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移民・難民

戦争に分断される恋人たち
愛と哀しみの旅路
監督:アラン・パーカー  1990年・米 133分

アメリカの市民権を持つ日系人が、第二次大戦中、財産を没収され、砂漠の中に隔離・収容されたことは、日本ではあまり知られていない。この映画のストーリー自体は、アメリカ人男性と日系女性の悲恋を描いたラブ・ストーリーなのだが、社会派のアラン・パーカーだけあって、日系アメリカ人の強制収容を背景にしたところに、彼の人種差別と偏見に対する批判、人間の尊厳を問うメッセージが織り込まれている。当時の風俗の再現、日系人たちの自然な演技と存在感が作品のリアリティに貢献している。

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日本人というだけで…
マンザナールよさらば
監督:ジョン・コーティ  1976年・米 105分

夢を抱いてアメリカに渡った日本人たち。太平洋戦争が勃発し、彼ら・彼女らは「日本人」というだけで、あらゆる権利を剥奪され、収容所に送られた。これはマンザナール収容所で育ったジャンヌ・ワカツキ・ヒューストンが、夫 ジェイムズ・D・ヒューストンと共に著した“Farewell to Manzanar”をもとに、NBC放送が制作したTVドラマである。

原著の翻訳も出版されている。 『マンザナールよさらば:強制収容された日系少女の心の記録』、現代史出版社、1975年。

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誇り高き反骨の人生と人間愛
ミリキタニの猫
監督:リンダ・ハッテンドーフ  2006年・米 128分

ニューヨークの路上で猫の絵を描き続ける80歳の日系アメリカ人画家、ジミー・ツトム・ミリキタニ。カリフォルニア州サクラメントに生まれ、母の故郷である広島で育つが、強まる日本の軍国主義を逃れ、18歳の時にアメリカに帰国する。第二次大戦が始まり、ツールレイク強制収容所に送られた彼は、米国の政策に抗議し、自ら市民権を放棄する。それ以来、なんら社会保障も受けられず、路上生活を送ることになるのだが、自由と不屈の精神を失うことはなかった…。彼の絵を買ったことが縁で、911同時多発テロの直後、彼を自宅のアパートに招き入れ、2人で奇妙な共同生活を送ることになったリンダ・ハッテンドーフ監督。彼の人生と背景が次第に明らかになっていく。孫娘を見るようなジミーの目、おじいちゃんに接するようなリンダ。誇り高き反骨の人生と人間愛の感動のドキュメンタリー。

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戦争と人種差別が生み出すもの
ヒマラヤ杉に降る雪
監督:スコット・ヒックス  1999年・米 128分

まだ第二次大戦の記憶が消えきらない1954年、米国ワシントン州にあるサン・ピエドロ島で一人の漁師の水死体が発見される。状況証拠から、日系二世が逮捕され、裁判が始まる中、事件を追う地元新聞の記者が真実にたどり着くのだが…。戦争と人種偏見に焦点を当てた人間ドラマ。

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そして、明日が始まる…
ミナリ
監督:リー・アイザック・チョン  2020年・米 116分

1980年代の米国はアーカンソーの高原。ここに土地を買った韓国系移民のジェイコブ、農業での成功を夢見て、家族で引っ越してきたのだった。ところが、そこは誰も手を出さなかった、出せなかった荒れ地だったのである。生計を立てるためにも、想像を絶する困難が待っていた。しっかり者の長女と、好奇心旺盛な弟は、少しずつ新しい生活に順応していくのだが、不便な生活に苛立つ妻との間に溝が深まっていく。そうした中、夫婦は幼い姉弟の面倒を見てもらうため、韓国から母を呼び寄せるのだったが…。

韓国系移民の二世で、米国の田舎町で育ったリー監督が、自らの体験をベースに制作した感動の家族ドラマ。アメリカン・ドリームを信じ、韓国からやって来た移民家族を主人公に、その苦労を温かなまなざしで丁寧に描き出す。見ものは、型破りなおばあちゃん役で数々の賞に輝いた、韓国を代表するベテラン女優ユン・ヨジョン。

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祖国を追われた三人の男
少女の髪どめ
監督:マジッド・マジディ  2001年・イラン 96分

冬のテヘラン。ラティフは建設現場で働く17歳のイラン人の若者。喧嘩早い彼は新たに雇われたアフガンから来たラーマトにも憎まれ口をたたく毎日。ある日、ラーマトがいるはずの炊事場から少女の歌声が一陣の風と共に彼の耳に届く。覗くとそこには長い髪をくしで梳いている美しい少女の姿があった。少年と偽り健気に働く少女への愛が心の奥に芽生えたときから、ラティフはただひたすらに少女を見守り続ける。彼女のために何かをしてあげたい」と強く思いながら…。

アフガンの難民問題を背景に、イランの若者がアフガンから来た少女に無償の愛を捧げる、淡いプラトニックな恋心を詩情ゆたかに描く切ないラブ・ストーリー。

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ここより下に『映画でみる移民/難民/レイシズム』という本に取り上げられている約20本の映画の内、移民・難民を描いた数作品を挙げています。

本にて紹介されている20本の内、いくつかの作品は他のカテゴリーに入れてあります。

下の本の題名をクリックすると、「本の紹介」ページに跳び、20本全部の映画のリストがごらんいただけます。

中村一成 『映画でみる移民/難民/レイシズム』
影書房 2019年 ISBN 978-4-87714-484-5 2,500円

20本の映画を軸に、平和と人権が語られる。過去の歴史やSFだとしても、身近な事象に置き換えてみれば、それらは決して遠い世界の話ではなく、私たちを取り巻く問題であることに気づくはずだ。しかし、気づこうとしなければ、見えない、聞こえない、そして誰も語ろうとしない。そのことにこそ、問題の根源がある。
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アフガン難民、イギリスへの道
イン・ディス・ワールド
監督:マイケル・ウィンターボトム 2002年・英 89分

英国への不法入国を試みた58人の中国人がトラックのコンテナで死亡するという事件に衝撃を受けたマイケル・ウィンターボトム。難民問題に真正面から取り組むべく、実際にパキスタンのアフガン難民キャンプで暮らす少年を起用し、ロンドンまでの過酷で危険な旅を、事実をもとに描いてみせた。2003年のベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したドキュメンタリータッチの社会派ドラマ。

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ドーバーを泳ぐ少年
君を想って海をゆく
監督:フィリップ・リオレ 2000年・仏 110分

不寛容へと傾きつつあるフランスの移民政策を取り上げ、本国において大ヒットした人間ドラマ。英国に移住した恋人に会おうと、ドーバー海峡を泳いで渡ろうとするクルド難民の少年。その少年に泳ぎを指導するフランスの中年男。次第に心を通わせ、絆を深めていく二人。その姿をあたたかい眼差しでつづる作品。

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移民とコミュニティ
ル・アーヴルの靴みがき
監督:アキ・カウリスマキ  2011年・フィンランド/仏/独 93分

不法移民のアフリカ人少年と出会った平凡な老人が、彼を救うべく、近所の人々と力を合わせて奔走する。北フランスの港町、ル・アーヴルの裏通りを舞台にした、心あたたまる人間ドラマ。

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もし宇宙から難民が押し寄せたら…
第9地区
監督:ニール・ブロムカンプ  2009年・米/ニュージーランド 111分

巨大な宇宙船が漂着し、異星人を難民として受入れることになった南アフリカ。地域住民と彼ら(?)の軋轢が深刻化する中、当局の新たな対応が思いもよらぬ事件を引き起こす。大作にも引けを取らないヴィジュアル効果、SFでありながら、ストーリー進行と語りはドキュメンタリー・タッチ。理解できない相手は、異星人でも同胞でも同じ…。そんな私たちの潜在意識がえぐり出される。

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俺が死んだら故郷に埋めてくれ
メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬
監督:トミー・リー・ジョーンズ  2005年・米/仏 119分

ここはテキサスとメキシコとの国境沿い。「死んだらヒメネスに埋めてくれ」と言い残した親友を故郷に埋葬するため、アメリカ側からメキシコへと旅に出る男の姿を描く。2005年のカンヌ映画祭では脚本賞と男優賞を受賞し、パルム・ドールにもノミネートされた作品。

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移民たちの労働条件改善運動
ブレッド&ローズ
監督:ケン・ローチ  2000年・英/独/西 110分

中南米から来たロサンゼルスの移民労働者にスポットを当てた、イギリスの社会派、ケン・ローチによる人間ドラマ。労働条件改善運動を軸にしながらも、単なる体制批判に陥らず、過酷な環境の中で力強く生きる姉妹の絆、彼女らのそれぞれの愛を、ユーモアをまじえながら、あたたかい眼差しで描く。移民労働者が掲げたスローガン、最低限の生活を意味するパンと豊かに生きるための尊厳を表すバラに由来するタイトルが粋だ。

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ロンドンの労働事情と移民問題
この自由な世界で
監督:ケン・ローチ  2007年・英/伊/独/西 96分

自由化が進み、ますます追いつめられていくロンドンの労働事情と移民問題を描いた社会派ドラマ。労働者として使われることに限界を感じ、外国人労働者の職業斡旋ビジネスを始めたシングルマザー。ある時、彼女は不法移民を働かせる方が儲かると気づき、次第にモラルを踏みはずしていく。

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キミが信じるものは、なに?
やさしくキスをして
監督:ケン・ローチ  2004年・英/ベルギー/独/伊/西 104分

スコットランドのグラスゴーにあるカトリックの高校。音楽教師のロシーンは、ある日、パキスタン移民二世の女子生徒の兄カシムと出会う。彼女には別居中の夫がいたが、誠実なカシムに惹かれ、やがて二人は恋に落ちる。しかし、敬虔なイスラム教徒であるカシムの両親は、息子の結婚相手は同じイスラム教徒と決めており、すでにカシム縁談を進めていた。二人でスペイン旅行へ出かけた際、カシムは婚約者の存在を告白するのだが…。

アイルランド人女性とイスラム系移民男性が、宗教や家族が壁となって立ちはだかる現実、異文化や価値観の相違が接するところに生まれる不条理を乗り越えようとする人間ドラマ。

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その手を誰も忘れなかった
オレンジと太陽
監督:ジム・ローチ  2010年・英 106分

英国の地方都市ノッティンガム。ソーシャルワーカーのマーガレットは、ある日、オーストラリアからやって来たというシャーロットの相談を受ける。彼女の目的は自分のルーツ探し。四歳の時、ノッティンガムの児童養護施設から突然、数百人の子どもたちとともにオーストラリアに送られたという。船に乗せられたのは子どもたちだけ。養子縁組でも何でもなかった。にわかには信じがたい話に衝撃を受け、マーガレットが調査を開始すると、同様の人々が大勢いた。彼ら・彼女らの家族を捜す活動に乗り出す彼女だったが…。

英豪間で1970年まで行われていた、英国最大の醜聞ともいわれる“児童移民”が生み出した悲劇。その実態を明らかにし、家族捜しに尽力したマーガレット・ハンフリーズの手記をもとにした社会派ドラマ。本作で長編劇映画デビューを飾ったジム・ローチ、父親ケン・ローチに迫る実力を早くも見せつけてくれる。

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幸せと不幸せは、背中合わせ。だから、人生はいつだってやりなおせる。
そして、私たちは愛に帰る
監督:ファティ・アキン  2008年・独/トルコ 122分

ドイツ北部の都市ブレーメン。トルコ出身のアリは、男手一つで息子ネジャットを育て上げ、定年を迎えた今、同郷の娼婦イェテルに孤独を紛らわす日々だった。そんな父親に、ネジャットは反発。一方、母国で大学に通う娘アイテンに収入の大半を仕送りしているイェテルに対しては好感を抱いている。そのアイテンは、政治活動に参加したため、母国を追われる身に。母の行方を捜すべく、ドイツに不法入国した彼女だったが、無一文になってしまう。見かねたドイツ人学生ロッテはアイテンを自宅に招き入れ、面倒を見ることに。母親スザンヌは、その保守的な性格から、娘の行動が理解できず、不安と不満を募らせていく…。

トルコ系移民を数多く抱えるドイツとEU加盟問題に揺れるトルコ。両国の社会情勢を背景に、異なる社会を行き来しながら暮らす三組の親子の葛藤と絆を主題に据えた人間ドラマである。

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司法と行政が正しく機能しないと
女は二度決断する
監督:ファティ・アキン  2017年・独 106分

ハンブルクに住む主人公は生粋のドイツ人。彼女は学生時代に知り合ったトルコ系移民の夫と息子の三人で幸福に暮らしていた。ある日、夫の職場の前で爆発事件が起こり、愛する夫と息子を一瞬にして失ってしまう。警察は、移民の夫を巻き込んだ外国人同士の抗争を疑うが、彼女は移民を狙ったネオナチによるテロに違いないと訴える。その主張通り、ネオナチの若いドイツ人夫婦が逮捕され、裁判にかけられるのだったが…。

卑劣な移民排斥テロによって最愛の家族を奪われた女性が、絶望と怒りの中で立ち向かう理不尽な現実とその顛末。司法と行政が正しく機能しないとこういうことになる。カンヌ国際映画祭ではダイアン・クルーガーがみごと主演女優賞に輝いた。

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産みの母に会いたい…
約束の旅路
監督:ラデュ・ミヘイレアニュ  2005年・仏 149分

1984年、干ばつによる飢饉や内紛を逃れ、隣国スーダンの難民キャンプにたどり着いたエチオピア人の母子。そこではイスラエルが、ユダヤ人救出のための大がかりな移送作戦、「モーセ作戦」を実行していた。母子はキリスト教徒だったが、母親は9歳の息子にユダヤ人と偽るよう命じ、ひとりイスラエルへと旅立たせる。少年はシュロモというイスラエル名を与えられ、リベラルな思想を持つ夫婦の養子となるが、実母への思いは断ちがたく、肌の色による壁、愛情を注いでくれる新たな家族と自分を偽り続けることへの後ろめたさに苦しめられる。史実を背景にした感動の物語。

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やさしさとは、なに?
グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~
監督:フィリップ・ファラルドー   2014年・米 110分

1983年に起こったスーダン内戦で、数万人の子どもたちが両親と住む家を失った。 マメールと三人の子どもたちもまた、孤児となって、ケニアの難民キャンプで暮らしている。長兄のテオとは、戦火を逃れてさまよっているうちにはぐれてしまった。13年を難民キャンプで過ごしたマメールたちは、アメリカ移住の抽選に当たる。入国時に、姉だけがボストンに割り振られ、マメールたち三人とは離ればなれに。カンザスシティに着いたマメールたちの世話を担当することになったのは、職業紹介所で働く独身女性のキャリーだった。電話というものすら知らない彼らの就職先を見つける、そんな無理難題が彼女に与えられた役割だった。事務的に処理するつもりでいたキャリーだったが、マメールたちの純粋さや優しさに触れるうちに、彼らとの間に友情が芽生え…。

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スカーフ着用問題の深層
スカーフ論争~隠れたレイシズム
監督:ジェローム・オスト  2004年・仏 75分

第二次大戦が終わり、フランスにはかつて植民地だった北アフリカから大勢の移民労働者が入ってくることになった。やがて「移民第二世代」が現れ、学校にスカーフを着用して登校する生徒が増えてくる。スカーフ着用はイスラム信仰と同義なのか。フランスで大きな論争を呼ぶようになる。問題視するのは、政教分離や男女平等の理念に反するからなのか、それともイスラム教徒というマイノリティに対する差別事件として捉えるべきなのか。スカーフをまとう当事者たちの声を拾い上げた渾身のドキュメンタリー。

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暴力が生む民衆の断絶
移民の記憶 ― マグレブの遺産 -
監督:ヤミナ・ベンギギ  1997年・仏 156分

フランスに住むマグレブのルーツをたどるドキュメンタリー。第二次大戦後、北アフリカから出稼ぎにきた「父」、1970年代の家族合流政策で地中海を渡ってきた「母」、フランスで生まれ育ち、両親の言葉や文化を知らない「子ども」の三部から構成される。戦争からの復興を支える安価な労働力として動員され、いわゆる3Kの底辺労働に従事させられた旧植民地からの移住労働者とその家族の記憶は、2005年の「郊外蜂起」の背景となる。植民地主義、意にそぐわない強いられた移動、こうした暴力が生み出す民衆の断絶を鋭く描く。

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実話をもとにした美しいお伽噺
霧の中の風景
監督:テオ・アンゲロプロス  1988年・ギリシャ/仏 125分

ある晩、ヴーラとアレクサンドロスは家出をし、夜行列車で父親探しの旅に出た。母親からは、ドイツにいると聞かされただけで、幼い二人は父を見たことがない。オートバイの青年への報われない初恋、死んだ馬が引きずられていった雪の夜、疲れきった旅芸人たちが休む海辺、港から吊り上げられる巨大な手、フィルムの切れ端の中に浮かぶ1本の樹…。美しい詩のような風景を背景に描かれる出会い、失望と希望、善悪、真実と嘘偽、愛と死、沈黙、言葉…。そう、これはアンゲロプロスが娘たちのための寓話として作ったのだ。国境を知らない幼い姉弟が、アテネからドイツに父親を探し求めて旅に出たという実話をもとにした映像詩。

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無言のメッセージ
こうのとり、たちずさんで
監督:テオ・アンゲロプロス   1991年・ギリシャ/仏/スイス/伊 142分

TVディレクターのアレクサンドロス。国境の番組をつくりに来た彼は取材の途中、難民の中に、約10年前に失踪して死んだと思われていた大物政治家らしい男を見かける。ところが、彼も彼の夫人も本人であることを認めようとしない。なぜ彼は落ちぶれた別人として生きているのか。アレクサンドロスのカメラが男を追う。かつての妻との対面、男の娘のように登場した難民の少女、彼女とアレクサンドロスの無言の愛…。アンゲロプロスが“国境”と正面から向き合い、難民の愛と失踪した男の心を映像美の中に描く。

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人生は美しい
永遠と一日
監督:テオ・アンゲロプロス  1998年・ギリシャ/仏/伊 134分

ここはギリシアの北にある港町、テサロニキ。年老いた作家のアレクサンドレは、海辺の家から島まで泳いでいった少年時代のことを夢に見るも、今は不治の病で頻繁に薬を飲む日々。すべての者に「旅に出る」と別れを告げ、明日、入院するつもりでいた。娘を訪ねる道すがら、アルバニアの故郷を失い、国境を越えて来た難民の少年と出会う。巨匠テオ・アンゲロプロスが、若き日を回想する老作家と難民の少年のたった一日の心の交流を静かに、詩情豊かに描いた人間ドラマ。背景は政治に起因する複雑な分断社会だ。1998年カンヌ国際映画祭のパルム・ドール受賞作。

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過酷な世界に生きた人たちの軌跡
戦後在日五〇年史[在日]
監督:呉徳洙
1998年・映画「戦後在日五〇年史」製作委員会  歴史編 136分/人物編 124分

1945年の解放から半世紀が過ぎだ。その間、在日朝鮮人はいかに生きてきたのか…。在日と呼ばれる人たちの来し方、生き様を真正面から描く。北は青森、秋田から南は佐賀、福岡、さらに遠くソウルまで、「光復五〇周年祝賀式典」を追いかけるカメラ。組織的な証拠隠滅のせいで、日本には残っていない資料が、米国立公文書館に眠っている。貴重な資料が映しだされ、解放直後の在日に深く関わった元GHQ担当官たちの証言する。米ソ冷戦体制と南北朝鮮の対立に翻弄されながらも、祖国を想い、日本人の偏見と差別に抗う在日たち。彼ら・彼女らの運動を、記録映像と証言で、これでもかと見せつける。受けとめる側の力が今、試されているかのようだ。

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あの時代、あの場所、あんな家族が、こんな人がいた いま思う、あれはキミだったのかもしれない…
焼肉ドラゴン
監督:鄭義信  2018年・KADOKAWA 127分

飛行機が離着陸するシーン。ここは大阪万博が迫って活気あふれる伊丹空港の近く。戦争で左腕を失った龍吉は、故郷の済州島を追われて来日した英順と再婚、ここで小さな焼肉店“焼肉ドラゴン”を開業し、身を粉にして働いてきた。四人の子どもたちを育てあげるために…。そうした中、末っ子の時生は中学でイジメに遭い、心を閉ざしてしまう。次女の梨花は、夫の哲男が、幼なじみでもある長女の静花への恋心を今なお捨てきれずにいることに苛立つのだったが…。

人気劇作家で、映画の脚本でも知られる鄭義信が、自らメガホンをとり、関西の下町を舞台に、在日コリアンの家族が、時代の波に翻弄されながらも、たくましく生きていく姿を、笑いと涙で綴る感動の人情ドラマである。父親役はキム・サンホ、母親役はイ・ジョンウン、二人とも韓国の名優である。

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歴史に翻弄された元北朝鮮スパイ
送還日記
監督:キム・ドンウォン   2003年・プルン映像 148分

朝鮮半島が南北に分断され、北朝鮮は韓国側に数多くのスパイを送り込んだ。拘束したスパイに対し、韓国は共産主義思想を放棄するよう転向を強制したが、それでもなお転向を拒否する者はいつまでも収監され続け、30年をこえる囚人もいた。やがて、金大中の太陽政策を転機として、多くの長期囚が転向しないまま釈放、北朝鮮へと送還されることになる。本作は、そうした年老いた長期囚を中心に、彼らの姿を12年の長きにもわたって撮り続けたドキュメンタリーである。

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近いのに遠い、しかし遠いけれど近い…
ディア・ピョンヤン
監督:ヤン・ヨンヒ  2005年・チェオン 107分

ヤン・ヨンヒ。朝鮮総連の幹部を父に、四兄妹の末っ子として日本に生まれ、日本で育った二世である。三人の兄は、三十数年前に「帰国」。彼女は映像作家として、人生のすべてを「祖国」に捧げてきた父親を、10年間にわたって記録し続け、このドキュメンタリーに仕上げた。家族思いの両親が、なぜ息子たちを帰国させたのか。優しさ?それとも政治的信念?父親に違和感を抱きながらも、理解しようとカメラを向ける。近いようで遠い二つの国。父と娘の間に横たわる溝。それでも感じる確かなむすびつき。二人の対話に耳をかたむければ…。

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50年代、ソ連留学中の北朝鮮の若者8人が亡命したその望郷の思いとは……
さらばわが愛、北朝鮮
監督:キム・ソヨン  2017年・韓国 80分

1952年、ソ連のモスクワ国立映画大学に留学した北朝鮮の若者8人。56年に祖国で起きたクーデター「宗派事件」をきっかけに、当時の金日成体制を批判した彼らは、エリートとして約束された北朝鮮での将来を捨て、帰国せずに亡命の道を選択する。朝鮮戦争、南北分断、金日成、そしてスターリンの目撃者である彼らは何を目撃したのか。カザフスタンを始めとするユーラシアの各地で映画監督や作家として活動した彼らの波乱万丈の人生を追ったドキュメンタリー。制作に着手した時点で、7人は既に鬼籍に入っていた。最後の生存者による証言が重くのしかかってくる。

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国、故郷、愛国心とは何かを問い直す
異国に生きる 日本の中のビルマ
監督:土井敏邦  2012年・浦安ドキュメンタリーオフィス 100分

1991年、ビルマ(現ミャンマー)の軍事政権の弾圧から逃れ、家族を残したまま政治難民として日本に渡った青年チョウチョウソー(チョウ)。彼は生活のため、レストランで働きながら、祖国では禁じられた民主化運動を続けていく。数年後、妻と再会し、日本でレストランを開業した。年老いた父親とは、隣国のタイで会うことはできたが、訃報を受けとっても帰国して最後の別れを告げることはできなかった。民主化運動のために、家族を、祖国への思いを捨てざるを得なかった、そうした悲しい現実の間を心が揺れ動く。在日ミャンマー人青年の14年にわたる生活を通して、国とは何か、故郷とは何か、愛国心とは何かを問いかけるドキュメンタリー。

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日本とはこういう国だったのか!
エリザベス この世界に愛を
監督:土井敏邦  2020年・NHK ETV特集 60分

放送(2021年1月23日 23:00~24:00)
再放送(2021年4月17日 23:00~24:00)
ディレクター:高倉天地
プロデューサー:鐘川崇仁
語り:副島淳

「愛しているよ!」入管施設に収容されている外国人に呼びかける女性がいる。ナイジェリア人のエリザベス。毎日のように各地の入管施設を訪れ、面会を重ね、被収容者たちの切実な声に耳を傾け、心の支えになってきた。無期限の拘留に、先が見えない不安を訴える人、抗議のハンストを始める人、ついには命を落とす人も…。1年半にわたって活動を追い、見えてきた厳しい現実とは。そして、彼女自身も深い苦悩を抱えていた…。入管法改正は、エリザベスをはじめとする外国人たちの運命をどう変えるのか。私たちの日本がどんな国かを知るためにも必見のドキュメンタリー。

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