フィンランディア賛歌

 交響詩『フィンランディア』を紹介する中で、第二の国歌のように受けとめられているというようなことを書いた。国歌というからには、歌うための言葉、歌詞が必要である。それはどうなっているのか。ここで少し補足しておきたい。

 歴史劇のための音楽から独立させられた交響詩『フィンランディア』の、さらに「フィンランドは目覚める」という部分に、同国の詩人ヴェイッコ・アンテロ・コスケンニエミ(1885~1962年)が1940年に書いた詩がはめ込まれ、翌年、シベリウス本人によって合唱用に編曲されたのが『フィンランディア賛歌』である。当時、ソ連の侵略を受け、祖国は「冬戦争」の真っ直中。しかし、この歌が人々を奮い立たせ、国家存亡の危機を乗り切ったのである。映画コレクションにある『ウィンター・ウォー』は、この「冬戦争」をテーマにした作品である。

 オリジナルの管弦楽曲は、ロマノフ朝の帝政ロシアに対して、合唱曲の方は、スターリンが支配するソ連に対して、抵抗する国民に勇気を与えるものとなった。そのことが、今日、第二の国歌として広く歌われるようになった理由である。国とか政府が国民に「歌え」と命じたわけではなく、国民の中から自発的に「歌おう」「歌いたい」と湧き起こってきた歌。だからこそ、価値がある。

Finlandia-hymni

Oi Suomi, katso, Sinun päiväs koittaa
Yön uhka karkoitettu on jo pois
Ja aamun kiuru kirkkaudessa soittaa
Kuin itse taivahan kansi sois
Yön vallat aamun valkeus jo voittaa
Sun päiväs koittaa, oi synnyinmaa

Oi nouse, Suomi, nosta korkealle
Pääs seppälöimä suurten muistojen
Oi nouse, Suomi, näytit maailmalle
Sä että karkoitit orjuuden
Ja ettet taipunut sä sorron alle
On aamus alkanut, synnyinmaa

フィンランディア賛歌

おゝスオミよ 見よ お前の夜明けだ
お前を脅かした夜は いまや遠ざかり
輝く朝の中 鳥たちが遊ぶ
まるで空全体が歌うかのように
朝の光が 夜の闇に打ち勝ち
祖国よ お前の夜が明けたのだ

立ち上がれ スオミよ 高々とあげよ
偉大な業(わざ)に輝く その頭を
立ちあがれ スオミよ お前は世界に見せた
他民族の支配をはねのけ
抑圧に屈しなかったことを
祖国よ お前の一日が始まるのだ

ライブ映像が素晴らしい!

演奏者、合唱者のアップ映像を多用している。(演奏時間10分弱)

2017年、フィンランド独立100周年記念を祝したBBCプロムスでのBBC交響楽団による演奏。指揮者は1965年生まれ、フィンランド出身のサカリ・オラモ。彼はバーミンガム市交響楽団、フィンランド放送交響楽団を経て、ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者を務める。

 

 ::: CD :::

 合唱の入った「フィンランディア」、つまり『フィンランディア賛歌』の録音は、あまり多くないのだが、シベリウスを十八番とするネーメ・ヤルヴィが指揮したCDが手に入りやすいのはありがたいことだ。演奏は、これもシベリウスを得意とするスウェーデンのエーテボリ交響楽団である。

1.火の起源 作品32(1902年)
2.即興曲『サンデルス』作品28(1898年)
3.フィンランド軽歩兵隊の行進曲 作品91a(1917年)
4.ご機嫌いかが 作品31-2(1904年)
5.アテネ人の歌 作品31-3(1899年)
6.アカデミー行進曲 JS155(1919年)
7.フィンランディア賛歌 作品26(1899年)

指揮: ネーメ・ヤルヴィ
演奏: エーテボリ交響楽団
独唱: サウリ・ティーリカイネン(バリトン)
合唱: エーテボリ少年合唱団、YL男声合唱団
録音: 1985年


(しみずたけと) 2022.2.26

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