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貧困・格差

世界中に衝撃を与えた姥捨山伝説!
楢山節考  (1958年)
監督:木下恵介  1958年・松竹 98分

山の中のある村のこと。ここでは、人減らしのために、70歳になった者を楢山に捨てに行く“姥捨”の習慣があった。69歳のおりんは、妻に先立たれた息子の辰平と孫たちを世話しながら、辰平の後妻を探している。楢山祭りの日、辰平は隣村から妻を迎えることができた。気がかりがなくなったおりん、楢山へ行く準備を始めながら、捨てられる老女の歯が立派では息子が恥ずかしかろうと、石臼にぶつけて折ってしまう。正月まであと数日というときに、突如「明日山へ行く」といい出すのだった。

深沢七郎の小説を、木下恵介が脚色・監督した映画。まるで演劇の舞台のように見えるのは、大量のセットを駆使したから。構築されたその独特な世界観に驚かされる。1983年、今村昌平によるリメイク版がカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したが、それも、本作あってこそ。おりん役の田中絹代の演技が光る。

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親を捨てるか、子を捨てられるか。
楢山節考  (1983年)
監督:今村昌平  1983年.東映/今村プロ 131分

そこは信州の山深い寒村。おりんはいまだ元気に働いているが、今年、楢山まいりを迎えようとしていた。楢山まいり…、それは70歳の冬になれば皆、息子に背負われて楢山へ捨て置かれるという村の掟のことである。ひとり生まれたら、ひとり捨てる…、貧困ゆえの因習。捨てられる老婆おりんは「神に召される」と喜ぶのだが、息子の辰平の方は気持ちの整理がつかない。母と子の心の葛藤を描いた人間ドラマ。

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製糸工女哀史
あゝ野麦峠
監督:山本薩夫  1979年・新日本映画 154分

明治維新後、欧米列強に肩を並べようと、殖産興業と富国強兵に邁進する日本。帝国主義国家に仲間入りし、植民地経営に乗り出そうという野望である。つまり、強い国家の建設には武力が不可欠で、産業経済がそれを可能にするという論理だ。生糸産業は養蚕農家から安く繭を買いたたき、絹布で大きな利益を上げる。質の良い日本の絹製品は、外貨獲得の主要商品だった。獲得した外貨で、国はいったい何を買っていたのか。軍艦などの武器である。その一方、低賃金で過酷な長時間労働は、女工たちの肉体を蝕み、病に倒れる者も少なくなかった。

山本茂実のノンフィクション文学を映画化し、大竹しのぶが純朴な少女を好演した青春群像悲話…、で終わって良いのだろうか。非正規労働、ブラック企業、格差社会が叫ばれる中、国は空母を建造し、1機100億円以上もするF35戦闘機を147機も買うことを決めた。オスプレイは17機で30億ドルだという。国民を使い捨てにし、軍備増強に努めているのだ。この100年間、日本は何も変わっていないことがわかる。

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大コメ騒動
監督:本木克英  2020年・「大コメ騒動」製作委員会 106分

富山の小さな漁師町に暮らす松浦いと。三人の子どもを抱え、忙しい日々を送っていたが、米価高騰に悩みが大きくなる一方。夫や育ち盛りの子どもたちにコメを食べさせたくても、高くて買うことができない。“おかか”たちは、コメを安く売ってくれと米屋に嘆願に行くが、リーダー的存在である清んさの“おばば”が逮捕されてしまうハメに…。そうした中、ある事故をきっかけに、我慢の限界を越えたおかかたちが、ついにコメの積み出し阻止という行動に出る。1918年に起きた富山の米騒動で活躍した女性たちの姿が痛快に描かれる。

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貧困は暴力
サンダカン八番娼館 望郷
監督:熊井啓  1974年・東宝 121分

女性史研究家が天草で小柄な老女と出会う。「からゆきさん」であった。共同生活を営みながら、彼女が経験した過去を聞き出す。貧しさゆえ、南方の島へ売春の出稼ぎに渡らざるを得なかった少女たちの過酷な運命。山崎朋子の原作を、社会派の熊井啓が映画化したもの。日本映画史を代表する大女優の一人、田中絹代の全霊をこめた演技により、ベルリン国際映画祭で最優秀主演女優賞を受賞、映画としての遺作を飾った。

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未来をあきらめない。北国を常夏の楽園へ
フラガール
監督:李相日  2006年・シネカノン 120分

エネルギーは石炭から石油へと変わり、閉山が相次ぐ炭鉱。かつて炭鉱で栄えた町は先細りの一途。1960年代半ばの福島県いわき市もその一つだった。そこに起死回生のプロジェクト。豊富な温泉を利用した総合レジャー施設「常磐ハワイアンセンター」の計画が持ち上がる。目玉はフラダンスのショー。ダンサー募集が始まったが、説明会場で目にしたセクシーな衣装で踊る姿に、応募者の大半が逃げ出してしまう。残ったのは、わずか四人。東京からフラダンス教師として招かれた元SKD(松竹歌劇団)のダンサー平山まどかは、もともと気乗りしないものだったこともあり、教える相手が素人ばかりと知ってやる気を失ってしまうのだった。

活気をなくした町の再生を期して計画された「常磐ハワイアンセンター」(現在のスパリゾートハワイアンズ)誕生の物語を、地元社会を背景に、ダンス教師と地元の少女たちの衝突、葛藤、宥和、成長を軸に描いた人間ドラマ。出演者たちの三ヶ月の猛特訓によるフラダンス・シーンが大迫力!

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炭鉱(やま)に生きた人たち
三池 終わらない炭鉱の物語
監督:熊谷博子   2005年・オフィス熊谷 103分

二十余の坑口、坑道は有明海の下に迷路のように伸び、最深部は海面下600メートル、全国の石炭の四分の一を掘り出し、日本最大とも謳われた九州の三池炭鉱。1997年3月30日、その150年以上にわたる歴史の幕が閉じた。囚人労働、強制連行、日本を揺るがした労働争議、炭じん爆発事故、そして環境問題。近年、石炭も炭鉱も負のイメージがつきまとい、人々の記憶から忘れ去られようとする中、そうした流れに違和感を抱いた熊谷博子が、三池の歴史に真正面から取り組んだドキュメンタリー。生活のため、危険を承知の上で炭鉱(やま)に生きた誇り高き人々の証言を集め、完成まで七年をかけた意欲作である。

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自助と共助に依存して良いのか?
こどもしょくどう
監督:日向寺太郎   2018年・パル企画 93分

小学5年生のユウトとタカシは幼なじみの親友なのだが、食堂を営むユウトの両親は、母子家庭で育児放棄の母親と暮らすタカシを気にかけ、しばしば夕食を共にするのだった。ある日、二人は河原で父親と車中生活をしている姉妹と出会う。彼女らを不憫に思ったユウトは、その二人にも食事を出してほしいと、両親に願い出る。数日後、姉妹の父親は行方をくらまし、彼女らは行き場をなくしてしまう…。

格差が広がる日本社会で、貧困対策のひとつとして注目を集める“こども食堂”の存在を、子どもの視点を通し、捨象されがちな弱者に光を当てた人間ドラマ。

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人間喪失時代の到来を予告した作品
モダン・タイムス
監督:チャールズ・チャップリン   1936年・米 87分

1930年代、機械化文明が津波のように押し寄せてきた。工場の一職工チャーリーは、ベルトコンベアー上を次々流れてくる部品のねじを、両手のスパナで締めていた。その単調で無機質の作業に、彼の頭はおかしくなっていく…。人間が機械を用いるのではなく、人間が機械に使われるという本末転倒。工場の歯車とみなされ、駆けずり回る労働者。それをモニターで監視するのは、効率や生産性の観点しかない資本家。描かれるのは、機械文明、物質文明の非人間性への痛烈な風刺であり、チャップリンならではの批判である。やがて訪れることになる「人間喪失の時代」を30年も先取りした先見性は、社会を観察する目、人の心を見透かす卓越した才能によるのだろう。ラストシーンの歌以外に音声はない、トーキー時代の最後の作品だ。チャップリンと言えば、山高帽にドタ靴、ステッキだが、そのスタイルもこれが最後である。

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弱者にあたる冷たい風
アンジェラの灰
監督:アラン・パーカー  1999年・米/アイルランド 145分

大恐慌に陥った1930年代のアイルランドからニューヨークに渡ったマラキとアンジェラ。そこで出会った二人は結婚し、五人の子どもに恵まれるが、仕事のないマラキは失業手当で飲んでしまうような男。末娘を亡くし、アイルランドに戻ったはいいが、リムリックも一家を優しく迎えてはくれるような町ではなかった。アイルランドの貧しい家族の姿を描いた感動ドラマ。フランク・マコートが自らの少年時代を綴ったピュリッツァー賞受賞の同名小説を、社会派のアラン・パーカーが映画化。劇中、医師役で出演もしている。

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キミは“公共”の意味を理解しているか?
パブリック 図書館の奇跡
監督:エミリオ・エステヴェス   2018年・米 119分

ホームレスも利用するオハイオ州シンシナティの公共図書館。彼ら市民には利用する権利があるし、図書館が拒む理由もない。当たり前のことだ。主人公のスチュアートは、図書館員として勤務している。冬のある日、70人ものホームレスが、閉館時間になっても帰ろうとしない。猛烈な寒波が襲来し、市のシェルターも満杯、帰ろうにも行き場がなくなってしまったからである。やむなく図書館を占拠する形になってしまった。館外にやって来たのは、強制排除のための警察官の一団、騒動をかぎつけた野次馬たち、事件の背景や原因といった本質を理解できずに人質事件と報道するトンチンカンなマスコミ。中のホームレスたちと外の警察、マスコミとの板挟みになった図書館員の奮闘を、シリアスに、時にコミカルに描いた社会派人間ドラマ。

公式サイトへリンクしています。

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厳しい社会にも愛あふれる家庭が…
がんばれ、リアム
監督:スティーヴン・フリアーズ  2000年・英 91分

ここは1930年代初頭の港町、リバプール。リアムは両親と兄、姉、五人家族の末っ子で、ただいま七歳。ちょっぴり内気で怖がりだけど、やさしくて、いつも元気いっぱいだ。一家は貧しいながらも誇り高く、そして仲良く暮らしている。カトリックの家庭にとって大切な行事である聖体拝領の日が間近に迫ってきたある日、造船所が不況のため閉鎖、父親が失業してしまう。アイルランド人やユダヤ人が自分らの仕事を奪っていると毒づく父。やがてリアムにとって、あまり来て欲しくなかった聖体拝領の日に…。少年の成長が、当時の厳しい社会状況を背景に、あふれる愛情とユーモアのうちに描かれる。

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現代英国映画の道筋を拓いた作品
ケス
監督:ケン・ローチ  1969年・英 112分

英国ヨークシャー地方にある寂れた炭鉱町。ビリーは、家では兄と喧嘩ばかり、学校でも勉強の苦手なパッとしない少年。ある日、廃墟になった修道院の崖に隼の巣を見つけ、持ち帰った雛にケスと名づけて育て始める。飼育のために、難しい本も読むようになった。ケスとの心の交流がビリーを変え、ビリーに対する先生や級友たちの評価も変わってくる。ある日、馬券を買ってくるよう兄からお金を渡されるのだが…。

鬱蒼とした森、輝く草原、青い空、修道院の廃墟…。英国の田舎にごく普通に見られる田園風景だ。町が炭鉱で栄えたのも昔のこと。今は活気を失い、学校も職場も荒れ、人の心はすさみがち。そんな中でひときわ輝く少年と動物の交流を描いた家庭向き作品…などでは断じてない!町中や教室で起きる愉快な出来事、その日常性の中にある社会の問題を直視する目。研ぎ澄まされたケン・ローチの視線は、もうこの時代に備わっていたようだ。この作品がなかったら、おそらくマーク・ハーマンの『ブラス!』もピーター・カッタネオの『フル・モンティ』、サム・ミラーの『マイ・スウィート・シェフィールド』も生まれなかったに違いない。1990年代から現在に至る英国映画の潮流に大きな影響を与えた作品である。

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たおやかな絆のあるところ
リフ・ラフ
監督:ケン・ローチ  1991年・英 94分

刑務所を出たグラスゴー出身のスティーブ、ロンドンの建設現場に職を見つけたのは良いが、低賃金に劣悪な労働条件と、そこは社会の掃きだめみたいなところだった。ある日、拾った鞄を届けたことから知り合った歌手志望のスーザンと一緒に暮らし始めるのだが、愛し合っているのに不器用な二人は喧嘩ばかり。ある日、スティーブに捜索願いが…。彼の母親が亡くなったのだった。働く者同士の連帯を穏やかに語るケン・ローチ流リアリズム。

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せめて娘だけでも…の親心か?
レイニング・ストーンズ
監督:ケン・ローチ   1993年・英 94分

七歳になる一人娘の聖餐式用ドレスを買ってやりたいボブは、失業仲間のトミーと組んで羊泥棒。どうにか一頭だけ盗み出し、屠畜屋に解体させ、パブに売り歩くのだが、その間に車を盗まれてしまう。今度は慣れないディスコの店員までして稼ごうとするのだが、天下の回りものであるはずの金は、なぜか彼のところに回ってこない。そもそも借金取りに追われる身の上なのだ。次ぎの商売は、公園で切り取った芝を一般家庭に格安で売るというもの。聖餐式のドレス、しょせんは父親の見栄でしかないのだが…。ケン・ローチが描く、社会から疎外された人たちの人間喜劇。

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これが福祉なのか…
レディバード・レディバード
監督:ケン・ローチ  1994年・英 104分

カラオケ酒場で出会ったマギーとホルヘ。マギーにはそれぞれ種違いの四人の子どもがいたが、留守中に起きた火事のせいで社会福祉局の視察が入り、母親不適格とされ、子どもたちは社会福祉局の保護下に。親権を巡る裁判の結果、四人は里子に出されてしまう。号泣するマギーと彼女をいたわるホルヘ。やがて二人の間に子どもが生まれるのだが、再び社会福祉局に子どもを奪われてしまう。ホルヘがパラグアイからの政治亡命者だったからである。二人目の子どもは、今度は生まれるやいなや、病室から出る間もなく社会福祉局のもとへ。絶望のあまり、ののしり合う二人…。実話をもとに、英国社会福祉政策の暗部にスポットをあてたケン・ローチの怒りと嘆きが伝わってくる。

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未来を選べ
トレインスポッティング
監督:ダニー・ボイル   1996年・英 93分

スコットランドの古都エディンバラ。レントンはヘロイン仲間のシック・ボーイやスパッド、アルコール依存症で暴力的なベグビーらとつるんでハチャメチャな生活にドップリ浸かっていた。ある日、万引きの現行犯で捕まったレントンは更生することを決意、ロンドンに出て就職する。折悪しく、強盗で逃亡中のベグビーとシック・ボーイが押しかけて来たため、解雇されてしまう。地元に帰ったものの、彼らを待っていたのは、恋人との別れをきっかけにドラッグに手を出した友人トミーの葬式だった。絶望感ただよう中、大量のドラッグを売りさばく仕事を持ちかけられたレントンとその仲間たちは、人生を変えるべく、大きな賭けに出るのだが…。

ドラッグ漬けの若者たちの陽気で悲惨な青春。それが1990年代の英国ポップカルチャーの一側面だったことは間違いない。この青春映画は、そんな社会を象徴する作品といえよう。ダニー・ボイルの斬新な映像センスは、若き日のユアン・マクレガーやロバート・カーライルらの演技と相まって、カルト的な人気を築き上げた。

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彼らが選んだ20年後の「未来」
T2 トレインスポッティング
監督:ダニー・ボイル  2017年・英 117分

前作から20年後のエディンバラ。仲間を裏切り、大金を持ち逃げしたレントンがオランダから帰ってきた。母親は既に亡く、実家には年老いた父親が一人で暮らしている。ジャンキーのスパッドは、妻子に愛想を尽かされ、孤独のどん底。シック・ボーイことサイモンは、パブ経営の裏で売春やゆすり稼業。血の気の多いベグビーは殺人で服役中。中年になっても大人になりきれない四人は、相変わらず荒んだ生活から抜けられずにいるのだった…。

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生きる歓びと友情
ブラス!
監督:マーク・ハーマン  1996年・英 107分

炭坑閉鎖か否か。生きる希望を失いかけていた人々にとって、彼ら・彼女らに生きる勇気と希望を与えてくれたのが音楽だった。伝統あるバンドが、町と自分たちの誇りをかけて予選大会に出場し、ロイヤル・アルバートホールで開催される決勝大会を目指す。崩壊してゆくコミュニティーを舞台に、音楽と共に生きる歓びと、友情に支えられた人生の素晴らしさを感動的に描く。1917年、炭坑労働者の余暇として結成されたグライムソープ・コリアリー・バンドの実話をもとにした映画。

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英国発のヒューマン・コメディ
フル・モンティ
監督:ピーター・カッタネオ  1997年・英 93分

英国北部のシェフィールド。かつては鉄鋼業で栄えたが、今や寂れた街にあふれる失業者ばかり。息子の養育費を払う事も出来ず、共同親権を失いそうなガズもそんなひとりだった。親友デイヴと男性ストリップショーに紛れ込んだところ、熱狂する女性たちに驚き、自分たちもストリップで一山あてようと目論む。ダメ男たちが、ダメなりに頑張るという単純なストーリーだが、ハリウッド物にはない人情喜劇になっている。

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差しのべる手はどこにある…
マイ・ネーム・イズ・ジョー
監督:ケン・ローチ   1998年・英 104分

グラスゴーで一人暮らしのジョーは37歳。ただいま失業中。アルコール依存症を克服するための断酒会に通いながら、仲間たちとサッカーチームつくり、厳しいなりにも楽しい毎日を過ごしていた。ある日、セーラという女性と出会い、二人は惹かれ合っていくのだが…。人に優しいとはいえない社会環境の中で懸命に生きる姿を、ケン・ローチが愛情いっぱいの人間ドラマとして描く。

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他者を救う者が救われる
ボブという名の猫 幸せのハイタッチ
監督:ロジャー・スポティスウッド  2016年・英 103分

プロ・ミュージシャンを目指したジェームズだったが、夢破れてホームレスに。家族からも見放され、食事すら事欠く毎日だった。ドラッグ依存でロンドンの街中をさまよい歩く中、ある日、怪我をした野良猫と出会う。どうした風の吹き回しか、動物病院に連れて行き、有り金をはたいて治療してもらう。その茶トラ猫、すっかり懐いたようで、ジェームズから離れようとしない。孤独だったジェームズにとってのパートナーに。その茶トラはボブと名付けられ、いつでもどこでもジェームズの肩に乗って出かける。コベントガーデンの広場で演奏していると、以前とは違い、人だかりができるようになった。一曲終われば、猫とストリート・ミュージシャンのコンビがハイタッチ。ホームレスの自立を支援する『ビッグイシュー』の販売員になったジェームズは、売り上げ冊数だけでなく、ボブとともに、たちまちロンドンの人気者として注目を集める。メディアが取材に来たり、YouTubeに登場したり…。どん底のストリート・ミュージシャンが、一匹の野良猫と出会ったことで人生が一転する。猫と人間のコンビが織りなす驚きと感動の実話を綴った世界的ベストセラー『ボブという名のストリート・キャット』の映画化。殺伐と乾いた現代に、恵みの雨を降らせるがごとく、心あたたまる作品。

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怒りがなければ現状は変わらない
わたしは、ダニエル・ブレイク
監督:ケン・ローチ  2016年・英/仏/ベルギー

英国北東部の町、ニューカースル。大工として働き、妻に先立たれた後もきちんと一人暮らしをしてきたダニエル・ブレイク、59歳。心臓病のため、医者から仕事をやめるよう言われる。やむなく国の援助を受けようと手続きを始めるが、お役所仕事の壁に阻まれ、たらい回しにされて右往左往。ある日、助けを求める若いシングルマザーに対する職員の心ない対応に怒り心頭、その親子との交流が始まるのだが…。

怒り心頭なのは、社会から疎外された者の声を代弁するケン・ローチ自身である。『麦の穂をゆらす風』につづき、カンヌ国際映画祭で二度目のパルム・ドールに輝いた感動の人間ドラマ。この作品を見たあなたが怒りを感じないとしたら…、もう何も言う気になれない。視聴者を測るリトマス試験紙。

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これが人間社会なのか!
家族を想うとき
監督:ケン・ローチ   2019年・英/仏/ベルギー 100分

英国東岸の町ニューカッスルに住む四人家族。主人公のリッキー、介護福祉士の妻アビー、16歳の息子セブ、12歳の娘ライザだ。なんとかマイホームを手に入れようと、リッキーはフランチャイズの宅配ドライバーとして独立することを決意。しかし、それには自前でトラックを用意する必要があり、どうにかアビーを説得して、彼女が訪問介護に使う車を売って資金を工面する。移動の足をなくしたアビーは、介護先をバスで回るよりほかなく、家にいられる時間を切り詰めるしかなくなっていく。リッキーの宅配業も、個人事業主とは名ばかりで、自由な裁量がまるでない過酷なノルマ、すべてを自己責任に帰結させる理不尽なシステムに絡め取られ、家族崩壊の危機に直面していく。

規制緩和と社会福祉の後退が生み出した、近年急速に増えている新たな労働形態が労働者の権利を剥ぎ取り、人間の尊厳を侵す。そんな深刻な事態が起きていることをリアルに描き、怒りを持って告発する、社会派ケン・ローチならではの人間ドラマだ。

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これは真実の物語
鉄くず拾いの物語
監督:ダニス・タノヴィッチ  2013年・ボスニア・ヘルツェゴヴィナ/仏/スロヴェニア 74分

ボスニア・ヘルツェゴヴィナで貧しくも幸せに暮らすロマの一家。ある日、三人目の子どもを身ごもっていた妻が激しい腹痛に襲われ、夫が借りた車で病院へと運び込まれる。お腹の中の五ヶ月の胎児はすでに死んでいた。大きな病院ですぐに手術しないと母胎も危ないといわれるが、一家には保険がなく、高額な手術代を払うことができない。それでも、妻の命を救うためにあらゆる手を尽くすべく奔走するのだったが…。 貧困と差別に苦しむロマの一家に降りかかった真実の物語。母国であるボスニア・ヘルツェゴヴィナの新聞記事を目にしたダニス・タノヴィッチが、その怒りを原動力に、当事者たちを起用してまで制作した衝撃と感動の人間ドラマ。ドキュメンタリー作品のごとく忠実に再現され本作は、2013年のベルリン国際映画祭で三冠に輝いている。

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社会がつくり出すレ・ミゼラブル
レ・ミゼラブル
監督:ラジ・リ  2019年・仏 104分

その街の名はモンフェルメイユ。ヴィクトル・ユゴーの同名小説を読んだことがあればすぐにわかるはずだ。今やパリのベッドタウンとなったこの街の犯罪多発地区。様々な勢力が、互いに睨み合い、時に協力し合いながら、危うい均衡を保っている。新たに犯罪防止班に加わることになった警官は、その実情を目の当たりにし、さらにふとしたきっかけで起きた大騒動に巻き込まれていく。移民大国フランスが抱える現代の深刻な社会問題が見てとれる作品だ。

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手を差しのべる心の行方
スペシャルズ! ~ 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話 ~
監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ  2019年・仏 114分

ブリュノは自閉症の子どもたちをケアする“正義の声”という名の団体を運営している。電車の警報装置を鳴らしてしまうジョゼフ、重度の症状のため六ヵ所の施設で受け入れを拒否されたヴァランタンなど、施設は様々な問題を抱えた子どもたちがいっぱいだ。彼らの対応でアップアップなのだが、ブリュノは「絶対に見捨てない」という心意気で運営を貫いてきた。そんな彼だからこそ、心強い味方がいた。社会からドロップアウトした若者たちを復帰させるための団体“寄港”を運営するマリクである。ブリュノの施設にも多くの青少年を介助人として派遣していた。ところが、監査局の調査が入り、無認可で赤字経営の“正義の声”を閉鎖させようとする。さあ、どうなる…。

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誰も一人では生きていけない
その手に触れるまで
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ  2019年・ベルギー/仏 84分

ベルギーに暮らすアフメッドは13歳。ごく普通の少年だったが、通っている街の小さなモスクの導師の語る過激思想に染まっていくのだった。あるきっかけで、導師の言葉に従い、恩人であるはずの女性教師を背教者と思い込み、彼女の殺害を計画するまでになってしまう。彼にとって、それは聖戦(ジハード)だった。ナイフを手に、彼女のアパートへと向かった彼は…。

闇を抱えたまま心を閉ざした少年と、その彼に手を差しのべようとする周囲の人々の苦闘。緊張感に満ちたストーリーが展開される。2019年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した衝撃の作品。

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革命や危機の中でも人は生きている
低開発の記憶 ―メモリアス―
監督:トマス・グティエレス・アレア  1968年・キューバ 97分

1961年のキューバ革命。カストロが社会主義を宣言し、資産家の多くが次々とアメリカに亡命する中、妻や両親と別れ、ひとりハバナに残ることを選んだ富裕階級のセルヒオ。ヨーロッパをスタンダードとする彼は、キューバの国と人々を“低開発”と見なし、街と人々の様子を傍観者のごとく観察し始めるのだが…。

革命直後からキューバ危機に揺れる1960年代初頭の首都ハバナを舞台に、時代の大きなうねりの中に生きる人々の姿を描き出した社会派ドラマ。キューバ映画を代表する名作だが、日本公開はなんと2007年というから、オドロキである。

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淡々と描かれたハバナの日常
永遠のハバナ
監督:フェルナンド・ペレス  2003年・キューバ/西 84分

灯台の明かりが消えた。キューバの首都ハバナに新たな日がやってくるのだ。ダウン症の小学生フランシスキートは登校の準備をし、おばあちゃんと朝食。左官工の父親フランシスコは、舞踊家の青年エルネストの家へ仕事に出かける。アマンダは街角でピーナッツを売り、エリベルトは自転車で鉄道修理の仕事へ。病院勤務のイヴァンは、靴修理屋のフリオにハイヒールの修理を頼む。やがて日が暮れ、宵闇が迫る。街の表情は一変し、昼間の登場人物たちも新たな一面を見せるのだった…。

文豪ヘミングウェイが愛した街、ハバナの、ある一日を切り取ったドキュメンタリー。無名の市民12人の暮らしぶりを通して描き出す、本当のハバナの姿。台詞もナレーションもなく、映像と音楽、街の音だけで淡々とつづられていく。

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韓国の家族社会
冬の小鳥
監督:ウニー・ルコント  2009年・仏 92分

1975年のこと。父に連れられたジニがやって来たのは、カトリック教会が運営するソウル郊外にある児童養護施設だった。黙って立ち去った父が、いつか必ず迎えに来てくれる。自分は孤児なんかではないと、他の子どもたちと馴染むのを拒み、反発するばかりのジニ。そんな彼女を気にかけ、なにかと面倒を見てくれる年長のスッキに、少しずつではあるが、ジニは心を開いていくのだった。過酷な運命を受入れ、悲しみを乗り越えていこうとする一人の少女。その繊細な心の軌跡を描いた本作は、韓国のカトリック系児童養護施設からフランスの家庭に養女として引き取られた監督自らの体験を元にしたものである。。

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パラサイトこそこの世の天国…
パラサイト 半地下の家族
監督:ポン・ジュノ  2019年・韓国 132分

失業中の父親とその家族。一家はかつて核攻撃を想定して造られた古い集合住宅の薄暗い半地下に暮らしている。ある日、大学受験に落ち続けている息子に家庭教師の話が舞い込む。友人のエリート大学生から、留学中のピンチヒッターを依頼されたのだ。紹介された家を訪ねると、そこはIT会社の社長一家が住む高台にある大邸宅。信頼を得た彼は、言葉巧みに妹を美術の家庭教師として紹介し、これが成功する。妹は父親を運転手として、さらには母親を…、一家そろって屋敷の中に入り込んでいくのだったが…。

貧困層と富裕層、ふたつの対照的な家族がくり広げるてんやわんや。偶然の機会を最大限に利用して極貧生活から逃れようとする姿、ある意味浮き世離れした生活に浸かって現実が見えない裕福な人たち、滑稽ともいえる両者をユーモラスに描きながら、ストーリーは予測しない展開を見せる。カンヌ国際映画祭のパルムドールとアカデミー賞のダブル受賞作である。

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動物園を舞台にした前代未聞の極秘プロジェクト!
シークレット・ジョブ
監督:ソン・ジェゴン  2020年・韓国 117分

廃業目前の動物園の経営再建を委ねられ、園長となった法律事務所の見習い弁護士。着任してみると、動物もほとんど残っていないありさまだった。ひらめいたのは奇想天外なアイデア!シロクマ、ライオン、キリン、ゴリラ、ナマケモノの着ぐるみに身を包んだスタッフが動物として勤務するというもの。はたしてその結末は…。

公式サイトへリンクしています。

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安くて手軽だけで良いのか?
ファーストフード・ネイション
監督:リチャード・リンクレイター  2006年・英/米 108分

ミッキーズは大手ハンバーガー・チェーン。業績も安定。ところが、パテから大腸菌が検出されたものだから、さあ大変。マーケティング部長のドンは内部調査を命じられる。新聞沙汰になる前に原因を突きとめろというわけだ。コロラドの工場に行って見ると、メキシコからの密入国者たちが不法就労。悪徳ブローカーが違法労働を斡旋し、ミッキーズ契約の精肉工場へ送り込んでいたのだ。安さの秘密は人件費削減というわけ。アンバーはミッキーズでバイトする真面目な女子学生。大学の環境保護グループの活動に関わっていくのだが…。

エリック・シュローサーの『ファストフードが世界を食いつくす』はベストセラーになったノンフィクション。それをもとに、ファストフード業界の舞台裏を描いたドラマである。

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安ければそれだけで良いのか?
女工哀歌
監督:ミカ・X・ペレド  2005年・米 88分

世界の衣料品の8割を生産する国、中国。家計をささえるため農村から出稼ぎに来るまだ幼い少女たち。平均年齢15歳、1日18時間労働、時給7円以下。職場では食事もお湯も有料。欧米諸国はジーンズなしでは暮らせない。ウォルマートのような企業は品質しかチェックしない。工員の労働条件など興味ない。児童就労、低賃金、長時間労働…。これは現代の「蟹工船」なのか?これは、いつも私たちが穿いているジーンズと、それを作る少女たちの物語。今、私たちの仕事の値段はどのように決まっているのだろう。グローバル化する社会の中で私たちが求める「安いモノ」。そのシワ寄せが、どこに行っているかを教えてくれるドキュメンタリー。

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子どもは親の所有物なのか
存在のない子供たち
監督:ナディーン・ラバキー  2018年・レバノン/仏 125分

ベイルートのスラムに暮らす少年。年齢は、およそ12歳。出生届が出されなかったため、正確な誕生日がわからないのだ。彼の存在は、公式には「ない」。貧しい両親は、彼を学校に通わせるつもりはなく、大家族を養うための労働力とみなしていた。辛い日々をすごす彼のたったひとつ心の支え、それは妹の存在だった。ある日、その妹が無理やり結婚させられてしまう。怒り、そして無力感。絶望から家を飛び出し、街中をさまよううちに、エチオピアからの難民女性と出会う。子守を条件に、彼女の家に住まわせてもらうことになるのだが…。

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世界に向けたS.O.S.
ジャマイカ 楽園の真実
監督:ステファニー・ブラック  2001年・米 86分

美しい海と陽気な国民性、そしてレゲエ発祥の地カリブの楽園として、世界中から観光客が訪れるジャマイカ。その実態を映し出したドキュメンタリー。イギリスからの独立後、経済支援の名のもとにIMF(国際通貨基金)と世界銀行から多額の融資を受けた結果、多額の負債を抱え、先進国の属国状態に陥ってしまう。グローバリズムの進む世界経済の中で、第三世界が抱える共通の問題として捉えていく。

「開発」という名のもとで受けた融資にはいろいろな条件がついてくるものだ。長い植民地の歴史から、やっとの思いで独立したのに、いつのまにか再び裕福な国の奴隷同然に戻っている。これはジャマイカに限った話ではない。グローバリゼーションの名のもと、世界中で起きていることなのだ。そのカラクリを知ると、もっと安く、もっと安く買おうという自分の価値観が恥ずかしくなってくる。

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あなたが飲む1杯のコーヒーから…
おいしいコーヒーの真実
監督:マーク・フランシス、ニック・フランシス  2006年・英/米 78分

世界で1日に20億杯以上のコーヒーが消費されている。トールサイズのコーヒー、一杯330円。コーヒー農家が手にする金額は3~9円だ。コーヒー豆1キロ=2ブル(40円)。1日8時間働いて、日給はわずか0.5ドル。NY市場がコーヒー農家を脅かしている。企業は利益を生むために原材料代を低く抑えたい。これではコーヒー農家はやっていけない。スターバックスへコーヒーを供給しているシダモ地域では深刻な飢餓に見舞われている。貧困の悪化を食い止めるためのWTO会議も、ルールに基づかなければならないのに、先進国の企業の利益を優先しようとして決裂。あなたが飲む1杯のコーヒーから世界のしくみが見えてくる社会派ドキュメンタリー。

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企業はサイコパス?
ザ・コーポレーション
監督:マーク・アクバー  2005年・カナダ 145分

「企業」という言葉を聞いたことのない大人は、まずいないはずだ。多くの人は企業に勤めているわけだし。ところで、企業というのは何だ?その本質は?アメリカ企業、あるいはアメリカをルーツに持つ多国籍企業を中心としたグローバル化が進行中の中、そうした企業の行動原理を支配するもの、社会や世界に及ぼす影響を分析したドキュメンタリーである。法の下で人格を与えられ、法人として存在する企業のサイコパス的な性質を暴露し、どのような問題を引き起こしているのかを見せてくれる。ノーム・チョムスキーのコメントやマイケル・ムーアの呼びかけに耳を貸そう。

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コストを支払っているのは誰?
ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~
監督:アンドリュー・モーガン  2015年・米 93分

これは衣服に関する物語で、私たちが着る服や衣服をつくる人びと、そしてアパレル産業や世界に影響を与える物語だ。これは貪欲さと恐怖、そして権力と貧困の物語でもある。全世界へと広がっている複雑な問題だが、私たちが普段身につけている服についてのシンプルな物語でもある。

この数十年、服の価格が低下する一方で、人や環境が支払う代償は劇的に上昇してきた。本作は、服を巡る知られざるストーリーに光を当て、「服に対して本当のコストを支払っているのは誰か?」という問題を提起する、ファッション業界の闇に焦点を当てたこれまでになかったドキュメンタリー映画だ。

この映画は、きらびやかなランウェイから鬱々としたスラムまで、世界中で撮影されたもので、ステラ・マッカートニー、リヴィア・ファースなど、ファッション界でもっとも影響のある人々や、環境活動家として世界的に有名なヴァンダナ・シヴァへのインタビューが含まれている。またフェアトレードブランド「ピープル・ツリー」代表サフィア・ミニーの活動にも光を当てている。私たちは行き過ぎた物資主義の引き起こした問題に対して、まず身近な衣服から変革を起こせるのかもしれない。(商品説明から)

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「貧困援助」の驚きの事実
ポバティー・インク あなたの寄付の不都合な真実
監督:マイケル・マシスン・ミラー  2014年・米 91分

「貧しい気の毒な人たちのために手を差し伸べよう」「彼らは無力で何もできない」…。そんなイメージをうたい、繰り広げられてきた営利目的の途上国開発は、今や数十億ドルに及ぶ巨大産業となっている。その援助活動の多くが失敗に終わり、援助の受け手がもともと持っている能力やパワーを損ないさえする。私たちの「支援」がもたらす問題は?ハイチやアフリカを主な舞台に、支援の裏側の隠れた真実と、それを乗り越え、切り開かれつつある未来の希望を、“支援される側”の生の声とともに伝えるドキュメンタリー。(商品説明から)

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リーマンショックはここから
インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実
監督:チャールズ・ファーガソン  2010年・米 109分

サブプライムローン問題に端を発したリーマン・ブラザーズの経営破綻と、これがきっかけとなった世界規模の金融危機。リーマン・ショックである。世界中を巻き込むことになった金融機関による大暴走が、いったいどうして起きたのか。金融業界の当事者たちのインタビューを通して、ほとんどペテンとしか思えないカラクリの実態を明らかにしていくドキュメンタリー。

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アメリカ社会の矛盾を撃ち抜く
ボウリング・フォー・コロンバイン
監督:マイケル・ムーア  2002年・米 120分

1999年4月20日、コロラド州の小さな町リトルトン。朝6時からボウリングに興じていた二人の少年。その後、銃を片手に自分らの通うコロンバイン高校へ。乱射で生徒12人、教師1人を殺害、23人を負傷させた後、二人は自殺した。「なぜこれほどまでに銃犯罪が多いのか」と問うマイケル・ムーアは、疑問を解消すべく、カメラとマイクを手に突撃取材を開始。全米ライフル協会会長チャールトン・ヘストンにも、お得意のアポなし取材を敢行、アメリカ銃社会の矛盾を斬りまくる傑作。

カンヌ国際映画祭では、ドキュメンタリーが46年ぶりにコンペティション部門に出品され、その圧倒的な人気が「55周年記念特別賞」を新たに設けさせるなど、世界中の話題をさらった作品である。

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健康を営利会社に委ねて良いのか
シッコ
監督:マイケル・ムーア  2007年・米 123分

先進国の中では唯一、公的な国民皆保険制度を持たないアメリカ。健康保険の大半は民間の保険会社に委ねられ、その高額な保険料のため、約4700万人もの国民が無保険状態にある。アメリカの医療制度が抱える問題点を、諸外国と比較し、医療現場で起きている信じがたい、笑うに笑えない悲惨な事例の数々を紹介しながら、利益ばかりを追求する民間の健康保険こそが、アメリカ国民に深刻な影響を与えていることを暴露する。自国の医療保険問題に鋭いメスを入れたこの社会派ドキュメンタリーを見ることで、新型コロナウィルスの感染者と死者の数でアメリカが世界のトップになった理由がわかるというものだ。

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米国資本主義の不条理
キャピタリズム マネーは踊る
監督:マイケル・ムーア  2009年・米 127分

2008年、サブプライムローン問題が起こり、つづいてリーマン・ブラザーズが破綻。ここから金融危機に発展し、世界は空前の大不況に陥った。米国では仕事も家も失い路頭に迷う人々が続出。そのサブプライムローンで暴利を得てきた巨大金融機関には、救済を目的に国民の血税が大量に投入されるという皮肉な事態に。いったい、なぜ?米国の資本主義(キャピタリズム)の不条理に切り込むべく、ウォール街へと乗り込むが…。マイケル・ムーアが『ロジャー&ミー』以来、20年ぶりに経済問題をテーマに描いたドキュメンタリー。

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資本主義が根源的に抱える矛盾
21世紀の資本
監督:ジャスティン・ペンバートン   2019年・仏/ニュージーランド 103分

世界的なベストセラーとなったトマ・ピケティの『21世紀の資本』を、原作者自らの解説で映画化した、資本主義経済をテーマにしたドキュメンタリー。経済の成熟により、その担い手であるはずの中間層がどんどん没落し、富はますます一握りの富裕層に集中していく。それによって、社会は富める者とそうでない者に分断され、そのことが差別を生み、不満のはけ口は過激な国粋主義や排外主義を助長、権力は批判の矛先が自分らに向けられないよう、敵を外部に設定し、愛国心を煽り、最後は戦争へと導かれることになる。有名な映画のシーンと多数の専門家の解説を織り交ぜながら、資本主義そのものが抱える格差拡大の仕組み、非民主性と反平和主義をわかりやすく解き明かしていく。ではどうすれば良いのか。解決の処方箋はないのか。そのヒントは…。本作を見て考えてほしい。

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生中継で暴かれる真実
マネーモンスター
監督:ジョディ・フォスター  2015年・米 95分

テレビの人気司会者、リー・ゲイツ。投資情報番組「マネーモンスター」は、彼の軽妙なトークで人気を博していた。リーを評価しつつも、台本を無視して暴走する彼に手を焼く番組ディレクターのパティ。そんなある日、いつも通り生放送が始まる。突然、銃を持った若者が乱入、リーを人質にして番組を乗っ取ってしまう。番組が推奨する株に投資して全財産を失ったと主張するのだった。興奮する犯人を必死でなだめようとするリー、それを生中継するテレビ…。ウォール街の深い闇が暴かれていく。

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世紀末的な自由を求める男たち
ファイト・クラブ
監督:デヴィッド・フィンチャー   1999年・米 139分

地位も収入もある主人公は、いわゆるヤング・エグゼクティブ。しかし、彼の生活は空虚だった。ある日、謎の男に誘われるまま、「ファイト・クラブ」という秘密組織の会員になる。そこは男同士が素手の拳で闘うという、壮絶で危険な空間だった。血しぶきが飛び散る暴力シーンの連続。殴り合うことでのみ、己の自由を確かめ、感じ、実践できる唯ひとつの場と、そこに身を投じる男たちの世紀末的カオス。

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立場は人を簡単に変えてしまう
es[エス]
監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル  2001年・独 119分

スタンフォード大学心理学部が、ある実験のために被験者を公募した。集まった20人ほどの被験者は無作為に「看守役」と「囚人役」に分けられ、模擬刑務所に配置される。それぞれの役を演じるだけの簡単なアルバイト。誰もがそう考えていた。しかし、実験が進むうち、「看守役」の攻撃的な振る舞いはどんどんエスカレートし、「囚人役」は卑屈に服従するだけになっていく。やがて単なる実験の枠組みを越え、誰にも制御不能の状態に陥っていくのだった。肩書きや役割が人間の行動に与える影響を調べる実験だったが、何人かの「囚人役」が重度の情緒不安定に陥り、2週間の予定だったこの実験は6日で中止に。以後、倫理的に問題が大きいとして、この種の実験は全面的に禁止されることに。

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「みんないっしょ」の陶酔感
THE WAVE ウェイヴ
監督:デニス・ガンゼル  2008年・独 108分

ライナー・ベンガーはドイツの高校教師。「独裁制」をテーマにした特別授業を受け持つことになった。テキストがあるわけではなく、生徒はもちろん、自分も独裁制を経験していない。そこで彼は、全体主義とはどんなものか、生徒たちに体験してもらうことを思いつく。自らが指導者となり、単純明快な規律とスローガンを掲げ、集団の結束を説く。集団を率いる指導者と率いられる大衆、それは単なる役割分担のはずだった。その集団は「ウェイヴ」と命名され、束縛されることが嫌いな生徒たちが、いつの間にか相互監視しながら、自発的に団結を強めていくように…。

映画はドイツを舞台にし、ヒトラーが台頭した国だから「さもありなん」と思わせるが、実は1967年、「自由の国」アメリカの高校で起きた実在の事件が下敷きになっている。ファシズムをシミュレーションする特別授業が招いた衝撃。国民性とは無関係に、人は情報を鵜呑みにし、論理的思考より情緒に流されやすいものであることがわかる。たとえば2001年、アフガニスタン攻撃を進める共和党のブッシュ政権に対し、民主党のゴアは率先してこれを支持。アメリカの二大政党制が戦争を阻止し得たことは一度もないのである。まして「和」を大切にし、自分の考えや感情を殺すことに慣れ、排他的で単一民族や模範的家庭という共同幻想を抱きがちな国民なら、なおさら肝に銘ずるべきであろう。サムライ○○やワンチームの背後にある「みんないっしょ」の危険性を。

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ファシズムが人々を魅了する理由
帰ってきたヒトラー
監督:ダーヴィト・ヴネント   2015年・独 116分

死んだアドルフ・ヒトラーが、なぜか2014年のベルリンによみがえった。ヒトラーのモノマネ上手と勘違いしたディレクターがスカウトし、芸人としてテレビに出演。もしヒトラーが生きていたら、きっとこんな感じだろうと思わせるような言葉遣いで現代ドイツをメッタ斬り。その「芸」の高さでたちまち大ブレイク。意外にも真理をズバリと突くような内容が、社会不安の中に生きる現代人の心をわしづかみに…。いつしか再び大衆の支持を集めてしまう。

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