オスプレイと米軍基地


 米空軍のオスプレイが屋久島沖に墜落したのは11月29日だったから、もう二週間以上が過ぎたことになる。搭乗の八人全員が死亡したことになっているが、うち一人はまだ行方がわからない。生存の可能性がゼロだから全員死亡とされているのだろう。

別に驚くようなことではない。オスプレイの危険性は以前から指摘されてきた。ある意味、想定内ともいえよう。横田基地に所属する機体だから、何度もこの八王子上空を行き来していたはずで、私たちが目にしていたうちの一機だったわけである。


 屋久島沖だったことが墜落原因ではない。単に墜ちた場所が屋久島沖だったというだけである。これまで八王子市内に墜ちなかったのは偶然だし、墜ちても、それもまた偶然に過ぎない。ひとつ言えるのは、他の機体より墜落しやすい、墜ちる確率(可能性と言い換えても良い)の高い物体がこの上空を飛んでいたということである。

 今回の事故を目撃した人の証言によれば、裏返しになって燃えながら墜落したらしい。上翼タイプで、翼にエンジンを装着した飛行機がバランスを失えば、重たいエンジンが下になるのは物理の法則どおりである。この姿勢では、搭乗員が脱出することなど不可能だろう。気の毒な話である。

 オスプレイが構造的な無理を抱えていることは、以前にも書いた。ありていに言えば「欠陥機」である。欠陥車とか欠陥住宅など、欠陥のある製品はいろいろある。製造上のミス、工作精度や施工の不良、材料の質の問題を頭に思い浮かべるかもしれないが、設計段階における無理も欠陥につながる。たとえば、10メートル四方の土地に50階建ての高層ビルを建て、それが地震で倒壊したら、材質とか施工以前の問題であることは、誰が考えてもわかるに違いない。

 そんなオスプレイに乗るパイロットはどう思っているのだろうか。欠陥機であることを知らないのだろうか。軍隊とは真実を隠蔽するのが得意だから、そういうこともあるかもしれない。それとも命令だから従わざるを得ないのか。まるで戦争末期、生きて帰ることのできない飛行機に乗せられ、笑って飛び立ったことにされた特攻隊員と同じではないか。そういえば、ベニヤ板の特攻艇「震洋」、同じくベニヤ板で作られた戦闘機「剣」などというものもあった。洋の東西が違えど、時代が変わろうと、軍隊という組織は人間など部品としか考えていないことがわかる。

 オスプレイが墜落するにしても、それは東京ではないだろうし、東京だとしても、八王子以外だろうし、仮に八王子だとしても、ここ別所ではないだろうし、少なくとも私の家ではないだろう…。そういう思いなのだろうか。

 オスプレイが墜落しやすい危険な飛行機だとしても、それで生じる犠牲など微々たるものだ。中国が、北朝鮮が、ロシアが攻めてきたら、とても数人などという被害ではすむまい。オスプレイの危険など必要経費みたいなものだ…。そう考えているのだろうか

 この飛行機は、ローターをティルトしたときに、とりわけ事故が多い。だから基地上空以外ではティルトしないことになっていたはずだが、横田基地から約15キロ離れたこの上空を飛ぶオスプレイは、そのほとんどがティルトした姿勢で飛行している

 1955年9月19日、横田基地を離陸したF-80戦闘機が上空で爆発し、現在の八王子市大楽寺町に墜落した。民家六棟が焼け、パイロットと住民五人、合わせて六人が死亡している。57年12月12日には、横田基地に着陸するC-46輸送機が、犬目町に墜落炎上し、乗員五人は全員死亡。当時このあたりは山だったが、今は住宅地になっている。

 戦後、中国軍や北朝鮮軍、ロシア軍に殺された人はいない。しかし、事故とはいえ、米軍によって命を奪われた人は数え切れない。強盗やレイプも、報道されたものだけでもかなりの数にのぼる。横田基地に近い八王子に住む私たちはどう受け止めるべきなのか。


(しみずたけと) 2023.12.14

以前の記事はこちらです。2020.4.13 オスプレイ

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