「沼地の兵士の歌」のCD紹介

 以前の「記事:沼地の兵士の歌」にて紹介したドイツ語、フランス語、英語の各国語で歌われる「沼地の兵士の歌」が収録されているCDを紹介しておこう。

::: CD :::

1) Hannes Wader singt Arbeiterlieder

 ハーネス・ヴァーダー(1942年~)のコンサート・ライブ。11番目の曲が、オリジナルのドイツ語による「沼地の兵士の歌」である。他にも、イタリア・パルチザンの歌であった「ベラ・チャオ」や、南米チリのヌエバ・カンシオン、世界中で歌われている「不屈の民」、そして「インターナショナル」など、労働歌は、すなわち抵抗の歌であることがわかる。

 「インターナショナル」を、社会主義・ソ連の歌であると勘違いしている人がいるが、この歌も社会主義もフランスで生まれたものだ。それに、ソ連が真に社会主義であったことはないし、あったとしても、ごく短い期間でしかなかった。中国しかり、北朝鮮もまた、しかりである。

 聴衆がいっしょに唱和するところなど、見知らぬ人同士がビアホールで合唱を始めてしまう、いかにもドイツ的で楽しい。こうした宥和的な民族性を逆手にとったのが、まさにナチスだった。美点は、気をつけないと、悪用されたときが恐ろしい。

  1.  Dem Morgenrot Entgegen (Lied Der Jugend)
  2. Auf, Auf Zum Kampf
  3. Der Kleine Trompeter
  4. Bella Ciao (Lied Der Italienischen Partisanen)
  5. Mamita Mia (De Las Cuatro Muleros)
  6. Die Thälmann-Kolonne (Spaniens Himmel)
  7. El Pueblo Unido
  8. Trotz Alledem (Dass Sich Die Furcht In Widerstand Wandeln Wird)
  9. Das Einheitsfrontlied
  10. Solidaritätslied
  11. Die Moorsoldaten
  12. Lied Vom Knüppelchen
  13. Die Internationale

2) Le Choeur de l’Armée Française

 こちらでは、フランス陸軍合唱団による「沼地の兵士の歌」を聴くことができる。遅めのテンポともあいまって、快活ともいえるドイツ語の歌より暗さを感じるだろう。軍で歌われたということは、歴史的事実を愛国心に転換する手法が存在するということでもある。おなじみになった「パルチザンの歌」のほか、ミサ曲も、ここでは軍隊や愛国心を歌うものとなっている。演奏は、吹奏楽でも有名なギャルド・レピュブリケーヌだ。

MESSE MILITAIRE
 1.  Prélude et Notre Père
 2.  Interlude pastoral
 3.  Au Drapeau – Psaules, Poème
 4.  Kyrie Éleison – Agnus Dei
 5.  Interlude – Poème – Psaumes – Amen

6.  PRIÈRE POUR NOUS AUTRES CHARNELS
7.  LE CHANT DES PARTISANS
8.  LE CHANT DES MARAIS

MESSE MÉMOIRE ET PATRIE
 9.  Kyrie Éleison
 10.  Sanctus
 11.  Agnus Dei
 12.  De Profundis

13.  FINAL DE LA CANTATE LIBERTÉ

Orchestres de la Garde Républicaine


3) Pete Seeger: “Live in ’65”

 アメリカのフォーク・リバイバル運動の中心であり、プロテスト・ソングの歌い手であったピート・シーガー(1919~2014年)。1965年というと、ベトナム戦争の初期だが、その頃のコンサート・ライブを収めた2枚組のCD。「沼地の兵士の歌」は、サビの部分でドイツ語をまじえたり、軽妙な語り口が楽しい。ようやくメジャーになりかけてきたボブ・ディランの「激しい雨が降る」や、知らぬ人のいない「花はどこへ行った」も収録されている。「グアンタナメーラ」は、いま聴くと、テロ容疑者に対する非人道的な取り扱いで国際社会から非難されているグアンタナモ収容所を想起してしまうのは、はたして私だけだろうか。

CD 1
  1.  Oh Susanna
  2. He Lies in an American Land
  3. Oleanna
  4. Uh, Uh, Uh
  5. Never Wed an Old Man
  6. When I First Came to This Land
  7. All Mixed Up
  8. I Come and Stand at Every Door
  9. Malaika
  10. May There Always Be Sunshine
  11. Manyura Manya
  12. The Freedom Come-All-Ye
  13. Peat Bog Soldiers
  14. Los Cuatro Generales
  15. Turn! Turn! Turn
  16. Healing River
CD 2
  1.  This Little Light of Mine
  2. Old Joe Clark
  3. Going Across the Mountain
  4. Praties Grow Small
  5. Step by Step
  6. Greensleeves
  7. I Once Loved a Lass
  8. Queen Anne Front
  9. A Hard Rain’s A-Gonna Fall
  10. The Bells of Rhymney
  11. If I Had a Hammer
  12. Guantanamera
  13. This Land is Your Land
  14. Where Have All the Flowers Gone
  15. Abiyoyo

4) Paul Robeson: ‘SONGS FOR FREE MEN’ 1940-45

 アメリカのバス・バリトン歌手、ポール・ロブスン(1898~1976年)。逃亡奴隷で、後に牧師となった父親をもつ彼が歌う、アメリカン・バラッド、奴隷でない自由人の、そして黒人霊歌を収めたCDである。

  1.  Ballad for Americans
  2. Spring Song
  3. Oh, Give Me Your Hand
  4. Chee La!
  5. Fengyang
  6. Chinese Soldiers Song
  7. Riding the Dragon
  8. From Border to Border
  9. Oh, How Proud Our Quiet Don
  10. The Purest Kind of Guy
  11. Joe Hill
  12. The Peat-Bog Soldiers
  13. The Four Insurgent Generals
  14. Native Land
  15. Song of the Plains
  16. Cradle Song
  17. Within Four Walls
  18. Anthem of the Ussr
  19. The United Nations
  20. By An’ By
  21. Sometimes I Feel Like a Motherless Child
  22. John Henry
  23. Water Boy
  24. Go Down Moses
  25. Balm in Gilead
  26. Nobody Knows De Trouble I’ve Seen
  27. Joshua Fit De Battle of Jericho

(しみずたけと) 2021.12.28

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「「沼地の兵士の歌」のCD紹介」への3件のフィードバック

  1. 「沼地の兵士の歌」のドイツ語版、フランス語版、英語版で15曲ほども集めて聴いてみた。演奏形態は多種多様でとても興味深い。たとえば、ドイツの音楽シーンでは、二、三のヘビーメタルのロックグループがカバーしている。中でも特に興味深かったのは、同じくドイツのグループで、中世の歌詞や音楽を現代音楽の様式を用いて再現している人たちのMoorsoldaten(ドイツ語版)。グループ名を Helium Volaという。男女ひとりずつのヴォーカルに数人の楽器演奏者の組み合わせ。Heliumはヘリウムガス、Volaは「飛べ!」のイタリア語とのことらしい。次の動画は7分間と長いので途中で飽きるかもしれないけれど、面白い。
    https://youtu.be/KTc4-9FlEdc

    1. “Moorsoldaten”をYouTubeで検索すると、たくさん出てきますね。
      それだけ身近な存在と言うことなのか…。
      印象的なのは2015年のマウントハウゼン解放記念日の合唱。
      ドイツ語に始まり、英語とフランス語はわかったけれど、他は何語だったのかな。

      この歌にヘビメタ・バージョンがあるのは、わかる気がしますね。
      体制とか権力を批判する要素を含むものだから。
      そういえば「ドナドナ」を歌うロックバンドもあったなぁ。
      日本と違い、政治や社会を歌うことを避けないのは民族性なのか、それとも伝統?
      そもそもロックやレゲエ、ジャズとかは、それがルーツだし。
      そう考えると、この国では表面的な「カタチ」だけ模倣したミュージックが
      やたら目立つなぁ。「うた」という言葉は「うったえ」に由来するはずだけど…。

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