映画:暴力
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暴 力

映画黎明期の傑作
イントレランス
監督:D・W・グリフィス  1916年・米 178分

バビロン王国崩壊の「古代篇」、イエス・キリストの「ユダヤ篇」、フランスの聖バーソロミュー虐殺の「中世篇」、労働争議で失職した青年と恋人の「現代篇」が、同時進行の四つのストーリーとして展開される。今では珍しくもなんともない演出技法だが、グリフィスによる画期的な映像技法であった。時代も状況も異なる、互いに何の関連もなさそうな四つのストーリーを結びつけるのは、題名にもなっているイントレランス(不寛容)。人間の、そして人間がつくる社会の不寛容こそが、あらゆる悲劇の源である。それこそが、グリフィスのメッセージなのだろう。100年前の映像とは思えない鮮明さ。1989年には、SFXの名手リチャード・エドランドのオープニングとフルオーケストラによる音楽が付け加えられた。映画の父と呼ばれるD・W・グリフィスの代表作、無声映画の傑作というだけでなく、映画史を語る上で避けて通れない文化遺産でもある。

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表象不可能の歴史。“絶滅”のすべてが生動する。
SHOAH ショア
監督:クロード・ランズマン  1985年・仏/英 567分

第二次世界大戦下、約600万人ものユダヤ人がナチスにより計画的に虐殺された“絶滅作戦”を奇跡的に生きのびたユダヤ人、加害者の元ナチス・メンバー、目撃者たる収容所周辺の村人たちによる証言だけで構成した、9時間におよぶ衝撃作である。本作には、涙を誘う感傷的な音楽も、惨状をつぶさに伝える過去の記録フィルムの一片もはさまれていない。ましてや再現ドラマやCGを駆使した図解などもない。そこにあるのは、この悲劇を体験した者だけが知りうる記憶の記録だけだ。まず見ることから始めよう。私たちは、彼らの言葉と表情からすべてを知るだろう。

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ホロコーストを語るためには…
夜と霧
監督:アラン・レネ  1955年・仏 32分

第二次大戦中にナチがアウシュヴィッツ絶滅収容所でおこなった大量虐殺を告発したドキュメンタリー。モノクロ写真やニュース・フィルムに撮られた当時の生々しい映像―絨毯にするために山のよう積まれた髪の毛、没収した眼鏡や貴金属、靴、鞄、そして戦後、ブルドーザーで処理される死体の山。歴史的事実の記録であるが、過去のモノクロに、廃墟(現在は世界遺産として保存されている)現代のカラー画像が対比される、モンタージュ構成の傑作。冷徹で美しいカメラワーク、抑えたナレーションの詩的なテクスト、そして音楽。この作品を見ずして、ホロコーストを語ることはできない。

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戦争の現実を暴く衝撃のドキュメンタリー
ジェノサイド ナチスの虐殺―ホロコーストの真実
監督:アーノルド・シュワルツマン  1981年・米 83分

第二次世界大戦の悲劇は、ヒトラー率いるナチス・ドイツのユダヤ人大虐殺によってクライマックスを迎えた。強制収容所の「最終的解決」において、囚人はあたかも物体のごとく無造作に穴に埋められブルドーザーで処理されていく。あまりにリアルな光景を、名優オーソン・ウェルズと大女優エリザベス・テイラーが切々と語る。(商品説明から)

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戦火を生きのびたピアニスト
戦場のピアニスト
監督:ロマン・ポランスキー  2002年・仏/独/ポーランド/英 148分

1939年9月1日、ドイツ海軍の戦艦シュレスヴィヒ・ホルシュタインがバルト海に面するポーランドの都市ヴェステルプラッテに対して艦砲射撃を開始。ここに第二次世界大戦の火ぶたが切られることになった。同じ日、ウワディクはワルシャワのラジオ局でショパンを演奏していた。街はあっという間に占領され、ユダヤ人はゲットーに強制移住させられるなどの迫害が始まる。家族もろとも家を追われるが、うまくゲットー内のカフェでピアノ弾きの職を得ることができたウワディク。様々な迫害に遭いながらも、どうにか生活していたのだが、やがてユダヤ人を収容所に移送する列車に一家そろって乗せられることに。列車に乗り込もうとしていたその時、彼を引き留める一人の男がいた。

戦火を生きのびた実在のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの回想録をもとに、ゲットー体験を有するロマン・ポランスキーが静かに、しかし力強く描いた感動のドラマ。第55回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞している。

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子どもの権利の源泉ここにあり
コルチャック先生
監督:アンジェイ・ワイダ  1990年・ポーランド/独 118分

ヤヌシュ・コルチャックは小児科医、教師、孤児院経営者、児童文学作家、ラジオのパーソナリティ等々、マルチタレントのユダヤ系ポーランド人である。本名、ヘンリク・ゴールドシュミット。ワルシャワに、第一次大戦で親を亡くしたユダヤ人の孤児のためのドム・シェロト、ポーランド人の孤児のためのナシュ・ドム、二つの孤児院を設立、子どもも大人と同じようにその人格が尊重されねばならないというの考えをもとに、これらを経営した。この思想は、後の子どもの権利条約に大きく影響したと考えられている。

ナチスのユダヤ人政策により、1942年、ユダヤ人の子どもたちはトレブリンカ絶滅収容所に移送されることになった。著名人であったコルチャックの助命嘆願が世界から届いていたが、「自分だけが助かるわけにはいかない」と、彼の児童文学作品に登場するマチウシ一世王の旗を掲げ、子どもたちの先頭に立ってウムシュラーグ・プラッツの停車場に向かった。彼らの行進は実に堂々としたものだったという。トレブリンカの跡地には、ガス室に消えた犠牲者らの出身の町や村の名を記した石が置かれているだけだ。その中でただ一つ、人名が刻まれた碑がある。ヤヌシュ・コルチャックである。

ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダが、孤軍奮闘するコルチャックという人物とその崇高な精神を感動的に描いた作品。

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一人の人間を救う者は…
シンドラーのリスト
監督:スティーヴン・スピルバーグ  1990年・米 195分

オーストリアの実業家オスカー・シンドラー。彼はユダヤ人をナチスによる虐殺から救おうと、自分の工場(現在、博物館になっており見学可)の労働力にするという名目で、プワシュフ収容所長アモン・ゲートと取り引きするなど、あの手この手を駆使、1200人もの命を救うことになった。

戦後、オスカー・シンドラーは事業に失敗し、決して恵まれた後半生ではなかった。彼の功績も忘れ去られていたが、1982年、オーストラリアの作家トーマス・キニーリーのノンフィクション小説『シンドラーの箱船』が出版され、ブッカー賞を受賞。本作は、それをユダヤ系米国人のスピルバーグが映画化したものである。ホロコーストにまつわるドキュメンタリー映像を良く知る者にとっては、やや情緒的過ぎると感ずるかもしれないが、演出、美術、音楽、どれをとってもドラマとしては見事な作品になっている。

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しては、強いてはならない選択
ソフィーの選択
監督:アラン・J・パクラ  1982年・米 151分

第二次大戦後のニューヨーク。作家志望の青年スティンゴが出会ったのは、アウシュヴィッツを生き延びたポーランド人女性ソフィー。彼女には誰にも語ることの出来ない過去があった。彼女とユダヤ人の恋人ネイサンの過酷な愛のドラマが、スティンゴによって語られる。メリル・ストリープが、反ユダヤ主義の環境の中でナチに人生を踏みにじられた女性を熱演。

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禁じられた友情。それは、なぜ?
縞模様のパジャマの少年
監督:マーク・ハーマン  2008年・英/米 95分

第二次大戦下のドイツ。八歳の少年ブルーノは、ナチスの将校である父親の任務のため、住みなれたベルリンを離れ、田舎の屋敷に移り住むことに。友だちもなく、都会育ちのブルーノにとって、そこは退屈な場でしかなかった。ある日、林を抜けて有刺鉄線に囲まれたところに辿り着く。どうやら父親が行くことを禁じていた「農場」らしい。向こう側にいた縞模様の「パジャマ」を着た少年シュムエルと出会い、有刺鉄線を挟んで会話するのが二人の日課となり、友情が芽生えていくのだが…。

無邪気な少年の目を通したホロコーストの悲劇を描いたジョン・ボインの世界的ベストセラーの映画化。強制収容所を管理運営するナチス将校を父親に持つ少年が、収容所が何かを知らぬまま、偶然出会ったユダヤ人少年と鉄条網越しの友情を築いていく。感動的でもあり、衝撃的でもある、二面性を持った人間ドラマ。

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生きるために必要だったもうひとつの名
ふたつの名前を持つ少年
監督:ペペ・ダンカート  2013年・独/仏 108分

カ1942年のポーランド。八歳の少年スルリックは、父親の「絶対に生きのびろ」という言葉を胸に、ただひとりでワルシャワ・ゲットー(ユダヤ人強制居住区)を脱出。ユダヤ人だと気づかれぬよう、ポーランド名ユレクを名乗り、森の中で出会った孤児の集団と行動をともにする。しかしドイツ軍に追われ、またひとりになった彼は、ついに飢えと寒さに力尽き、倒れてしまった。運良く、ひとり暮らしのヤンチック夫人に救われ、ひとりでも生きのびられるよう、ポーランド孤児としての架空の身の上話とキリスト教の作法を教え込まれるものの、そこにもゲシュタポが現われる。再び強いられる過酷な放浪…。

ゲットーからたったひとりで脱出した八歳の少年が、ナチスの執拗なユダヤ人狩りから懸命に逃げ延びる壮絶なサバイバル行。ウーリー・オルレブの、実話をもとにした児童文学『走れ、走って逃げろ』の映画化である。

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実在のラブ・ストーリー
あの日 あの時 愛の記憶
監督:アンナ・ジャスティス  2011年・独 111分

1976年のニューヨーク。ユダヤ系のハンナは戦後、ドイツから渡ってきた。今は夫と娘とごく普通の日常生活を過ごしている。ある日、死んだとばかり思っていた昔の恋人の声がテレビから流れてきたので驚いてしまう。それは戦争終結の前年のこと。政治犯のトマシュとアウシュヴィッツで出会い、二人は恋に落ちた。彼はレジスタンス活動に加わっており、収容所内を秘密裏に撮影したフィルムを持って脱走するという危険な任務が待っていた。準備が進む中、彼は周囲の反対にもかかわらず、ハンナも一緒に連れ出そうとするが…。30年後に運命の再会を果たす二人。奇跡の実話にもとづいたドラマである。

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平凡な男の大きな犯罪
スペシャリスト/自覚なき殺戮者
監督:エイアル・シヴァン  1999年・仏/独/ ベルギー/オーストリア/イスラエル 128分

ナチス親衛隊中佐で、ユダヤ人移送の専門家(スペシャリスト)と呼ばれた男、アドルフ・アイヒマン。イスラエルの秘密警察(モサド)により、潜伏先のアルゼンチンで捕らえられ、1961年、全世界が注目する中で裁判にかけられる。20世紀最大の犯罪のひとつ、ユダヤ人絶滅作戦の共犯者として、彼は絞首刑に処せられた。エルサレムでの裁判の記録映像をもとにしたドキュメンタリー作品。

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誰もが内包する危険…
ハンナ・アーレント
監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ  2012年・独/ルクセンブルク/仏 114分

ユダヤ人哲学者のハンナ・アーレント。ホロコーストを生き延びた彼女は、エルサレムでナチスの重要戦犯であるアドルフ・アイヒマンの裁判を傍聴する。アイヒマンは、何百万人ものユダヤ人を収容所に移送する指揮を執った人物だが、アーレントは彼を、思考停止した凡庸な小役人、巨悪を構成する小さな歯車でしかなかったに過ぎず、さらにユダヤ人自治組織の指導者がアイヒマンに協力していたことにも言及した。それが『イェルサレムのアイヒマン』である。そのことにより、ユダヤ人社会からの激しいバッシングを浴びるのだが、彼女は思考停止を免罪し、「上の命令に従うこと」を正当化しているのではない。小心者の小さな罪が大きな悲劇をもたらすことの危険性、それを私たちの誰もが内包していることに警鐘を鳴らしているのである。アーレントの孤高の戦いを通して、波乱の人生と信念に迫る。さすがはトロッタ監督、そして主演のバルバラ・スコヴァだ。

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トリックの本質を見抜くには
否定と肯定
監督:ミック・ジャクソン  2016年・英/米 110分

米国エモリー大学で教鞭をとる歴史学者のデボラ・E・リップシュタットは、1996年、自著『ホロコーストの真実』の中で批判したホロコースト否定論者のデイヴィッド・アーヴィングから名誉毀損の訴えを起こされる。裁判で争うことを決めたものの、英国の法廷では、立証責任は訴えを起こされた側が負わなければならない。歴史を歪曲する荒唐無稽な主張とはいえ、それを打ち砕くのは決して容易なことではなかった。弁護団からも証言しないよう求められ、窮地に追い込まれてしまう。歴史的事実と表現の自由のせめぎ合い。そう思わせるところにこそ、否定論者のトリックの本質がある。虚偽を広めることは、表現の自由ではない。むしろ表現の自由を否定する行為である。リップシュタットの回顧録をもとにした実録法廷サスペンス。

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遙かなる過酷な家路
異端の鳥
監督:ヴァーツラフ・マルホウル  2019年・チェコ/ウクライナ/スロヴァキア 169分

少年はホロコーストを逃れ、一人暮らしの叔母を頼って田舎にやってきた。つかの間の安堵も、その叔母が急死。身寄りをなくした少年は、生きのびるために一人さまよう。しかし、行った先々で排除の憂き目に遭う。共同体にとって、少年は「異物」でしかなかった。目を背けたくなるような虐待…。

イェジ・コシンスキーによる同名小説の映画化。差別と暴力、少年の過酷な運命が、全編モノクロで描かれることによって冷たさを増している。

公式サイトへリンクしています。

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真の平和とは…。私は何をしたのか…
ミュンヘン
監督:スティーヴン・スピルバーグ   2005年・米 164分

1972年9月5日未明、ミュンヘン五輪開催中、パレスチナの武装集団「黒い九月」がイスラエル選手村を襲撃し、人質11人すべてが犠牲になる悲劇が起きた。これを対し、イスラエル政府は犠牲者の数と同じ11人のパレスチナ幹部の暗殺を、諜報機関モサドに命ずる。リーダーのアヴナーは、文書偽造のハンス、車輌専門のスティーヴ、爆弾製造のロバート、事後処理を担当するカールとともに、5人の精鋭部隊は欧州各地に潜む標的を抹殺すべく、行動を開始する。

1972年のミュンヘン五輪大会で起きたパレスチナ・ゲリラによるイスラエル選手殺害事件と、その後のイスラエル暗殺部隊による報復の過程を、暗殺部隊の元メンバーの告白をもとに、スティーヴン・スピルバーグ監督がリアルかつ緊迫感のあるタッチで描く問題作。

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そこは「記憶の場所」
キリング・フィールド
監督:ローランド・ジョフィ  1984年・英 141分

ポル・ポト政権下の内乱渦巻く1970年代のカンボジア。アメリカ人ジャーナリストと現地人助手の友情を軸に、当時の混乱と悲劇をみごとに描いたドラマ。原作が、後にピューリッツァ賞を受賞したシドニー・シャンバーグのノンフィクションだけあって、前半の首都プノンペンの混乱ぶりは緊迫感あふれるもの。それ以上に圧倒的なのが、強制労働に4年間従事させられ、命からがら脱出、クメール・ルージュによる凄惨な戦禍の大地を彷徨する助手ディス・プランの冒険譚である。配役のハイン・S・ニョールは医師で、本職の俳優ではなかったが、その見事な演技により、アカデミー助演男優賞及びゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞した。ストーリーや画面に登場する割合からも、本来の主役はニョールの方だと思うのだが、映画界のアジア人蔑視のせいだと感ずるのは私だけであろうか。

カンボジアの各地に「キリング・フィールド」と呼ばれる場所が残っている。そこは多数のカンボジア人が処刑・殺害された「記憶の場所」である。

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南部の根強い人種差別と闘う
ミシシッピー・バーニング
監督:アラン・パーカー  1988年・米 126分

1964年、黒人差別が根強いアメリカ南部のミシシッピー州で公民権運動家が行方を絶った。現地にやって来た二人のFBI捜査官は、人種差別の壁に阻まられながも、事件の解明に乗り出す。社会派のアラン・パーカーだけあって、実話をもとに、人種問題とサスペンスあふれる捜査劇を巧みに織り混ぜ、緊張感に満ちたドラマに仕立てている。

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奇跡の逸話
ホテル・ルワンダ
監督:テリー・ジョージ  2004年・英/伊/南ア 122分

ドイツの植民地だったルワンダ。第一次大戦後はベルギーの委任統治下に。少数派のツチを中間に据え、多数派のフツを支配するという間接統治である。1962年に独立を果たすが、二つの民族間対立は、やがて内戦状態へ。94年、ようやく和平交渉がまとまるかに見えた矢先、フツ出身の大統領が暗殺される事件が起きる。ツチの仕業だとして、フツによるツチ襲撃が発生、3ヶ月で100万人が虐殺される事態に。ベルギー系の高級ホテル、ミル・コリンで働く支配人のポールは、暗闇に妻子や近所の人たちが身を潜めているのを目にする。彼はフツだが、妻はツチ。襲撃を避けるため、ミル・コリンに避難することにした。その後、命からがら逃げのびてきた人々が続々とホテルに集まってくる…。

無策の欧米諸国や国連。被害が拡大する中、危険を顧みず、1200人もの人々をホテルに収容。持ち前の機転と交渉力で人々の命を守り抜いた一人のホテルマンを描いた、実話にもとづくドラマ。

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ただ傍観するだけだった…
ルワンダの涙
監督:マイケル・ケイトン=ジョーンズ  2005年・英/独 115分

海外青年協力隊の英語教師としてルワンダにやってきた英国人青年。赴任先は英国のカトリック教会が運営する技術専門学校だった。多数派フツと少数派ツチの間の緊張が高まり、国連治安維持軍が監視に当たっている。学校にもベルギーの国連軍兵士が駐留していた。ある日、フツ出身の大統領が乗る飛行機が撃墜され、ツチの仕業と見なす多数派のフツがツチの虐殺を始める。生徒を保護するため、国連兵士が学校を囲み、何千人という難民の避難所となっていくのだが…。

現地でBBCの記者として取材していたデヴィッド・ベルトンが、かつてこの地域を支配したヨーロッパ人が、凄惨な虐殺を目撃しながら、くい止めるために行動を起こすことも出来ず、ただ傍観するだけだった自責と悔恨を基底に原案を書き、マイケル・ケイトン=ジョーンズが映画化した問題作。

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共に生きるとは何か
神々と男たち
監督:グザヴィエ・ボーヴォワ  2010年・仏 120分

1990年代、アルジェリアの山の中の小さな村にあるカトリックの修道院。修道士たちは厳しい戒律を守りながら、質素で穏やかな共同生活をおくっていた。イスラム教圏ではあるが、地元のイスラム教徒たちとも良好な関係を築き、医療を求める住民が日々訪れる。そうした中、激しさを増す対立、周囲でもイスラム過激派集団によるテロの犠牲者が出始めるのだった。修道院では、避難すべきか、村にとどまるべきか、意見が分かれ、修道院長にも結論が出せないでいる中、フランス政府からの帰国命令が来る。

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旧ユーゴ、民族浄化の悲劇
サラエボの花
監督:ヤスミラ・ジュバニッチ
2006年・ボスニア・ヘルツェゴヴィナ/オーストリア/独/クロアチア 95分

ボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエボで、12歳の娘と暮らしながら集団セラピーに通うシングルマザー。生活は苦しく、子どもがいることを隠してナイトクラブで深夜まで働く日々が続く。ある日、父が殉教者であることを誇りにしている娘が、その父の最期がどんなであったかをたずねる。しかし、話そうとしない母。第二次大戦後、ヨーロッパで最悪の紛争となったボスニア・ヘルツェゴヴィナの内戦の傷痕に苦しむ母娘の、その再生と希望の物語を描く衝撃と感動の人間ドラマ。

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あなたにとって、まもりたいものは何?
最愛の大地
監督:アンジェリーナ・ジョリー  2011年・米 127分

1992年、多民族・多言語・多宗教・多文化国家ユーゴスラビアが崩壊する過程で、様々な対立が突如表面化、ボスニア・ヘルツェゴビナでは緊張が急速に高まった。子どもが生まれたばかりの姉とアパート暮らしをするモスレムの画家アイラは、恋人でセルビア系の警官ダニエルとのデート中に爆弾テロに遭う。二人は危うく難を逃れるが、多くの死傷者を出す大惨事となる。四ヵ月後、アイラたちモスレム住民はセルビア兵士によって強制連行され、男たちはその場で射殺、女たちは兵士の宿舎に連れて行かれ、繰り返しレイプされることに。アイラもレイプされそうになるが、ダニエルによって窮地を脱する。彼はセルビア系ボスニア軍の将校になっていた。ダニエルの庇護でどうにか最悪の事態を免れるアイラだったが…。

アンジェリーナ・ジョリーが監督として、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争をテーマに、憎しみが渦巻く戦争の不条理に翻弄されるカップルの運命を描く長編デビュー作。

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勇気、それを受けとめる社会
コーリング・ザ・ゴースト ~沈黙を破ったボスニア女性たち
監督:マンディ・ジェイコブソン、カルメン・イェリンチッチ  1996年・米/クロアチア 63分

ボスニア紛争時、地方都市プリエドルに住むヤドランカとヌスレタ、二人のモスレムは突然、北部のオマルスカ鉱山に設けられたセルビア軍の捕虜収容所へ連行された。そこでは日中は拷問を受ける男たちの声が絶えず、夜は女性へのレイプがくり返され、「死のキャンプ」と形容される恐ろしい場所だった。レイプを戦争犯罪として裁く史上初のハーグ国際法廷や、収容所の生々しい映像から、人道に対する罪を明らかにした迫真の作品。

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正義の存在を信じたい
戦場のレイプ
監督:シェリー・セイウェル  1996年・カナダ 59分

旧ユーゴ内戦のさなか、ボスニアのオマースカ強制収容所でくり広げられた集団レイプ。歴史の闇の中で、戦争手段と化したレイプが初めて裁かれる。ハーグ国際刑事裁判所での被害者らの勇敢な証言が新たな歴史を築く。

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戦争犯罪者を、どこまでも追う
カルラのリスト
監督:マルセル・シュプバッハ  2006年/スイス 95分

ユーゴスラビアが解体する過程で起きた大規模な民族間紛争。利権を追い求めるリーダーたちが繰りかえした重大な国際人権法違反により、多くの犠牲者が生み出された。その戦争犯罪を裁くため、国連は旧ユーゴ国際刑事法廷(ICTY)をアドホックに設置。今なお逃亡を続ける戦争犯罪人たちを追って、世界中を飛び回り、各国首脳と緊迫の交渉を繰りひろげる辣腕の女性検事、カルラ・デル・ポンテ。格好いいとは、まさにこういう人物である。2002年、ICTYやルワンダ国際刑事法廷を発展させる形で、常設の国際法廷である国際刑事裁判所(ICC)が作られた。慰安婦問題の責任追及を恐れた日本の加入は遅れに遅れ、2007年、ようやく105番目の国として仲間入りを果たすことになったのである。このドキュメンタリーで、国際刑事法廷の仕事ぶりを見てほしい。

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知られざるウクライナ現代史の背景
ウクライナ・オン・ファイヤー
監督:イーゴリ・ロパトノク  2016年・豪/加/独/英/伊/米 95分

西ヨーロッパとロシアの境に位置するウクライナ。その豊かな穀倉地帯と地下資源、黒海へのアクセスを支配すべく、何世紀にもわたる綱引きが諸国家によって繰りひろげられてきた。

2014年のマイダン虐殺が流血の民衆蜂起を招き、ロシアが背後で糸を引くヴィクトル・ヤヌコビッチ大統領が追放された。西側メディアは、そのような描き方をしている。それは事実なのだろうか。この映像は、2004年のオレンジ革命、2014年の蜂起、民主的に選出されたヤヌコビッチ政権を暴力的に転覆させるに至る、地域間に横たわる深い分裂の溝を、歴史的な視点から見せてくれる。

西側メディアが「民衆による革命」と持ち上げたのは、実はウクライナのナショナリスト集団と米国務省の共作になるシナリオにもとづくクーデターであった。調査ジャーナリストのロバート・パリーは、80年代以降、米国が資金提供する政治NGOやメディア企業が、CIAに取って代わり、海外で米国の地政学的政策を宣伝する手法を明らかにしている。 プロデューサーのオリヴァー・ストーンは、ヤヌコビッチ前大統領と内務大臣のヴィタリー・ザハルチェンコとの直接インタビューを通して、裏に隠された事実をあきらかにする。

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暴力と憎しみの連鎖から抜け出す難しさ
独裁者と小さな孫
監督:モフセン・マフマルバフ  2014年・グルジア/仏/英/独 119分

冷酷な大統領が支配する独裁国家でクーデターが起きた。大統領の家族たちは、いち早く国外へ脱出。ところが、幼い孫だけは駄々をこね、大統領のもとに残ってしまう。やがて政権は完全に崩壊、大統領は小さな孫を抱え、素性を隠して過酷な逃避行を余儀なくされる。その過程で、自らが犯した罪の重さを理解していく様が、ユーモアをまじえながらも、辛辣に描かれる。混迷する社会において、暴力と憎しみの連鎖から抜け出すことの困難さ。そのことを、誰よりも良く知る、ヨーロッパで亡命生活を続けるイランの巨匠モフセン・マフマルバフが生み出した政治的寓話。

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深刻なテーマをインド的な楽しさに包んで
ボンベイ
監督:マニ・ラトナム  1995年・印 141分

セーカルという青年とシャイラーという女性の恋物語。しかし、彼の家はヒンドゥー教、彼女の家はイスラム教。二人の親は、それぞれ厳格なヒンドゥーとムスリムだから、結婚には両家が大反対。板挟みになった二人は逃げるように村を出て大都市ボンベイ(現在はムンバイ)で暮らしはじめる。折しもヒンドゥー至上主義とムスリムの対立が激化する中、孫を見ようと双方の親が訪ねてくるが、宗教対立は暴動にまで発展。なぜ対立するのか。それによって利を得るものは誰か。現代インドの問題をシリアスに描きながら、華麗な音楽と踊りで繰り広げられる壮大なエンターテインメントは、現代的なミュージカルというより、20世紀初頭に英国演劇界を席巻したパントマイムの流れをくんでいる。

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誇りと信念だけで銃に立ち向かった勇者たち
ホテル・ムンバイ
監督:アンソニー・マラス  2018年・豪/米/印 123分

無差別テロがインドのムンバイで起き、5つ星の最高級ホテルがテロリストたちに占拠されるという事態に。中には宿泊客と従業員あわせて500人以上が取り残されていた。テロリストに見つかり、次々に殺害されていく。警察の特殊部隊が到着するには数日を要するという絶望的な報せがホテル側に伝わった。外部からの助けを期待できない以上、自分らで宿泊客を守るしかない。あまりにも重い決断を下した従業員たちは、ホテルマンとしての誇りと信念を武器に、恐怖に立ち向かい、銃弾が飛び交う中、取り残された人々の誘導に奔走する。

2008年、ムンバイのタージマハル・ホテルで起きた衝撃の実話を映画化した群像劇。凄惨な殺戮を繰り返すテロリスト集団と対峙して、ひとりでも多くの宿泊客を救うために命がけで行動した誇り高きホテルマンたちによる奇跡の脱出劇を描いた作品。

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世界初のアフガン紹介ビデオ
'70年代アフガン 天上の足音
2002年・日本アフガニスタン協会 51分

このDVDは、内戦などの混乱で国土が破壊、荒廃する以前、1970年代にアフガニスタンで生活する人々の姿を描いている。映像は、70年代にアフガンを訪れた、日本の写真家、学術・文化関係者が撮影、録音した写真、音楽で構成した。私たちは、アフガニスタンがこの映像に描かれているような美しい山河と生活を、一日でも早く取り戻すことを願い、遙かなる思いを込めて、この映像を製作した。この作品を、復興を担う、アフガニスタンの「未来の子どもたち」に捧げる。(商品説明から)

首都カブール(11分)
天上の楽園 バーミヤン(15分)
遊牧民の生活(4分)
国技 ブズカシ(4分)
シルクロード沿いに遺跡を訪ねて(17分)

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西側世界で唯一の「民主共和国」時代の記録
もうひとつのアフガニスタン カーブル日記
監督:土本典昭  1985年・シネ・アソシエ 42分

内戦下のカーブルの市民生活―バザール、モスク、ユネスコに顕彰された識字運動、婦人の学習、英語塾など。近郊農村の生活と自衛風景。そして戦争孤児たちの生活。新しい祝日―革命記念日の20万市民の素顔などを写している。西側世界では唯一の「民主共和国」時代の記録である。(商品説明から)

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アフガニスタンの歴史と未来のために
在りし日のカーブル博物館
監督:土本典昭  1988年・シネ・アソシエ 30分

アフガニスタンの貌(かお)といわれたカーブル博物館は1993年に破壊された。カメラは88年当時の無傷の博物館の代表的文化財を撮影していた。ギリシャ・ローマなどの紀元前のヘレニズム文明の遺産、その神話の神々の像への憧憬と刺激から生まれたといわれる仏教彫刻‥ガンダーラ、バーミヤン、ショトラック美術など。92年のアフガニスタン民主共和国の崩壊以後、その七割が破壊され、略奪され、日本を始め海外に流出した。その返還運動も紹介している。カーブル博物館の文化財のフィルム記録は他に無い。(商品説明から)

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なにが見える?
アフガンの風景 I.II.III.
監督:監督:村瀬一志  ケイエムコンサルティングLLC 69分

いまや入国すら困難になったアフガニスタン。地上戦の生々しい傷が残る市街地、崩れかかったビル、貧しいながらも活気あるバザール、満身創痍でたたずむダールルアマーン宮殿。アガ・カーンの強大な力を示すセレナ・ホテルなど、荒れ果てたカブールの中に復興の兆しも見えたのだが…。

Ⅰ カブール(24分)
Ⅱ ダールルアマーン宮殿(23分)
Ⅲ 復興とアーガ・ハーン(22分)

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学ぶことが容易でない子どもたちが、世界には大勢いる
後藤健二 世界の学校シリーズ
 1.カブール  2.カンダハール
ケイエムコンサルティングLLC 21分

1.アフガニスタン・カブール
タリバンがいなくなって、生まれて初めて学校へ行く少女たち(14分)

2.アフガニスタン・カンダハール
いきいきと学ぶ子どもたち、教科書もノートも机すらなくても (7分)


戦争と貧困から子どもたちの命を救いたいと、中東を中心に紛争地域の取材を続ける後藤健二氏が、アフガニスタンで学ぶ子どもたちを記録した映像である。女子の通学を禁止していたタリバンがいなくなり、生まれて初めて学校というところへ行く少女たちの姿。カンダハールでは、教科書もノートも机ないのに、いきいきと学ぶ子どもたちの様子が眩しい。

同氏はシリアでイスラーム過激派のISに拘束され、2015年1月30日に殺害された。謹んでご冥福を祈りたい。

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戦争に翻弄された一人の教師とその家族の壮絶な半生
ヤカオランの春: あるアフガン家族の肖像
監督:川崎けい子  2004年・「ヤカオランの春」制作の会 83分

2003年春、パキスタンのアフガン難民キャンプ。アクバル(51歳)は、キャンプの学校で子どもたちにアフガニスタンの歴史や地理を教えて細々と暮らしを支えていた。しかし、拷問などで痛めつけられた身体は思うように動かず、目も少しずつ見えなくなりつつあった。これ以上教師を務めることは困難と悟ったアクバルは、ある日子どもたちに自分が生きてきた人生を語り始めた。それは、故郷で起こった衝撃の真実だった。(商品説明から)

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少女たちを守る壁、そして閉じ込める檻…
壁の中の少女たち
監督:川崎けい子  2007年・オフィススリーウェイ 59分

2006年秋、アフガニスタンの首都カブールに孤児院があった。そこでは7才から19才までの子どもたち30数人が暮らしていた。そのほとんどは少女たちだ。彼女たちは、内戦やアメリカ軍の攻撃、地雷、貧困ゆえの病気などさまざまなことから両親や父親を亡くしていた。

孤児院は、高くて固い壁に囲まれ、ひとつしかないドアにはいつも鍵がかかっている。子どもたちは、公立学校に通うとき以外、めったに壁の外に出ない。壁の外は危険に満ちているからだ。カブールでは、自爆テロや誘拐が頻発していた。いつどこで起こるかわからないテロや誘拐から身を守るために、子どもも大人も外出を避けるようになったのだ。

子どもたちは、部屋の中で勉強し、体操し、歌い、踊り、遊ぶ。外の危険から守ってくれる壁があるからこその平穏な日常生活。しかし、壁には、もうひとつの側面があった。それは、人を閉じ込める“檻”の側面だった。 (商品説明から)

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少女は生き延びるため少年になった
アフガン零年
監督:セディク・バルマク  2003年・アフガニスタン/日/アイルランド 82分

長い内戦の末、タリバンが政権の座についたアフガニスタン。イスラムの教えを厳格に守ろうとするタリバン政権下では、女性は身内の男性の同伴なしには外出が許されない。生計を支える男たちを全員戦争で失い、祖母と母親、そして12歳の少女の三人だけになってしまった一家では、外出も出来ず生活の糧を失う。やむなく、母親は少女を男の子に変装させて働かせることを決意。露見の恐怖に怯える少女をなだめ、おさげ髪をバッサリと切り、亡き父の戦友だったミルク屋に働きに出すのだが…。

2001年のタリバン政権崩壊後に制作された最初の映画である。撮影機材などのハード面は、日本のNHKが全面的に支援。タリバン政権下のアフガニスタンを舞台に、女性の置かれた過酷な状況を切実に描いた人間ドラマである。実話をヒントに、働き手を失った一家を支えるために少年に成りすまして働く少女の姿を通して、アフガニスタンの過酷な現実を描く。主人公を演じたマリナは、内戦で二人の姉を失い、五歳の頃からストリートチルドレンとして生き延びてきた経歴の持ち主。

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アフガニスタンと日本の大学の共働で生まれた映像
アフガン・ドキュメント
2005年・カブール大学芸術学部、天理大学 78分

本作「カブール・トライアングル」は、カブール大学芸術学部と天理大学との共働により、紛争国における市井の人々の生きる糧を描いた「生計を立てる人々」、現代アフガン女性の自立を様々な職業から見る「刻の中の女性」、男性社会に生きる女性の苦しみを描いた「偽装結婚の果て」の3つのオムニバス作品によって、アフガニスタンの現状を描いている。/p>

エピソード1 生計を立てる人々(28分) 監督:ムハマド・アクバル・サラム
エピソード2 刻の中の女性(30分) 監督:ムサ・ラドマニッシュ
エピソード3 偽装結婚の果て(20分) 監督:A.F.ザダ

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子供たちは、大人がつくった世界で生きている
子供の情景
監督:ハナ・マフマルバフ  2007年・イラン/仏 81分

アフガニスタンのバーミヤン。少年アッバスに感化されて、自分も学校に行ってみたくなった6歳の少女バクタイ。そのためには鉛筆とノートが必要と教えられ、そのお金を作るため、街に卵を売りにいく。やっとの思いでノートだけは手に入れたバクタイは、アッバスと意気揚々と学校に向かうのだが…。

19歳のハナ・マフマルバフが、テロや戦争が絶えないアフガニスタンを舞台に、幼い子供たちの日常を通して、彼らの目の前で日夜繰り返される暴力が彼らに及ぼしている影響を寓話的かつ鮮烈に描き出す。

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米軍協力者たちの運命 ― イラク・アフガニスタン ―
監督:アンドレス・カバイェロ、ソフィアン・カーン  2018年・米 56分

祖国の復興に役立ちたいとイラクやアフガニスタンの駐留米軍に協力してきた通訳者たちが、米軍撤退、そしてタリバンの復権に伴い生命が脅かされている。彼らは、イスラム過激派により「裏切り者」と見なされ、報復の標的になっているのだ。顔を隠して、家族で居場所を転々とする者や、難民ボートでヨーロッパへ向かう途中に船が難破し、妻や娘を失った者もいる。アメリカに協力したがゆえに、祖国を追われ、報復の不安に怯えながら、苦しまなければならない彼らの運命を長期取材で追いかけたドキュメンタリー映画。彼らの安全をアメリカはどのように確保するのか。それとも見棄てるのか。その責任が厳しく問われている。

WEBリンク:アジアンドキュメンタリーズ

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タリバン ファイブ
監督:ジャン・バティスト・ルノー  2021年・仏 60分

タリバンがアフガニスタンを奪還した今、彼らの政権はどのようなものになるのだろうか。“筋金入り”と称される5人のタリバン指導者らは、2001年のアメリカによる侵攻で捕らえられ、「無実のため起訴できず、危険すぎて解放もできない」と13年に渡りグアンタナモ収容所で拘束され、人質になった米兵との交換で解放された。本作では、「タリバンファイブ」の一人、ムハンマド・ナビ・オマリ氏への前例のない独占インタビューをはじめ、フランソワ・オランド前フランス大統領や、元米陸軍大将でCIA長官もつとめたデビッド・ペトレイアス氏、タリバンの元大臣など、過去20年間の多くの主要な関係者の証言から、今後、彼らがどのような政権運営に乗り出すのか、また、これまでの西側諸国によるアフガニスタンへの介入について、その矛盾や問題点を浮き彫りにしていく。

WEBリンク:アジアンドキュメンタリーズ

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アフガニスタンの亡霊
監督:ジュリアン・シャー  2021年・カナダ 90分

タリバン政権を攻撃する軍事作戦の名は“不朽の自由”。アメリカを中心とする西側諸国は、2001年に民主主義、自由、女性の権利を約束してアフガニスタンへ侵攻した。しかし、それによって何十万人もの人々が命を落としたことも事実だった。誰もが“闇の勢力”を押しのけているように感じていた、というその感覚は、どこから来ていたのだろうか。やがて蔓延していく汚職と虐待。そして、アフガニスタンの国民は分断されていく。一体どこで、間違いを犯してしまったのか。本作は、カナダ人ジャーナリストの視点で、アフガニスタンが辿った混迷を振り返りながら、なぜ多くの市民が怯えながら生活しなければならないのか、なぜ数えきれない犠牲を強いられてきたのかについて考える。

WEBリンク:アジアンドキュメンタリーズ

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どんな場所でも、どんな夜でも、かならず朝は来る
国境の夜想曲
監督:ジャンフランコ・ロージ  2020年・伊/仏/独 100分

紛争、圧政、テロに翻弄されてきたイラク、シリア、レバノン、クルディスタンの国境地帯を、三年にわたる旅を続けながら撮り上げたドキュメンタリー。理不尽かつ凄惨な暴力による深い心の傷を抱えながらも静かに生きる“ふつうの人々”の日常を、字幕やナレーションによる解説を排し、静謐な映像で淡々と映し出す。

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因習の呪縛から解き放たれる日はいつ?
母たちの村
監督:ウスマン・センベーヌ  2004年・仏/セネガル 124分

コレという名の女性が住む西アフリカのとある村。ある日、彼女のもとへ四人の少女がやって来る。古くから伝わる女子割礼を拒否して逃げ出し、コレに保護を求めるのだった。他の女性と同様、自身も割礼を経験し、その後遺症に苦しんできたコレ。七年前には、娘のアムサトゥには割礼をさせないという選択をしており、彼女なら自分たちを護ってくれると、少女たちはすがる思いで逃げ込んできたのだ。少女たちの保護を決意したコレだったが、伝統に真っ向から逆らうことに、村は大混乱になる。

ウスマン・センベーヌが、アフリカの各地に今も残る女子割礼(女性器切除)という因習をめぐり、ある村の騒動を通して描いたアフリカ社会が抱える問題を描く。

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手にした幸運を勇気に変えて
デザート・フラワー
監督:シェリー・ホーマン  2009年・独/オーストリア/仏 127分

スーパーモデル、ワリス・ディリー。ソマリアの貧しい遊牧民の家に生まれ、姉は女子割礼で亡くなり、弟は餓死。13歳のとき、父親に無理やり結婚をさせられそうになった彼女は家から逃げ出し、都会の親戚を頼って、やがてロンドンへと渡る。ホームレスの彼女を助けたのは、偶然出会ったマリリンという女性。そこに住まわせてもらい、ハンバーガー店のアルバイトをしていたところ、一流ファッションカメラマンに見出され、モデルとして頭角を現わしていくが…。

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社会が敵、常識が敵
告発の行方
監督:ジョナサン・カプラン  1988年・米 110分

場末の酒場で起きたレイプ事件。被害女性は酒に酔っており、被告側は同意があったと主張。勝ち目がないと言われながらも、裁判を引き受けた女性検事補は調査を開始するが、原告がマリファナを服用していた事が発覚し、裁判は絶対的不利に…。アメリカのみならず、世界中で避けて通れないレイプ犯罪に真っ向から挑んだ意欲作。

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人の存在は善、それとも悪
女を修理する男
監督:ティエリー・ミシェル  2015年・ベルギー/コンゴ/米 112分

2018年にノーベル平和賞を受賞したコンゴ民主共和国の婦人科医デニ・ムクウェゲの命懸けの活動を追ったドキュメンタリー。性暴力が後を絶たないコンゴ東部に、1998年、パンジー病院を設立したムクウェゲ。これまで四万人以上の被害者を治療し、暗殺未遂に遭いながらも、医療のみならず、心理的、司法的な手段を通して被害者を支援。被害者の衝撃的な証言、加害者の不処罰問題、女性団体の活動、背景にある鉱物資源を巡る争奪戦など、驚きの事実が描かれる。

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この子たちの手を放したら、僕は父親には戻れない
トガニ 幼き瞳の告発
監督:ファン・ドンヒョク  2011年・韓国 125分

ソウルから地方都市にやってきたカン・イノ。聴覚障害者学校に赴任した美術教師である。校舎ですれ違う子どもたちは、なぜか怯えた様子。ある日、女性の寮長が女の子の頭を洗濯機に押しつける現場を目撃し、口論の末、病院に入院させ、ひょんなことから知り合った人権センターのスタッフに連絡し、やがて判明したことは、子どもたちが、校長や教師たちから日常的に性的虐待を受けていたという事実。二人はマスコミを使って校長たちを告発、ようやく警察が動いて逮捕にこぎ着けたものの…。

聴覚障害者学校で起きた性的虐待事件の実話をもとにした小説を映画化した衝撃作。校長や教師たちによる虐待だけでなく、町の名士として支持する地域住民、警察や司法との癒着、金銭による示談で解決を図ろうとする社会のあり方、その結果の免責や軽い量刑など、弱者である障害を抱えた子どもたちを取り巻く厳しい環境が描かれる。この作品が公開されたことにより、当該事件があらためて浮上し、再審の結果、学校は閉鎖され、性犯罪に関する法改正が実現した。映画にも社会を変える力があることを示す作品である。

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関東大震災時にあった虐殺
福田村事件
監督:森達也  2023年・製作:福田村事件プロジェクト 137分

100年前の関東大震災時には、6000人にも上る朝鮮人、800人以上とも言われる中国人が虐殺された事はよく知られていますが、この映画は、その風評が千葉にも及び、当時香川から薬売りの行商に来ていた人々を朝鮮人と疑って9人を虐殺した事件を表したものです。この度、歴史に葬られていた事実が映像化されました。

製作資金はクラウドファンディングで集められ、2257人より3500万円以上を集めた。

公式映画サイトへ

森達也より、みなさまへメッセージ
「1923年9月6日、千葉県東葛飾郡福田村の利根川沿いで、多くの人が殺された。多くの人が殺した。でもこの事件を知る人はほとんどいない。皆が目をそむけてきた。見て見ないふりをしてきた。惨劇が起きてから100年が過ぎたけれど、事実を知る人はもうほとんどいない。」

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