ビッグ・ファイブ

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 1949年から62年にわたってボストン交響楽団を率いたのが、ドイツ帝国領アルザスに生まれ、後にフランスに帰化したシャルル・ミュンシュ(1891~1968年)だ。アルザスは、普仏戦争でドイツ領になり、第一次大戦後はフランスになるなど、国家間の戦争に翻弄された土地である。彼はドイツ生まれのフランス人か、それともフランスで活躍したドイツ人なのか。○○人という呼称に何の意味があるのか、今いちど問い直してみるのが良さそうだ。その彼が米国のオーケストラにフランス的な香りと情熱を持ち込んだ。ミュンシュが退任した後を引き継ぎ、1969年まで音楽監督を務めたのがエーリヒ・ラインスドルフ(1912~93年)である。

 ウィーンのユダヤ人家庭に生まれたラインスドルフは、ザルツブルク音楽祭でブルーノ・ワルター(1876~1962年)とアルトゥーロ・トスカニーニ(1867~1957年)のアシスタントを務めるなど、着々とキャリアを積み上げた。1937年11月にメトロポリタン歌劇場のアシスタント指揮者に就任するために渡米。その四ヶ月後、オーストリアはナチス・ドイツに占領された。ユダヤ系の彼は帰る場所を失う。42年、後に大統領となる下院議員リンドン・ジョンソンの支援によって、彼は米国の市民権を取得した。

 オペラ指揮者としても、ヴェルディの『アイーダ』、プッチーニの『蝶々夫人』、リヒャルト・シュトラウスの『サロメ』、そしてワーグナーの『ローエングリン』や『ワルキューレ』などの全曲盤は高い評価を得ている。1962年に音楽監督に就任したボストン響はコンサート・オーケストラなので、オペラ上演からは遠ざかったが、この楽団にマーラーやプロコフィエフを定着させた功績は大きい。

 ラインスドルフを継いだのは、やはりユダヤ系ドイツ人で、ピッツバーグ交響楽団と兼任のウィリアム・スタインバーグ(1899~1978年)。1972年までの三年間だった。その後が小澤征爾(1935~2024年)なのだが、73年から2002年までという、ボストン響の歴代指揮者の中で最も在任期間の長い音楽監督となった。フランス音楽を得意としたミュンシュ時代のボストン響は、強靱だが決して重厚ではない、軽く美しい音色を特色とする弦セクションだったのだが、小澤征爾はこれをドイツ的な重い音へと変えさせた。おそらくマーラー演奏のためだったのであろう。それは見事に成功したのだが、これは小澤征爾ひとりの手柄ではない。ボストン響のグスタフ・マーラー(1860~1911年)への傾倒はラインスドルフによって既に先鞭がつけられていたのである。


::: C D :::

1)ミトロプーロスのシェーンベルク

1.シェーンベルク:『浄夜』作品4(1943年、弦楽合奏版)
2.ヴォーン・ウィリアムズ:『タリス幻想曲』(1910年)

指揮:ディミトリ・ミトロプーロス
演奏:ニューヨーク・フィルハーモニック
録音:1958年


2)ミトロプーロスのプロコフィエフ

プロコフィエフ:『ロメオとジュリエット』抜粋 作品64(1936年)

指揮:ディミトリ・ミトロプーロス
演奏:ニューヨーク・フィルハーモニック
録音:1957年


3)ラインスドルフのマーラー、ワーグナー

1.マーラー:交響曲第3番ニ短調(1896年)
2.ワーグナー:楽劇『神々の黄昏』抜粋(1874年)

独唱:シャーリー・ヴァーレット(メゾ・ソプラノ:1)
合唱:ニューイングランド音楽院合唱団(1)
   ボストン少年合唱団(1)
指揮:エーリヒ・ラインスドルフ
演奏:ボストン交響楽団
録音:1966年(1)、1965年ライブ(2)


4)ラインスドルフのプロコフィエフ

1.プロコフィエフ:交響曲第2番ニ短調 作品40(1925年)
2.プロコフィエフ:交響曲第6番変ホ短調 作品111(1947年)

指揮:エーリヒ・ラインスドルフ
演奏:ボストン交響楽団
録音:1969年(1)、1965年(2)

プロコフィエフ:交響曲第2番ニ短調 作品40
プロコフィエフ:交響曲第6番変ホ短調 作品111

5)オーマンディのレスピーギ

1.レスピーギ:交響詩『ローマの松』(1924年)
2.レスピーギ:交響詩『ローマの祭』(1928年)
3.レスピーギ:交響詩『ローマの噴水』(1916年)

指揮:ユージン・オーマンディ
演奏:フィラデルフィア管弦楽団
録音:1973年(1)、1974年(2,3)

https://youtu.be/tI4WaYznZFE?si=ae7Z0OORNJyslLOL


6)オーマンディのフランク、ダンディ

1.フランク:交響曲ニ短調(1888年)
2.フランク:交響的変奏曲(1885年)
3.ダンディ:フランス山人の歌による交響曲

指揮:ユージン・オーマンディ
演奏:フィラデルフィア管弦楽団

   ロベール・カザドシュ(ピアノ)
録音:1961年(1)、1958年(2,3)



7)ライナーのバルトーク

1.バルトーク:管弦楽のための協奏曲(1943年)
2.バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽(1936年)
3.バルトーク:ハンガリーの風景(1931年)

指揮:フリッツ・ライナー
演奏:シカゴ交響楽団
録音:1955年(1)、1958年(2,3)



8)ライナーのドヴォルザーク

1.ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調『新世界より』作品95(1893年)
2.バルトーク:管弦楽のための協奏曲(1943年)

指揮:フリッツ・ライナー
演奏:シカゴ交響楽団
録音:1957年



9)セルのコダーイ、プロコフィエフ

1.コダーイ:組曲『ハーリ・ヤーノシュ』
2.プロコフィエフ:組曲『キージェ中尉』

指揮:ジョージ・セル
演奏:クリーブランド管弦楽団
録音:1969年



10)セルのバルトーク、ヤナーチェク

1.バルトーク:管弦楽のための協奏曲
2.ヤナーチェク:シンフォニエッタ

指揮:ジョージ・セル
演奏:クリーブランド管弦楽団
録音:1965年


(しみずたけと) 2025.11.18

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