世界に展開する日本「軍」 永山茂樹

日本はいま、海外における軍事活動に積極的に関与しています。昨年にかぎっても、

  1. アフリカ東岸ソマリア沖に、「海賊対処」の名目で、護衛艦や哨戒機を派遣しています。この活動は丸10年をむかえました。同海域の海賊発生数は11年をピークに、18年には3件に激減しました。が奇妙なことに、自衛隊を撤退させるという話は耳にしません。「派遣のための派遣」化しています。
  2. シナイ半島に展開するMFO司令部に、自衛隊員を派遣しました。国連PKOとはちがう、「国連が統括しない」軍事活動への初の参加です。同地域は安定しているという前提で派遣しました。が、最近はISの勢力が拡大したという報道もあります。
  3. 護衛艦いずもを空母に改造する計画をすすめています。21年度予算の概算要求には、改修費用31億円を計上しました。完成すれば、自衛隊の航空機は「地球の裏側」で容易に活動できるでしょう。
  4. 太平洋・インド洋では他国軍との共同演習等がさかんにおこなわれています。5月にはインド洋で日米仏豪の共同訓練がありました。これは南シナ海への中国の進出を牽制する意味があるといわれます。10月には米主導の「有志連合」の事前演習ともいうべき海事演習IMXが、ペルシャ湾近辺でありました。これには自衛隊の掃海艇が参加しました。
  5. 外国との兵器開発・貿易をすすめています。よく知られるように、武器爆買いは私たちの生活を脅かしています。1機116億円もする戦闘機147機の代金も払わなければなりません。また9月にはイスラエルと武器技術秘密保護覚え書きをむすびました。日本の軍事技術が、パレスチナ民衆を弾圧するために使われないでしょうか。

11月には幕張で世界最大規模の武器見本市がありました。

自衛隊は、世界に展開する強大な軍隊と化しました。それは上記事実から歴然としています。この延長上に、20年のオマーン湾などへの派遣があります。

政府は国会閉会中の12月27日、オマーン湾などへ自衛隊を派遣することを決めました。これは防衛省設置法4条18号「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと」を根拠とします。しかし同法では、活動の態様・期間・撤退条件・集めた情報の使途はおろか、国会の関与手続すら白紙です。ですからアフガン戦争やイラク戦争の「特措法」による派遣と比べ、法的縛りがほとんどないという特徴があります。国会と法律の統制が及ばないつくりで自衛隊を派遣することなど、容認はできません。

政府は「有志連合への参加ではない」といいます。しかし④のように、自衛隊は有志連合の事前演習に参加しました。また集めた情報は、他国軍に提供される予定です。これは有志連合への実質的参加なのです。では今後、自衛隊が戦闘に巻き込まれる危険はないでしょうか。

自衛艦が攻撃されたら、自己防衛のため武器が使用できます。また日本関係船舶(この線引きもあいまいですが)が攻撃されたら、政府は海上警備行動を発令し、その保護にあたる予定です。このとき自衛隊は、警察活動として武器を使用できます。

近隣で活動する有志連合の艦船が襲われたらどうでしょう。自衛隊は何もできません。法的には。しかし現場の判断で、他国軍の護衛に駆けつけることはないでしょうか。ここで「軍は暴走する」という歴史的教訓が想起されるべきです。

他国軍と一体化して戦闘に加わる(加わらざるをえない)おそれがあっても、自衛隊を派遣する。首相は「自衛隊員は違憲扱いされて不憫だから、改憲して自衛隊を明記する」といいました。 でも自衛官の人命を軽く扱っているのは、ほかならぬ政府だということがわかります。