広島の犠牲者に捧げる哀歌

 明日は〈広島の日〉である。昨年亡くなったポーランドの作曲家、クシシュトフ・ペンデレツキ(1933~2020年)による弦楽合奏曲、『広島の犠牲者に捧げる哀歌』を紹介しておこう。

 1959年から60年にかけて作られた、演奏時間が9分にもみたない、当初はメッセージ性のある表題もない曲だったが、実際の演奏を聴き、情緒性に感銘を受けたペンデレツキ自身が、この曲を広島の原爆犠牲者に捧げることにしたという。広島市長に宛てた1964年の手紙には、「広島の犠牲者が忘れ去られないことを願っております」としたためられ、1994年には広島交響楽団を指揮している。

 演奏会で採りあげられることは多くないが、映画の中でも使われているので、耳にしたことのある人はかなりいるだろう。ただ、ヴァイオリンなどの協奏曲作品がかなり録音されているのに比し、この曲のCDは決して多くない。とりあえず交響曲3番とカップリングされたナクソス盤をあげておく。

交響曲第3番
広島の犠牲者に捧げる哀歌
フローレセンセス
ドゥ・ナトゥーラ・ソノリス第2番

指揮:アントニ・ヴィト
演奏:ポーランド国立放送交響楽団
録音:1998年

ポーランド国立放送交響楽団/アントニ・ヴィト(指揮)
Polish National Radio Symphony Orchestra / Antoni Wit (Conductor)

(しみずたけと)

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「広島の犠牲者に捧げる哀歌」への3件のフィードバック

  1. 何十年か前、ペンデレツキがちょっと話題になったことがあったように記憶しています。何だったのか忘れましたが、おそらく広島と関係していたような…。

    演奏を聴くだけで、複雑難解な曲であることがわかります。というわけで、未だ楽譜を見たことがありません。作曲家が亡くなったのが昨年ですから、まだ著作権の保護期間、ネット上にスコアがあるはずもなく…。8月6日に限らず、広島を思い出すと、ふと聴きたくなる曲です。聴いても、音符は浮かばないし、メロディも憶えられないのに…。やはり「ヒロシマ」という言葉に何かを感じるのでしょうか。

    2021年の〈広島の日〉、平和記念式典に菅首相が出席しました。コロナ禍の下で県境を越えるのは仕方ないとして、原爆を原発(同じ仕組みだとはいえ)と読み違えたり、読み飛ばした箇所があったりして、なぜこんな人物が首相なのか、情けなくなりませんか?そもそも、原稿を書いた人が読めば、読み間違いも読み飛ばしも起きないだろうに、どうして首相に“代読”させる必要があるのか。朗読に長けているわけでもないのに…。原稿を渡されたら、事前に声を出して読む練習くらいしておけよ。

    2016年に広島を訪問したオバマ大統領のスピーチ。内容にさらなる重さが欲しかったものの、それでも原稿の棒読みではありませんでした。いや、ペーパーに目を落とすことなく、正面を向いて語る姿に、日本の政治家とは異なる姿勢を感じたものです。アンゲラ・メルケル、エマニュエル・マクロン、ボリス・ジョンソン、ジョー・バイデン、ウラジーミル・プーチン、習近平、政策や政治姿勢の善し悪しは別として、“原稿を読むだけ”の者はひとりとしていません。菅首相(と彼を下支えする官僚)が、このような連中と渡り合えるとは到底思えないのですが。

    おっと、話が飛んでしまいました。ペンデレツキの他の曲、たとえば交響曲にもなかなか良いものがあります。外出がためらわれる今日この頃、久しぶりに聴いてみるとしましょうか。
    (しみずたけと)

  2. 広島の日に、この曲を聴きました。
    PCが壊れているのかと、思ったりして聴き直しました、…
    すべてが破壊された日のレイクイエムですね
    丸木夫妻の描いた原爆の図….の音版みたい…
    に感じました、実物の絵をみていないのですが。
    櫻井民子

  3. ペンデレツキについては何も知りませんでした。
    広島の犠牲者に(後付けにしても)捧げた曲、ポーランド人ということで興味を持ち、聞いてみたら、音が混ざってとても不思議な曲。

    ちょっと見てみました。弦楽器ばかり、半音どころかもっと間隔の狭い音の混ざりあい(トーン・クラスター)、初めのほうの楽譜を見て「何これ!」。
    演奏者には「楽器が壊れる」と拒否されることも多いとか。
    アウシュビッツの近くで生まれ育ち、ユダヤのモチーフ、ホロコーストが作品に現れることもあるとか。

    彼の音楽に私が馴染むのは遠そうですが、ダリと親しかった、樹木学にも深く、植栽の迷路についての専門家でもあった…面白そうな人物、と知ることができよかったです。

    広島と言えば、「ひろしま美術館」はおすすめですよ。
    「広島県立美術館」でも「広島市現代美術館」でもなく「(財)ひろしま美術館」です。

    ゴッホの最晩年の作品で「ドービニーの庭」、書かれていた猫を画商が勝手に消して草にしてしまったとかいう絵。ピカソの「子羊を連れたポール、画家の息子、二歳」という(未完に見えましたが)愛情あふれた絵、ロートレック、モネ、ルノワール、その他いろいろ、私の好きなヴラマンクもあり、小さいけれどとても満ち足りた思いをしました。

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