は、ルールの鉱山労働者でプロレタリア詩人だったヨハン・エッサー(1896-1971)の詩に、ルドルフ・ゴゲル(1908-76)が曲をつけたもの。1933年8月27日、元ゾーリンゲン労働者合唱協会のメンバーを中心にした16人により、収容所内で初演されました。後に俳優で監督のヴォルフガンク・ランホフ(1901-66)が劇的な効果をねらって、いくつかの節を書き直しています。


「沼地の兵士の歌」 
Die Moorsoldaten

ハーネス・ヴァーダー Hannes Wader が歌う。

「沼地の兵士の歌」 ドイツ語版 Die Moorsoldaten ドイツのプロテスト・シンガーのハーネス・ヴァ―ダーが歌う。
ここには絶滅収容所の写真が多く示されています。

ドイツ語歌詞と和訳へはここから跳べます。


スペイン内戦では、反ファシズムの歌として、人民戦線の賛歌になりました。ファシズムに反対する人たちが世界中から集まって組織した国際旅団があったことから、この歌は各国の言葉になって広がっていきます。フランス語の Le Chant des marais ―「沼地の歌」は、第二次大戦ではフランス軍の歌となり、英語の Peat Bog Soldiers ―直訳すると「泥炭湿原の兵士」なども作られました。

「沼地の兵士の歌」
Die Moorsoldaten

 ピート・シーガーが歌う(ライブ演奏)。英語歌詞も。

なつかしいピート・シーガーの歌声です。ドイツ語で歌い始め、「2週間前、2万人集まったマジソンスクウェア・ガーデンで、多くの人がドイツ語で一緒に歌うのを聞いて驚きました。でも、英語の歌詞もありますよ。」と言って、英語の歌詞をはさみます。この動画では当時のエムスラントの収容所の空撮と所在がわかる地図を見ることができます。この地図はこのページのもう少し下の方にも同じものを掲載しています。 (サイト編集者)

エムスラントの地図へ跳びます。


「沼地の兵士の歌」
The Peat Bog Soldiers

ポール・ロブスン Paul Robeson が歌う。

「沼地の兵士の歌」 英語版  Peat Bog Soldiers
アメリカ人で、バスバリトンのオペラ歌手、作家、公民権活動家のポール・ロブスンが歌う。

英語の歌詞へはここから跳べます。


「沼地の歌」
Le Chant des Marais

フランス軍パラシュート部隊の合唱

「沼地の歌」 Le Chant des Marais ,  フランス軍パラシュート部隊の合唱

フランス語の歌詞へはここから跳べます。


追放者たちの歌

20世紀を代表する作曲家、オリヴィエ・メシアン(1908-1992)が1945年、管弦楽と合唱による Chant des déportés, pour chœur mixte et grand orchestre ―「追放者たちの歌」を作曲。長らく失われたものと思われていましたが、1991年になって楽譜が発見され、再び演奏されるようになっています。

「追放者たちの歌」 Chant des déportés, pour chœur mixte et grand orchestre
オリヴィエ・メシアン作曲

エムスラント郡にあった収容所のマップ

ドイツ、エムスラント地方

ドイツ、エムス川の下流域に位置する、Börgermoor ベルガ―モーアはナチスの強制収容所のひとつでした。この地図の左側の赤みがかった太い線はオランダとドイツの国境で、この図の地域はエムスラント郡と呼ばれます。縦に貫く紫色の曲がりくねった線はエムス川です。

図の最上部真ん中に、クリーム色の下地に黒い文字で Papenburg パーペンブルクという町の名が見られます。その幾らか下に 黒地に黄色の文字で Börgermoor (I) と書かれた場所があります。

黒の下地に黄色の文字が書かれている場所にはすべてナチスの収容所がありました。この図では見えにくいのですが、(XV)が最高位の数字のようです。つまり、エムスラントには 15カ所の収容所+司令部があったということでしょう。

これら強制収容所ではスポーツ選手、画家、音楽家、教師、店員、鉄道員など、ナチスに従わなかった人たちが囚人として過酷な労働に従事させられました。

(図の説明はサイト編集者)

ピート・シーガーの動画へ戻ります。


沼地で強制労働に従事させられた収容者たちが禁じられながらも、ひそかに歌った歌です。

沼地の兵士の歌:ドイツ語

Die Moorsoldaten
沼地の兵士の歌

1.
Wohin auch das Auge blicket
Moor und Heide nur ringsum
Vogelsang uns nicht erquickelt
Eichen stehen kahl und krumm
                  
Rerain: (x2)
Wir sind die Moorsoldaten
und ziehen mit dem Spaten
ins Moor

1.
どこを見やろうと
沼地とヒースの野があるばかり
鳥のさえずりを聞いてさえ心は暗く
樫の木々も侘しく立つばかり

(繰り返しフレーズ)
我らは沼の兵士
シャベルを手に進む
沼地へと

2.
Hier in dieser öden Heide
ist das Lager aufgebaut
Wo wir fern von jeder Freude
hinter Stacheldraht verstaut

Rerain: (x2)

2.
この侘しいヒースの野に
収容所はあり
わずかな喜びもなく
有刺鉄線の中に閉じ込められ

(二度繰り返し)

3.
Morgens ziehen die Kolonnen
durch das Moor zur Arbeit hin
Graben bei dem Brand der Sonne
doch zur Heimat steht der Sinn

Rerain: (x2)

3.
朝になれば、我ら、隊列を組んで進む
沼地の労働に
陽が照りつけようとも、ひたすら掘り起こす
ただ、ただ、心はふるさとへ

(二度繰り返し)

4.
Heimwärts, heimwärts jeder sehnet
zu den Eltern, Weib und Kind
Manche Brust ein Seufzer dehnet
weil wir hier gefangen sind 

Rerain:

4.
ふるさとへ、ふるさとへ、誰しも想う
父母の元へ、妻の元へ、子の元へ
ただ、ため息のみ
我ら、囚われの身

(繰り返し)

5.
Auf und nieder geh’n die Posten
keiner, keiner kann hindurch
Flucht wird nur das Leben kosten
Vierfach ist umzäunt die Burg

Rerain: (x2)

5.
監視兵は行きつ戻りつ
かい潜れはしない
逃げれば殺され
幾重にも柵で囲われるこの要塞

(二度繰り返し)

6.
Doch für uns gibt es kein Klagen
ewig kann nicht Winter sein
Einmal werden froh wir sagen
Heimat du bist wieder mein

Rerain II:
Dann ziehn die Moorsoldaten
nicht mehr mit dem Spaten
ins Moor


Rerain II:

6.
嘆きはしない
永遠に冬であるわけはない
喜びの日はきっと来る
ふるさと、今再び

(繰り返しフレーズ II)
その時が来れば、我ら沼地の兵士は
もはや、シャベルを手にはしない
沼地へと

(繰り返し II)

ハーネス・ヴァーダーの動画へ戻る


沼地の兵士の歌 : 英語

沼地の歌:フランス語

Peat Bog Soldiers
Le Chant des Marais

1.
Far and wide as the eye can wander
Heath and bog are everywhere
Not a bird sings out to cheer us
Oaks are standing, gaunt and bare

Refrain (x2):
We are the peat bog soldiers
We are marching with our spades to the bog

1.
Loin vers l’infini s’étendent
De grands prés marécageux
Et là-bas nul oiseau ne chante
Sur les arbres secs et creux

Refrain (x2):
Oh! terre de détresse
Où nous devons sans cesse
Piocher

2.
Up and down the guards are pacing
No one, no one can go through
Flight would mean a sure death facing
Guns and barbed wire block our view

Refrain:

2.
Dans ce camp morne et sauvage
Entouré de murs de fer
Il nous semble vivre en cage
Au milieu d’un grand désert

Refrain:

3.
But for us there is no complaining
Winter will in time be past
One day we shall cry rejoicing
Homeland, dear, you’re mine at last

3.
Bruit des pas et bruit des armes
Sentinelles jour et nuit
Et du sang, des cris, des larmes
La mort pour celui qui fuit

Refrain:

4.
No more the peat bog soldiers
Will march with our spades to the bog
No more the peat bog soldiers
will march with our spades to the bog
//
Then will the peat bog soldiers
march no more with spades to the bog

4.
Mais un jour dans notre vie
Le printemps refleurira
Liberté, liberté chérie
Je dirai tu es à moi
Oh! terre d’allégresse
Où nous pourrons sans cesse aimer

ポール・ロブスンの動画へ戻る


ここで紹介したドイツ語、フランス語、英語の各国語で歌われる「沼地の兵士の歌」が収録されているCDを紹介しておこう。

「沼地の兵士の歌」のCD紹介へ跳ぶ


(しみずたけと)  2020.5.18

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リンク先は別所憲法9条の会ホームページ

名もなきひとりひとり 

コンパニエ ジョリ・モーム Compagnie Jolie Mome、パリで活動するミュージカル・グループです。すてきな人たちです。すてきなパフォーマンスを披露しています。例えば、パリのカルチェ・ラタンのムフタール通りの街角で。

下のビデオは ベル・ルージュ フェスティバル 2018 でのパフォーマンス。仮設劇場です。演奏曲目はSans La Nommer「名もなきひとりひとり」(題名は私訳)。下に掲げた歌詞の後半、太字にした部分は演者がこれらすべての権力に抗った人々を讃えて一気に口上を述べるところです。圧倒されます! ぜひ聴いてみてください!

Sans La Nommerはジョルジュ・ムスタキが作曲し歌ったものです。ムスタキは昔、日本でもたいそう人気があり、来日していたのを覚えています。この曲も歌っていたのでしょうか。ジョリ・モームの歌のレパートリーはこれまで広く歌われてきたものと、彼らのオリジナル曲の両方です。

ベル・ルージュ フェスティバル 2018 より ”Sans la nommer” 約7分

名もなきひとりひとり
Sans La Nommer

名前を明かさず、あの娘について話そう
片思いの恋人を語るように
目覚めようとする、生き生きとした娘
太陽の下、輝く未来に

打ちのめされ、 追跡され、追い詰められ
そして彼女は立ち上がり
苦しみ、ストを決行
鎖につながれ し
裏切られ、見捨てられ
それでも生きる勇気を授けてくれる
彼女にならついて行きたい
どこまでも

名前は明かさずに、彼女にオマージュを捧げよう
五月の美しい花、野生の果実
両足でしっかりと大地にたつ娘
そして気の赴くままに生きる娘

名前は明かさず、彼女について話そう
愛され、憎まれ、でも忠実な彼女
あなたにも紹介したい
人は彼女を永久革命と呼ぶ

【 敬意を表し、以下を連呼します。】

戦艦ポチョムキンの水平たちのために
弾圧された評議会の平和主義者

クラオン(塹壕戦の)謀反兵
サッコとバンゼッティ
ローザ・ルクセンブルグとK.リープクネヒト
1936年のスト参加者
オビエドの炭鉱扶
スペイン内戦の義勇兵
アナーキストの兄弟たちの勇気を讃えて
レジスタンスの兵士
マヌシアンとその二十二人の仲間たち
レジスタンスの外国人たち闘士たち
シャロンヌ駅で踏み倒されたデモ参加者
1961年10月17日、セーヌに投げ込まれたアルジェリア人
ビクトル・ハラ
1968年の900万人のスト参加者
チェ・ゲバラとそのゲリラ仲間
リバプールの港湾労働者
ソウルの労働者
アメリカの経済政策に苦しむキューバ人民のために
チュニジア人民

モロッコ人民
クルド人
トルコの囚人
アルジェリア人民とカビールの仲間たちのために

アルゼンチン人民
旧ユーゴ人民
チェチェン人民
南北のコリア人民
ルワンダとスーダンの人民
シエラ・レオネ人民

サラウィの民
ブラジルの土地なし農民
ジンバブエの農民
チアパスのインディオ
ムミア・アブ・ジャマル
レオナール・ペルチエ
合衆国の牢獄で処刑されたすべての無実の囚人のために
ナタリー・メニゴとその仲間の政治犯
「オーバーステイ」の人たち
路上生活者、失業者の闘いのために
ロム
セザレ・バッティスティ
コート・ジボワールの人民のために
コンゴ、そしてハイチの人民
イラク人民
パレスチナ人民
そしてイスラエルの平和主義者
その数はまだあまりにも足りないけれども

ジョリモームのホームページ https://cie-joliemome.org/

   

< DVD >

2004年にビデオプレスから発売された20分のDVDがあります。
タイトル「歌は何のために

DVDでは歌に日本語の歌詞が付けられています。全8曲の歌詞はこちら歌は何のために」でごらんいただけます。

日本語歌詞は http://vpress.la.coocan.jp/jorikasi.html より引用しました。


(Ak.)  2020.5.16