古(いにしえ)のクリスマス

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 世俗的な祝い歌の中から、クリスマスの時期に歌われるものがクリスマス・キャロルとなり、やがて讃美歌や聖歌へと取り込まれていったこと、西洋音楽が教会に根ざしていること、そこから壮大なオラトリオやカンタータ、レクイエムが生まれたことについては、前に記したとおりである。

 ヘンデルの「メサイア」、バッハの「マタイ受難曲」、モーツァルトやベルリオーズ、ヴェルディ、ドヴォルザーク、フォーレらの「レクイエム」、ベートーヴェンの「荘厳ミサ曲」、ロッシーニやドヴォルザークの「スターバト・マーテル」、ブルックナーの「テ・デウム」、ブラームスの「ドイツ・レクイエム」などが有名だが、ブリテンの「戦争レクイエム」やペンデレツキの一連の作品などもその流れで生まれた曲だといえよう。

 教会音楽は、神に捧げる祈りであるから、大切なのは言葉である。それゆえ、あくまでも中心は声楽であり、オルガンやオーケストラなどの器楽は歌の伴奏でしかなかった。時代は下って、楽器とその演奏技術の進化、作曲技法の発達により、器楽が伴奏の範疇を超え、声楽と対等に、いや、声楽に取って代わり、西洋クラシックの主流たる地位を得るようになっていったのである。上にあげた一連の曲が、いずれも独唱や合唱を含むのも、そうした理由による。

 今日のクリスマスは、そうした文化爛熟の中にあるが、それ以前、人々のまわりにあった音楽はいかなるものだったのだろうか。キリスト教が浸透しはじめたケルト、アングロサクソンの時代、中世へと辿ることで、西洋クラシックの流れが見えてくるに違いない。と同時に、素朴なクリスマスの音色を味わってみてほしい。


A Celtic Christmas

Winter Ritual Song And Traditions

  1. Calenning – Wales
  2. Taladh Chriosda (Christ Child’s Lullaby) – Scotland (Isle of Barra)
  3. The Wren Hornpipe/The Christmas Eve/Winter Apples – Ireland
  4. Oika Ayns Bethlehem (Baby In Bethlehem) – Isle of Man
  5. Hunting The Wren
        a) The King – Wales
        b) Can Hera’r Dryw – Wales
       c) Sheig Y Dream – Isle of Man
       d) Wren-Boys of Dun/Wren Boys’ Song – Ireland
  6. Kanomp Nouel (Sing, Nowell) – Brittany
  7. Dublin Tune – Ireland
  8. Mari Lwyd: Can y Fair Lwyd/Cariad Cywir – Wales
  9. Da Day Dawns/Chistmas Day I da Moarnin/The Papa Stour Sword Dance – Scotland (Shetland)
  10. The Tree Of Life – Cornwall
  11. Carval ny drogh vraane (Carvale On Base Women) – Isle of Man
  12. The Gower Wassail – Wales
  13. Plygain: Wel dyma’r borau gorau I gyd – Wales
  14. Arise And Hail The Glorious Star – Cornwall
  15. The Seven Rejoices Of Mary – Ireland
  16. Ffarwel Gwyr Aberffraw (Farewell The Men Of Aberffaw) – Wales
  17. Leanabh an àigh (Blessed Child) – Scotland (Isle of Mull)
  18. Highland Pipe Medley – Scotland

Singers:
Emma Christian, Arthur Cormack, Colin McAlliter, Julie Murphy, Dave Townsend
Robin Huw Bowen (Welsh Triple Harp)
Pete Cooper (Fiddle, Viola)
Steáfán Hannigan (Irish Pipes, Bodhran, Flute)
Ceri Rhys Matthews (Welish and Breton Bagpipes, Citern, Chanter)
Dougie Pincock (Scottish Highland Pipes, Scottish Small Pipes, Bodhran)
Dave Townsend (Concertina, Accordion)


ANGLO-SAXON CHRISTMAS

10th-century Chant from the Winchester Troper
Schola Gregoriana of Canbridge
Directed by Mary Berr
y

  1. VERSUS ANTE OFFICIUM
  2. INTROIT
  3. KYRIE
  4. GLORIA
  5. GRADUAL
  6. ALLELUIA
  7. SEQUENCE
  8. OFFERTORY
  9. SANCTUS
  10. AGNUS DEI
  11. COMMUNION
  12. INVITATORY

Thys Yool – A Medieval Christmas

  1. Personent Hodie
  2. Judas & Wenceslas
  3. Hyer Matin
  4. Miri It Is
  5. Man Mei Longe
  6. Thys Yool
  7. Tapster, Drynker
  8. Ja Pour Hyver
  9. Gabriel From Heven-King
  10. Chester Nun’s Song
  11. Hail Mary Full Of Grace
  12. As I Lay On Yoolis Night
  13. Edi Be Thu
  14. Perperit Virgo
  15. O Virgo Splendens
  16. Loor De Santa Maria
  17. Polorum Regina
  18. Mariam Matrem
  19. I Pray You All
  20. Ther Is No Rose
  21. Caligo Terrae Scinditur
  22. Princeps Pacis
  23. Mors Vitae

★ Martin Best Ensemble


Christmas Chant
Traditional Latin Plainsong

  1. Sequence
  2. Invitatory
  3. Hymn
  4. Antiphon
  5. Lesson
  6. Responsory
  7. Marian Anthem
  8. Midnight Mas: Introit
  9. Kyrie
  10. Gloria
  11. Epiphany: Gradual
  12. Alleluia
  13. Midnight Mass: Offertory
  14. Sanctus
  15. Agnus Dei
  16. Midnight Mass: Communion
  17. Angelus Ad Virginem
  18. Ecce Nomen
  19. Quem Vidistis
  20. Angelus Ad Pastores
  21. Hodie
  22. Puer Natus

★ The monks of Prinknash & the nuns of Stanbrook Abbeys

Prinknash Abbey, now located in St Peters Grange, a 15th century building on the Cotswolds near Upton St Leonards, Gloucestershire UK

(しみずたけと) 2021.12.23

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くるみ割り人形

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 クリスマスの季節のクラシック音楽と言えば、おそらく『くるみ割り人形』が一番人気だろう。ドイツのエルンスト・ホフマン(1776~1822年)によるメルヘン『くるみ割り人形とねずみの王様』をもとに、ピョートル・チャイコフスキー(1840~93年)が死の前年に完成させたバレエ音楽だ。『白鳥の湖』『眠れる森の美女』とあわせ、チャイコフスキーの三大バレエと呼ばれている。

 この作品は、全2幕3場のバレエ音楽として、1891年から92年にかけて作曲された。クリスマス・イヴに、くるみ割り人形をプレゼントされた少女クララ(原作ではマリーとなっている)が、人形と夢の世界を旅するストーリーである。舞台は、まさにクリスマスの晩。この季節の人気演目なのも当然だろう。だいたいのストーリーがわかるよう、作品を構成する15曲の題を記しておく。

小序曲

第1幕/第1場
 1. 情景 クリスマスツリー
 2. 行進曲

 3. 子どたちのギャロップと両親の登場
 4. 踊りの情景、祖父の登場と贈り物
 5. 情景 祖父の踊り
 6. 情景 クララとくるみ割り人形
 7. 情景 くるみ割り人形とねずみの王様の戦い、くるみ割り人形の勝利、そして、人形は王子に変わる

第1幕/第2場
 8. 情景 冬の松林
 9. 雪片のワルツ

第2幕/第1場
 10. 情景 お菓子の国の魔法の城
 11. 情景 クララとくるみ割り人形王子

 12. 嬉遊曲
  チョコレート(スペインの踊り)
  コーヒー (アラビアの踊り)
  お茶(中国の踊り)
  トレパック(ロシアの踊り)
  葦笛の踊り
  生姜と道化たちの踊り
 13. 花のワルツ
 14. パ・ド・ドゥ
  導入(金平糖の精とアーモンド王子)
  変奏Ⅰ(タランテラ)
  変奏Ⅱ(金平糖の精の踊り)
  終結
 15. 終幕のワルツと大団円

 92年3月、チャイコフスキーは演奏会用の新曲を依頼されるのだが、新たに構想するだけの時間がなく、つくりかけの『くるみ割り人形』から自身で八曲を抜き出し、演奏会用の組曲とした。全曲版と組曲版の作曲時期がほとんど同じなのは、そのためである。演奏効果を考慮して、全曲版とは曲順を変えているが、有名な曲のほとんどが含まれていることもあり、クリスマスの季節以外にもしばしば演奏される。多くの人が知っているのは、おそらくこちらの方だろう。

第1曲 小序曲
第2曲 行進曲
第3曲 金平糖の精の踊り
第4曲 ロシアの踊り(トレパック)
第5曲 アラビアの踊り
第6曲 中国の踊り
第7曲 葦笛の踊り
第8曲 花のワルツ


::: CD :::

バレエ『くるみ割り人形』全曲 作品71

 アンタル・ドラティ(1906~88年)というハンガリー出身の指揮者は、日本では過小評価されていないだろうか。カラヤンとかバーンスタインのようなスター指揮者ではなく、特定の作曲家だけに秀でたスペシャリストでもない。しかし、レパートリーは広く、彼はどんな曲でもこなした。だからといって器用貧乏というのとも少し違う。大物指揮者に隠れた、いなくなって気づかされた別のタイプの大物指揮者とでも言えば良いだろうか。

 しばしば“オーケストラ・ビルダー”と呼ばれるドラティ。ダラス交響楽団を築き上げ、財政破綻や労働争議で崩壊しかけたワシントン・ナショナル交響楽団を危機から救い上げ、凋落したデトロイト交響楽団に世界水準の名声を取り戻させるなど、彼の奮闘でよみがえったオーケストラはいくつもある。いわば、オーケストラ建設と再生のプロだ。それが独裁者の強権的な手法でなく、人望と信頼にもとづくものであったところは、まさにドラティの人間性によるところが大きいのだろう。

 ドラティは、決してオーケストラの建て直しばかりやっていたのではない。残された録音を聴くと、どれも水準が高く、この『くるみ割り人形』全曲などは、全曲録音の中でも最高の部類に入るものである。名門コンセルトヘボウを指揮し、夾雑物のない弦セクション、いぶし銀のような金管楽器群を軸に、重厚で安定感のあるハーモニーを見事に引き出している。

指揮:アンタル・ドラティ
演奏:アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
合唱:ハールレム聖バーフ大聖堂少年合唱団
録音:1975年



『くるみ割り人形』組曲 作品71a

 全曲を聴いてこそ…。その通りではあるが、バレエ鑑賞ではなく、管弦楽作品としての『くるみ割り人形』を楽しみたい、有名なメロディを聴きたいと言うことであれば、組曲版を選ぶのも間違いではなかろう。なにしろ、チャイコフスキー自らが編んだものだ。否定する理由などない。

 ネヴィル・マリナー(1924~2016年)は、あくまでも管弦楽作品としてのテンポを設定している。バレエ劇の伴奏なら、もう少しテンポを落とすところだろうが、このきびきび感、軽やかさ、小気味よさが聴いていて気持ちよい。小澤征爾と水戸室内管弦楽団によるベートーヴェンの『第九』のところでも書いたのだが、アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズという比較的小編成な楽団ゆえのクリアな音色が、この曲に実にマッチしている。録音も優秀だ。

 カップリングされている『弦楽セレナード』の方は、その重厚かつ壮麗な響きに驚かされる。同じオーケストラを、このように使い分け、まるで違う響きを引き出すとは、マリナーの手腕に脱帽。《クリスマスのうた》で、このコンビによるクリスマス曲集を紹介しているので、そちらもどうぞ。

指揮:ネヴィル・マリナー
演奏:アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
録音:1982年

上の動画では8曲(小序曲、行進曲、金平糖の精の踊り、ロシアの踊り(トレパック)、アラビアの踊り、中国の踊り、葦笛の踊り、花のワルツ)が連続再生されます。


(しみずたけと) 2022.12.15

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讃美歌/聖歌を探す

 クリスマスの歌は讃美歌や聖歌になっているものが多くあります。讃美歌集や聖歌集をお持ちであれば、ぜひ探してみてください。ちょっと面倒なのは、教団や教派によって、独自の讃美歌・聖歌集を使っているため、番号が統一されておらず、歌詞が異なっていることも、ままあります。ここでは《カラヤン/アヴェ・マリア》にある曲を、わかる範囲で記しておきます。(略号の説明は末尾)

●きよしこの夜

讃美・109番「きよしこのよる」
讃二・244番「きよしこのよる」
讃21・264番「きよしこの夜」
聖歌・148番「きよしこのよる」
聖総・96番「きよしこのよる」
新聖・77番「きよしこの夜」
福音・93番「きよしこのよる」
新生・163番「きよしこの夜」
教会・37番「きよしこのよる」
希望・51番「きよしこの夜」
イ合・173番「きよしこのよる」
イ改・413番「きよしこのよる」
聖公・74番「きよしこの夜」
古今・27番「きよしこのよる」
カト・111番「静けき真夜中」

●天には栄え

讃美・98番「あめにはさかえ」
讃21・262番「聞け、天使の歌」
聖歌・123番「きけやうたごえ」
聖総・71番「きけやうたごえ」
新聖・79番「天には栄え」
福音・89番「栄光とわに 王なる御子に」
新生・167番「天にはさかえ」
教会・30番「平和のきみに」
希望・39番「あめには栄え」
イ合・163番「神にはさかえ」
イ改・401番「神にはさかえ」
聖公・81番「神には栄え」
古今・18番「かみにはさかえ」
カト・652番「あめにはさかえ」

●われらは3人の王

讃二・52番「われらはきたりぬ」
聖歌・135番「われらはきたりぬ」
聖総・83番「われらはきたりぬ」
新聖・96番「われらは来りぬ」
福音・95番「彼方の国から」
新生・192番「みたりの博士は」
希望・62番「われらは来たりぬ」
聖公・110番「われらは東の」
古今・36番「われらはひがしの」

●あら野の果てに

讃美・106番「あら野のはてに」
讃二・243番「あら野のはてに」
讃21・263番「あら野のはてに」
聖歌・138番「「君なるイェスは今あれましぬ」
聖総・86番「君なるイェスは今あれましぬ」
新聖・78番「荒野の果てに」
福音・87番「あら野のはてに」
新生・165番「荒野のはてに」
教会・33番「あら野のはてに」
希望・46番「あら野のはてに」
イ合・172番「あら野のはてに」
イ改・412番「あら野のはてに」
聖公・91番「荒野の果てに」
古今・35番「あらののはてに」
カト・121番「天のみつかいの」

●ともに喜びすごせ

讃二・128番「世の人忘るな」
聖歌・128番「たがいによろこび」
聖総・76番「たがいによろこび」
新聖・74番「世の人忘るな」
福音・92番「人みな喜び歌い祝え」
新生・193番「人みな喜び歌い祝え」
希望・55番「人みなよろこび」
聖公・89番「星影さやけき」
古今・30番「ほしかげさやけき」

●あめなる神には

讃美・114番「天なる神には」
讃21・265番「天なる神には」
聖歌・125番「ふけゆくのはらの」
聖総・73番「ふけゆくのはらの」
新聖・80番「天なる神には」
福音・90番「天なる神には」
新生・160番「天なる神には」
教会・27番「天なる神には」
希望・44番「天なる神には」
イ合・165番「天なる神には」
イ改・403番「天なる神には」
聖公・83番「人にはみ恵み」
古今・21番「ひとにはみめぐみ」

●高き天より

讃21・246番「天のかなたから」
福音・88番「高き御空から私は来ました」
新生・182番「天より降りて」
教会・23番「天よりくだりて」

●オー・ホーリー・ナイト

讃二・219番「さやかに星はきらめき」
聖総・817番「きよらに星すむこよい」
イ改・420番「聖なる夜星はきらめく」

<略号>

讃美=日本基督教団、『讃美歌』
讃二=日本基督教団、『讃美歌第二編』
讃21=日本基督教団、『讃美歌21』
聖歌=日本福音連盟、『聖歌』、いのちのことば社
聖総=日本教会音楽研究会、『聖歌(総合版)』、聖歌の友社
新聖=日本福音連盟、『新聖歌』、教文館
福音=福音讃美歌協会、『教会福音讃美歌』、いのちのことば社
新生=日本バプテスト連盟、『新生讃美歌』
教会=日本福音ルーテル教会、『教会讃美歌』
希望=セブンスデー・アドベンチスト教団、『希望の讃美歌』
イ合=インマヌエル讃美歌委員会 、『インマヌエル讃美歌 リバイバル聖歌 合編』
イ改=インマヌエル讃美歌委員会 、『インマヌエル讃美歌 改訂版』
聖公=日本聖公会、『聖歌集』
古今=日本聖公会、『古今聖歌集』
カト=聖歌集改訂委員会、『カトリック聖歌集』、光明社


(しみずたけと) 2021.12.17

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キャロル・オブ・ザ・ベルズ


Carol of the Bells
鐘のキャロル

12月も半ばとなり、クリスマスの音楽を聴くのが楽しい。

音楽用語にオスティナート(伊:ostinato)というのがあると知った。あるリズム、メロディ、または和音が何度も反復されることを指す。ことばの意味は「執拗な」とのこと。


「執拗な」というだけあって、オスティナートは強く印象に残る。「キャロル・オブ・ザ・ベルズ」というクリスマス・ソングを初めて聴いた時にもそうだった。下の譜面からわかるように、こんなふうに反復されている。

4分音符を基調とするオスティナートの譜面(Wikipediaより拝借)

Wikipediaをのぞいてみた。「キャロル・オブ・ザ・ベルズ」はウクライナ人のマイコラ・レオントーヴィッチュ(Mykola Leontovych 1877-1921)が「シュチェドルィック」Shchedryk というウクライナの民謡をベースに1916年に編曲して作り上げたものである。「シュチェドルィック」はウクライナのことばで「豊富な、潤沢な」という意味、キリスト教以前の時代には春を祝う4月の歌だった。今年の豊作と家族の幸せを願った歌だ。キリスト教がもたらされ、ユリウス暦が採用されたことによって、暦が移動し、1月に新年を祝う歌になったのだとか。

では、なぜ新年を祝う歌がクリスマス・ソングになったのだろうか。アメリカ人作曲家のピーター・J・ウィルウフスキー (Peter J. Wilhousky 1902-1978)が1936年に、民謡で歌われる意味とは異なった英語の歌詞を付けてクリスマスの音楽とし、アメリカやカナダで特に好まれて歌われたよし。

オスティナートがゆえに人々の印象に残るのか、あらゆるジャンルの音楽で、世界中の多くの歌い手や演奏者が「キャロル・オブ・ザ・ベルズ」を演奏している。それぞれたいそう異なっていて、これが良いよー!とは言えないのがつらいけれど、三つほど紹介したい。(わたしがたまたま耳にした曲というに過ぎないけれど。)

まず初めに紹介するのは「キトカ」 KITKAという、アメリカ、オークランドの女声合唱グループが歌うキャロル・オブ・ザ・ベルズ。キトカは東ヨーロッパの民謡を歌うグループとのこと。東ヨーロッパではしばしば正調で歌われる合唱を耳にする。とは言っても、「正調」ということばの意味は今ひとつわからない。辞書には民謡などで伝統的な歌い方をする場合に用いられるとあるが、わたしは昔からこのことばを発声方法にあてはめて自己流に使ってきた。日本の民謡でも「正調そーらん節」といった使われ方をするようだけれど、その意味もよくわからない。他の音楽ジャンルによるアレンジなしの演奏ということだろうか。英語では、Traditional tune などという。キトカも正調で歌うグループではあるけれど、このシュチェドルィックではそれは顕著ではない。

正調で歌う合唱は一般にブルガリアン・ヴォイスといわれるのだろうか。Cosmic Voices from Bulgaria だとか、Bulgarian Voices というブルガリアの合唱グループが音楽検索で浮かび上がってくる。東欧には数えきれないほどの民謡の合唱グループがあることだろう。ダンスも豊富で魅力的な地域だ。

Cosmic Voices from Bulgaria

次に挙げるのはこの曲を世界に広めた元祖、スウィングル・シンガーズ Swingle Singersかなと思ったけれど、クリスマスの歌といえば、リベラの歌が思い浮かぶ。わたしが子どもの頃はウィーン少年合唱団だったけれど。リベラの合唱は他とは少々異なったアレンジが美しい。


次はジャズ・バージョン。デイヴィッド・ベノワのピアノ・ソロ。わたしの、なかなかのお気に入りである。彼のトリオ・バンド版もあるけれど、ソロはとても良い。このアルバムは2020年にリリースされた。『ピーナッツ』の絵が使われているのは、1989年に『ピーナッツ』の生誕40周年に寄せたコンピレーション・アルバムに参加して以来の縁らしい。


ケルン大聖堂の鐘たち

さてさて、話はガラッと変わり、正真正銘の『キャロル・オブ・ザ・ベルズ』のこと、ケルン大聖堂の鐘たちである。まずは、その鐘の音を下の動画で数分間だけでも聴いてほしい(動画は30分間)。2012.12.7の撮影とある。クリスマス・バージョンの鐘の音かもしれない。

最初の10分間は一番大きいベルが鳴るのみなので、ここでは13分31秒、隣りのより高音のベルが振れ始める直前から聴けるようにした。初めの10分間は大きいベルの独演というわけだ。撮影カメラの位置が変わるため、確実には数えることができないものの、5つほどの大小のベルが同時に振れるのを見ることができる。低音から高音までの複数のベルが鳴り、クライマックスが過ぎ、やがて高音のベルから徐々に止まっていく。動画の28分頃には一番大きいベルのみの音となり、それも1分間ほどで静止する。

ベルに雪が積もっていたために、振れるたびに雪が落ちている。


ケルン大聖堂の塔はツインになっていて、南塔に備わっている大小8つのベルがメインとなって市中に鐘を鳴り響かせている。真ん中の一番大きいベルは「太っちょペーターさん」との愛称があり、重量は24トン、直径は3.22メートル、1923年に鋳造された。先代のベルは1875年に設置されたばかりだったが、1908年に鐘舌が落ちてしまい、第一次世界大戦に用いるために1918年、溶融された。1924年からは現在の「太っちょペーターさん」が鳴っている。8つのベルの中で一番若い。今年98歳ではあるけれど。

ペーターの次に大きなベルは1448年設置のPretiosaと1449年設置のSpeciosa、直径がそれぞれ2.4メートル、2.03メートル。中世後期から鳴り響いているということか。気が遠くなる。


(Ak.) 2022.12.13

関連記事へ跳ぶ : Church Bells of England

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